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第8話 不思議な薬飲まされて

こういう場合ってゲームなら教会とかで手当してもらうのがお約束なんだけど、いきなり行って手当してもらえるもんなのかね?


待てよ。ファンタジー世界って言ったら回復薬。つまり『ポーション』だ!手当を受ける時に色々聞かれたりしても面倒だし、道具屋を探すか。そこで回復薬的なモンを買えばいい。


俺は早速道行く人に道具屋的な店の場所を聞いて道具屋に向かった。


教えられた店は如何にもといった雰囲気の古びた佇まいをしていた。白髭を生やした爺さんでも出てきそうだな。


俺は恐る恐る店のドアを開けると


「……いらっしゃい」


想像通りと言うべきか、それっぽい風貌の爺さんがカウンターに肘をついて座っていた。


「あ、あのー……ちょっと聞きたいことがあって……」


「……ん?何だ」


「えっと……回復薬みたいなのが欲しいんですが……」


「回復薬?ポーションならそこの棚にあるだろう。好きなのを勝手に選べ」


そう言って爺さんは奥の棚を指差す。


「あ、ありがとうございます」


棚には小さいフラスコのようなガラス瓶に入った緑色の液体が幾つも並んでいた。

好きなのを勝手にって言われてもなぁ……。品質とか効果は?そもそもこの色……飲んで大丈夫なんだろうか。

まぁそこは売り物なら心配はないんだろうけどさ。


とりあえずそのうちの1本を手に取ってみる。ちょっと青緑っぽい液体が入っている瓶。


「あー……これはいくらですか?」


「銀貨1枚だ。あんちゃんポーションの値段も知らねぇのか?それにそこにも書いてあんだろ」


「えっと、すみません。他国から来たもので色々と疎くて」


「他国ったってポーションくらい何処にでもあんだろうがよ。それに文字も読めんのか?そいつは中級ポーションだ、大概の怪我ならそれで治る」


乱暴な口調だが、面倒見はいいのかポーションの効果まで教えてくれる。

ふむ、中級ポーションが銀貨1枚か。これって安いんだろうか高いんだろうか?中級って言うからにはそれなりの効果は期待できそうだけど。爺さんの説明を信じるならだが。


「わかりました、それじゃあこの中級ポーションを1つください」


「あいよ。毎度あり」


鞄から革袋を取り出しカウンターに置く。そこから銀貨1枚を爺さんに渡す。

すると爺さんは化け物でも見るような目でこちらを凝視していた。


「あの、お代……」


俺が声をかけると我に返ったようにハッとし


「あ、ああ。すまん。毎度あり」


ポーションを受け取った俺が、一刻も早く治療しようと店を後にしようとした時


「ちょっと待ちな」


爺さんに呼び止められた。


「えっと、何か?」


「その足、ちょっと見せてみな」


「え?いや大丈夫ですよ」


「いいから見せてみろ」


あまり抵抗して問答が長引くのもめんどくさかったので仕方なく靴を脱いで傷口を見せる


「……こりゃ酷いな、よく歩けるもんだ」


「ええ、まぁ……」


「これを飲め」


爺さんはさっきまで見せてくれたポーションとはまた違う薄黄色の液体が入った小瓶を差し出してきた。


「これは?」


「上級ポーションだ。数が少ないもんで本来なら高ランク冒険者かギルドにしか売らん。値段も金貨1枚はする。これは俺からのサービスだ」


「え?いいんですか?」


「あぁ、足がこれじゃあなぁ……普通に歩いてるのもおかしいぐらいの傷だ」


「……ありがとうございます。じゃあ遠慮なく」


有り難くいただいてポーションを1口飲んでみると


「うっ!!」


凄まじい苦味と独特の匂いに思わず吐きそうになる。なんだこれ滅茶苦茶不味いぞ!


「ゲホッゲホッ……」


強烈な後味に咽せながらなんとか飲み込む。


「……すぐに効果が出るだろうから店の中で休んでいけ」


爺さんに促されるまま椅子に座る。店の中とはいえ座る場所がカウンター席の簡易椅子とは……まぁ贅沢は言えないけど


「あんちゃんどうだ?」


「……あれ?」


不思議なことに痛みがどんどん和らいでいく。

傷口もみるみる内に塞がっていくのが分かる。


「すごい……治ってる……!」


「上級ポーションはこんなもんだ。そろそろ立てそうだろ?」


「あ……はい!」


自分の足を見ると傷痕は消え去り、痛みも全くなくなっていた。


「ありがとうございます。助かりました」


「礼ならいらん。中級ポーションの金はきちんと払ってもらったしな。それよりもだ」


「それよりも?」


「あんちゃん……ポーションの値段や常識も知らん癖に結構な金持ちじゃねぇか。あんな大金見せびらかしてたら危ねぇぞ?」


「あ、いや……」


しまった。少し警戒心が足りなすぎたか。

もしかしなくともコレはゆすられる流れか?


「普通の冒険者からですら金貨1枚なんて滅多に見れん。それをほぼ裸の革袋で持ち歩くってこたぁ……余程のワケありか世間知らずの馬鹿ってこったろ」


んー……???爺さんが何を言いたいのかイマイチピンと来ないんだが……心配してくれてるって訳でもないよな?


「ちょっと前置きが長くなったが……」


どうやら本題に入るようだ


「ワケありでも馬鹿でも金持ってる人間は等しく客だ。そこでだあんちゃん。さっきのポーションの礼ってわけじゃねぇんだがよ、俺のオススメを幾つか買ってっちゃくれねぇか?」


なんだ、要するに大金持ってる客に高額な品を売りつけたいってだけか。なかなか逞しい商売魂だ、そういうのは嫌いじゃない。

試しにちょっと釣られてもいい。いざ変な商品を売りつけられそうになったら逃げ出すだけだしな。


「……いいですよ。どんな物があるんですか?」


「お?話がわかるねぇ。いや実は俺は昔そこそこ名の知れた魔法使いでな?引退してからは魔法具や魔導具の制作なんかをやってんだよ」


「魔法使い?」


「あぁ、昔はな。まぁ今は隠居して細々と商売をしてるがな。んで、俺のオススメってのが……」


そう言って爺さんは奥の部屋からさまざまな品を持ってきた。


「コレだ、張り切って作ったはいいがどれも全く売れん。というのもどいつも希少な素材を使って手間暇かけて作ったからな、その分売値も高くしねぇといけねぇから買うやつがいねぇんだ。おかげで大赤字よ」


ただのマヌケ爺さんじゃん……と喉まで出かかったが自重する。流石に客商売の店主にそれは失礼だ。


「まずは……これなんかどうだ?俺自慢の作品の1つ、『マジックバッグ』だ。ただでさえこういう収納系統の魔導具はダンジョンで稀にしか見つからんレア中のレア物なんだがな?なんとこのマジックバッグの容量はダンジョン産を遥かに凌駕する!!俺の魔導具はその100倍は収納するってぇシロモンよ!」


爺さんは興奮しながら自分の作品を誇らしげに熱く語ってくれた。なんか子供みたいだ。


「100倍ですか、凄いですね」


「だろ?金貨50枚でどうだ?」


「ご……金貨50枚……」


50枚……ってことは今金貨は200枚、つまり購入を考えるなら所持金貨の4分の1か。

結構な値段だな……。


「すみません、流石に値が」


「収納系統の魔導具は滅多に手に入るもんじゃねえぞあんちゃん?俺のとこで買っておくのが賢明だと思うがな?」


俺は爺さんの言葉を耳で聞き流しながら改めて商品を見てみる。


見た目はごく普通の背負い鞄にしか見えない。爺さんが嘘をついてなきゃそれなりに期待はできるけど……。


「すみません、一旦保留で。他にはどんな商品が?」


「他にか……ならコレなんかどうだ?コレは『浄化の指輪』って言ってな?装備するだけで常に浄化の効果を発揮すんだ。魔除けや悪意のある奴の接近を阻害してくれる優れモンだ。ま、要するに魔物避けの道具だ。他にも装備者を常に清潔な状態に保つって効果もある」


おお、それは凄い。マジックバッグより余程普段使いに適しているじゃないか。装備しているだけで風呂に入らずとも常に清潔でいられるならそれだけで買う価値があるぞ。それに魔物避けって効果は、この異世界において俺には最適の力だ。


よし買おう!と心に決めかけたその時


「値段は金貨100枚ってとこだな」


「……」


「どうだ?」


「すみません、一旦保留で」


100枚は流石にキツい。いくら魅力的な効果であっても100枚は流石にない。


「なら、こっちはどうだ?」


その後も爺さんは様々な商品を持ち寄ってくるが……どれもこれも金貨10枚〜100枚以上するものばかり。


金貨がどれ程の価値を持つものなのかまだしっかり把握していないが、流石にポンと買えるような値段じゃないだろう。


元値が0円のナイフとフォークで大金は手に入れているけれども、ベネットさんみたいにみんながみんなあれだけの金額で買い取ってくれる保証はまだない。買うにしても他の商人や店で取引して実証を得てからじゃないと怖い。


とはいえ……


「なぁあんちゃん、こんだけ見せたんだ。1つや2つくらい買ってくれてもいいんじゃねぇか?」


半ば強引とはいえこれだけ色々商品を見せてもらって何も購入しないってのも気が引ける。仕方ない……


「わかりました。じゃあ……」


結局俺は、実用性のある『マジックバッグ』と『浄化の指輪』、それと『体力増強薬』という名の爺さんオススメの薬を購入することにした。


合計で金貨160枚、痛すぎる出費だ。


「毎度あり!お陰で久しぶりに旨い飯が食えそうだぜ!」


爺さんは満足そうな笑顔を浮かべる。

そんなに儲けたかったのか、なかなか強欲な爺さんだ。


「はは……では俺はそろそろ」


「お?なんだもう行くのか?」


「ええ、色々ありがとうございます。よかったら今度また寄らせてもらいます」


一応社交辞令として礼は言っておく。まがりなりにもポーションも貰ったし。


「そうか、こっちも儲けさせてもらったよ。あ、あと最後に1つ」


「えっと、まだ何か?」


「その『体力増強薬』、今飲んでけ。後で文句つけられてもかなわねぇからな。なに、効果は永久持続式だから今飲んでも変わらん」


爺さんは笑いながら俺の買った『体力増強薬』と呼ばれる薬を指さす。

説明によれば、この薬は爺さんお手製の強走薬のような物らしい。なんでも飲めば無条件で服用者の体力の上限が底上げされるとか。

早い話がゲームでいう限界突破の秘薬みたいなもんだ。


「わかりました。じゃあ失礼して……」


この爺さんが人を騙すような人間じゃないのはこれまでのやり取りで分かった。

少なくとも『マジックバッグ』の効果は本物だったからな。


俺は黄色の液体が入った瓶を口に当て、グイッと中身を飲み干す。クソ不味い、ポーションよりはマシな味だけど美味しいかと言われると微妙な顔になるな。


「……ぷはぁ」


飲み終えた途端、少し頭がぼんやりしてきたような……気のせいだろうか?


「どうだ?効果は実感できたかあんちゃん」


「いえ……なんか……頭がボーっとします」


「……そうか、それはちょっと予想外だな。まぁ一時的な症状だろう、暫くすれば落ち着くさ。副作用はないから安心しな」


「はぁ……」


にしてはあまりにも気だるい感覚がする……

頭がぽーっとするというか、ボーッとするというか……身体の奥底から熱のようなものを感じる。


「なんだこれ……」


まるで酔いが回ってきた時のような気怠さが頭から爪先まで駆け抜け全身を支配していく。俺の脳内で警鐘が鳴る。これは何かがおかしいと。


「……あっ……これは……まずいか……も」


「あんちゃん?どうした!?」


「す、すみませ……ん。なんか……急に身体が……」


その言葉を最期に俺は意識を失った。


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