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第3話 フード注文

改めて状況を整理しよう。

まず、仮定にはなるがここは日本じゃない。それは確かだ。あの異様な外の景色を思い出せば疑いようがない。


そして【カラオケボックス】という摩訶不思議な能力が俺に与えられた。任意の場所に出入口となるドアを出現させ、カラオケを利用できるというどんな漫画やアニメでも聞いたこともない能力。ただし使うには利用料金がかかるらしい。


「なんでカラオケなんだよ」


思わず悪態が口から漏れるが今は考えても仕方ない。それよりもまず第一に考えることは


「どうやって元の世界に戻ればいい?そもそも帰れるのか?」


この能力でなんとかしろってことなのか?

いきなりそんなこと言われたって無理ゲーもいいところだ。いくらなんでも無茶苦茶すぎる。

俺には見知らぬ土地で生き延びる術なんかないしそんな知識も経験もない。唯一あるのは、このスキル【カラオケボックス】くらいだ。


「チート級の能力って訳でも無いよなぁ……」


説明だけ見れば確かに面白いスキルではある。けど使うには料金。つまり金がいる。


「要するに金が尽きたら終わりってことじゃんかよ」


ヤケ気味にグラスのジュースをイッキ飲みする……あ、これ最後の飲み物……!!


「あーあ……やっちまった」


ドリンクバーはもう使えないのに貴重な水分を飲み干しちまった……。


……待てよ?

ドリンクバーは確かに使えないけどそうなると軽食の注文なんかはどうなるんだ?

フード注文用のタブレットを手に取り確認してみる。


「注文は……できそうだな」


電気は何故か生きているのでタブレットは動く。

部屋ごと転移したのなら料理を作って運んでくる店員もいないはず、だから注文しても料理が届くはずはない……が。

妙な確信があった俺は適当な料理とジュースを注文してみる。すると


『ご注文ありがとうございます』


タブレットに文字が表示された瞬間


───熱々の料理と冷えた飲み物がテーブルの上に出現した。


「…………はぁぁああ!?」


思わず大声で叫んでしまった。


「え?これってどういう原理だ?どっからか転送されてるのか?でも電波も何もないはずだぞ?」


試しにスマホで適当に検索してみると当然圏外だった。

けどフードの注文は出来た……。頭がこんがらがってくる。


「まぁ……食べ物に困らないなら好都合か」


しかしそうなると問題は金銭面だ。俺の財布には数万円くらいしか入っていない。そんな金すぐに底をつくだろう。長くは持たない。


「やっぱり外に行ってみるしかないか……」


このままカラオケに籠城してもいいが、それだといずれ金が尽きて飢え死にするのは火を見るより明らかだ。


危険かもしれない、けどこのまま何もしないよりはまず外部の安全確認と環境の把握が今すべきベストな選択だ。


それにスキルを使って何とか生きていける手段を見つけられるかもしれない。

案外テレビのドッキリって線もまだ考えられはする。


「って言ってもそううまくいくとは思えないんだけどな……」


ぶつくさ独り言を言いながら俺は個室のドアに手をかけた。


「もし危なくなったら、この部屋に逃げ込めるんだよな?」


この不思議なスキルとやらは、俺の指定した場所に出入口を生成できると言っていた。ならヤバくなったら一時撤退は出来るはず。


うん。万が一の時は迷わずここへ逃げ込むことにしよう。


少し深呼吸をして心を落ち着ける。


「───よし」


覚悟を決め、俺は勢いよくドアを開いた。

そしてまだ見ぬ世界への第一歩を扉の先へと踏み出した。

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