第2話 スキル【カラオケボックス】
しばらくして冷静さを取り戻した俺は今の状況を簡単に整理してみることにする。
まず考えられる可能性として……これは事故とか自然災害の類じゃないだろう。
どう考えても異常な現象だし、もし災害とかならこの個室内だけ無事なのもおかしい。
次に考えられるのはこれが夢って線だけど……さっき頬をつねったら普通に痛かったし、やっぱり夢にしてはあまりにリアルすぎる。
残る可能性としては……
「……異世界転移、とか?」
いやまさかね〜そんな漫画みたいなことあるわけ…………あるかもしれん。
最近読んだ漫画の影響だろうか。妙な確信が芽生えてきた俺はひとまずその線で考えてみることにする。
「で?これが仮に異世界転移だとして……なんでカラオケごと連れてくんだよ」
そこでふと気づく。
「よく考えたら……なんで部屋の電気が生きてんだ?」
部屋ごと転移したならこの個室内は現実の外と隔絶されているはずなのに……
部屋の電気も空調も、モニターまで普通に稼働して動いている。スピーカーから音も聞こえるし、デンモクも正常に機能する。
ここまでお膳立てされたらなんとなく理解できた……いや、理解できてしまった。
それはつまり、『この部屋自体が特殊な力を持っている』んじゃないか?
館内に通じるはずのドアを開けてもその先にあるのは草原と中世風の城。現実の世界はどこにも無い。なのに電気が生きてて設備が不自由なく使えるってんならそれは不自然以外の何物でもない。これはもう理屈では説明できない謎の力が働いている。
「ここが本当に異世界だとして……転移された俺に巻き込まれた形でこのカラオケボックスも異世界に来ちまったってことなのか?」
ため息が漏れる。まったく状況が把握しきれない。
それでもただ呆然としていても何も始まらない。俺はまず個室の中を調べ直すことにした。何か手掛かりになるものがないか探すのだ。
……けど散々探してみても特におかしなものは見当たらない。ソファーの裏や壁の隙間など隅々まで目を通したものの収穫なし。
結論、いたって普通のカラオケだ。
一旦結局考えを放棄してソファに横になる。
「いっそのこと部屋の外を探索してみるか?……いやいや駄目だ。仮に異世界だとしたらなんか魔物的な奴に遭遇するかもしんないし、言葉だって多分通じないだろ……。あー……、こういうのって普通勇者扱いされたりチュートリアル的な展開があったりするもんじゃ……」
そんなことを考えていると、突如ピコーンという電子音がブース内に鳴り響く。
「うわっ!なんだなんだっ!!?」
反射的に顔を上げるとカラオケ機器のモニター画面に何かが表示されていた。
驚きつつもその画面を覗き込むと、そこにはこんな文字が表示されていた。
「なんだこれ……?『スキル【カラオケボックス】を獲得しました』?『効果:自身の指定した場所にカラオケボックス内に繋がる空間を作り出すことが可能』?」
いやいやいや、どういうこと? 唐突過ぎてついていけないんだけど?
画面を凝視するうちにモニター上にはさらに説明が追加される。
【カラオケボックス】
スキル説明
・任意の場所に出入口となるドアを生成できます。
・ドアを開ければ誰でも入室が可能です。
但し、ブース内からロックすればその限りではありません。
・発動時間に制限はありませんが利用には料金が必要です。料金は退室時にお支払い頂きます。
・ブースは同時に複数展開できますが、最大3部屋までとなります。
なお、【カラオケボックス】の拡張機能については後述をご確認ください。
「……」
突然の謎情報に唖然としたまま硬直していると、更に新しい項目が追加される。
追加料金による拡張機能について
【ルームグレードアップ】
・より快適で豪華な空間へグレードアップできます。
【新規部屋設置】
・一度に使用可能なカラオケボックスの数を増やすことができます。(現在:最大3部屋まで)
【従業員召喚】
・スタッフを呼び出すことが可能です。
最後に締めくくるようにメッセージが追加された。
『以上が本スキルのご案内となります。ご利用お待ちしております』
「…………」
俺は困惑の中、深い溜め息をつくしかなかった。一体全体何が起きてるんだ?




