第1話 カラオケを出たら異世界でした
えーっと……?なんなんだこれは?
それは休日、朝からフリータイムで1人カラオケを楽しんでいた俺が、ドリンクバーのおかわりを取りに行こうと個室を出た時だった。
「どこ……?ここ?」
グラスを手に持ったまま立ち尽くす。
ドアを開けた先にあったのは見慣れたカラオケの店内じゃなかった。
そこは見渡す限りの草原。
そして、遠くの方に見える中世ヨーロッパ風の城。
「は?」
俺は突然一変した目の前の光景に思わず間抜けな声を出していた。
「いや……え?何これ?」
夢でも見てるのか? いや、夢にしてはリアルすぎる。試しに頬をつねってみると痛みがある。現実だ、夢じゃない。
しかし、こんな非現実的なことが現実に起こるのか……?
「とりあえず落ち着こう……」
えっと、まずは部屋に戻ろう。うん。
そう思い振り返るとまたしても奇妙な現象。
そこには俺が滞在しているカラオケ個室のドアだけが空間に鎮座していた。
「これどうなってんだよ……?」
混乱しつつも恐る恐るドアを開けてみる。
なんのことは無い、あっさりと個室に戻れた。個室内の状況は先程までとなんら変わりなかった。
大画面モニター、デンモクにマイク、テーブルにソファー。自分の鞄やスマホ、財布やコンビニで買ったお菓子やつまみなんかもそのままだ。部屋に貼ってある注意書きや館内の案内図、注文用の備え付け電話なんかも変わりない。
「ええぇ……?」
モニターからは歌手のインタビュー動画やCMなんかが流れている。いつも通りのカラオケのままだ。
「じゃあさっきの光景は……」
そう思い、再びドアの先を見つめると
「え?は?えっ!!?」
ドアの先には色が無かった。
というかまるで真夜中のような漆黒の闇だけが広がっていたのだ。
本来在るべき店内の廊下も、さっき見た草原の景色も城も何も見えない。
多少の恐怖を感じながらも確認してみることにする。
勇気を出して再度ドアを開けると……
草原。そして城。
「……」
ドアをそっと閉じた。
俺は頭を抱えるしかなかった。




