第三話
「実はここだけの話ですが、亡くなる3分前までのやり取りを見る事ができます。で、当然、3分間では全ての原因や動機がわかる訳がありませんので、推理はロンベリ様にお任せして、簡単に説明しますね」
「君の事をそのまま信じる事は出来ないが、参考にさせて貰おう。説明を頼む」
お化けさんは、あらため、被害者さんは2人の黒ずくめの男2人に路地裏に引っ張り込まれた。
そこでの会話を簡略化すると。
「散々お前には金を渡してきたにも関わらず、例の利権を取る事が出来なかった」
「まぁー待て。そもそもかなり便宜を図って来ただろう? こちらも派手な動きが出来ない中、限界までやってるんだ。だから次の機会には必ず」
「もう遅い」
との言葉と同時に2人から刺された。
「ってことでした。除霊するともう少し事情がわかるかもしれませんが、どうします?」
『除霊するのね。いいじゃーん』
『なんで除霊するとナミが喜ぶのかわからないけど、怒りの理由を知りたいしね』
「なにやらわからんが、除霊するといいんだろ? やって差し上げろ」
へい。と、
リュートは例の如く手のひらを向ける。
すると濁流のように故人の想いが流れ込んでくる。
お化けさん的には、過去数年に渡りかなり便宜を計ってきたのに、簡単に殺された事、要するにプライドが怒りにかわったようだ。
案外、どうでもいい理由だったな。
が、メイスという名前の人物に相当な恨みがあるようだ。
「はい。まぁ、とにかく殺された事に怒ってるって事ですかね。数年にわたって便宜を計ってたようですよ。名前はメイスと言っていましたが、細かなことは聞けませんので」
「それは本当か?」
「信じるか信じないかは、貴方次第です!」
全文パクった感じになっちゃったけど、決まったね。
「信じるも何も、その線は調べているのだが、メイスだと? ありきたりな名前だが、ちなみにその刺した犯人の顔はわかるのか?」
「ですよね。犯人は見れば分かると思いますが、近づくのは怖いですね」
「安全は守る。が、今回の城壁改修工事で選ばれなかった商会は数社ある。また実行犯は当然別にいる訳だ。さてお付き合い頂けるかね?」
「いや。取調室のマジックミラーから見ていいなら、やりますけど、、」
「取調室のマジック? み? なんだねそれは」
「あーーー。えーと、ちょっとお化けの専門用語使っちゃいました。こっちの姿を容疑者に見せないように、僕だけが見れる物ってありますか?」
「ほぉ。そんな便利な物があるのか?」
「ガラスの表面に薄くメッキして、後は部屋の明るさの差で、なんとかなるような記憶が」
「それはお化けから聞いた話ってことなのか?」
「へっ? あっ。はい。その方向で」
△
翌日、ともあれ取調室の窓ガラスに取り付けた訳だが、こちら側が明るいってことで。
「丸わかりだな」
「ですね」
「とにかく木枠でも良いので暗くする必要があるってことだな?」
「ですな」
「‥‥‥。」
あれよこれよで、マジックミラーが機能した。
ロンベリさんのテンションは爆上がりで、はしゃぐのはいいけど、背中が痛いのよ。背中が。
「では、早速容疑者と思わしき人間を100名程用意した」
「ま、まておっさ、ロンベルさん!」
「お、おま、今おっさんって言ってなかったか?」
「いやいやいや。今日もいい天気ですね? 100名? 某は学生でございまして学勉に勤しむのが本分と亡き両親からの「と思ったので、学校に聞いてみたが、中々成績も良いらしい。貴族からの協力要請なら欠席扱いにしないとのことだ。」」
「あ、あざーす」
「では、今から始めると明日中には見れるだろう?」
「そうでんな‥‥‥」
「君は恐らく貴族に敬意を持たない人間のようだな」
「な、なにを! 海よりも深く、空よりも高く尊敬しておりやす」
大きなため息をついたが、ロンベリも元々騎士爵と爵位も高くない為、そんなに気にはならないタイプである。またリュートの人となりを逆に好ましくも思っていたのである。
「では、次の者」
その掛け声で、つらつらと3名が取調室に入ってくるのだが、もはや絶対関係ないだろと言える程、多様多種な人間を連れてきている。
「ねぇ、ロンベリさん。あの見るからに貧しそうな人たちはいったい‥‥‥」
「あーあれはスラムに住む住民だが、なにしろ今のところ男2名というヒントしかないからな。とにかく連れてきたって訳だ」
「たしかに俺のヒントも少なかったですけど、もう少し絞れないもんですかね? ってか本当に100名で終わります?」
「仕方ないだろ。ヒントがないんだから」
「いや、多少のプロファイルというか何というか」
「ぷろふぁい? なんだそれは?」
「あ~、、例えば身長とか年齢層とか、体つきとか? これは俺が伝えてないことが問題ですけど、今更ですけど、20代後半から30代前半の男で体つきは瘦せ型でした」
「ほう。それは私も聞いておけばよかったな。ではその情報で少し絞るとしよう」