第二話
「あーーやっと終わった」
「授業ちゃんと受けてた? 寝てたでしょ?」
「いや。歴史以外は聞かなくてもわかるし」
「そうなのよねー。リュートは頭だけはいいから。で、就職どうするの?」
「別に親の遺産もあるし、就職っていっても役人か商人、農業くらいしかないじゃん。適当に考えるよ」
「おじさんの商売の才能を引き継いでいたら、商人としてやっていけるから大きな商会に就職して人脈広げるとか、あるでしょ?」
「そんな才能引き継いでないっての。まぁ商売に興味は多少あるけど」
そう、前世の記憶からアイデアレベルでは商売になりそうな事はできるかもしれないが、両親の遺産ってのが、細々と生活すれば一生暮らせるくらいあると思えば、無駄に投資失敗を懸念してしまうわけだ。
「米の相場だっけ? おじさんは本当に凄かったよね。あんな事になって残念だけど」
「まぁ事故だしな。他国からも恨みを買ってただろうし、それはわからないけど」
「お化け見えるなら、そんな時に聞けばいいのに」
「まぁそうなんだが、遠い外国での事だし、行くのは億劫だな。それに知らぬが仏って言葉もあるだろ?」
「知らぬが何? たまに変な事言うよね。まぁ後1年もないんだから、考えたほうがいいよ」
「わかったよ。そうする」
面倒見のいい幼馴染さんは、友達のいない俺を心から心配してくれているようだ。
そんなある日の事。
「君が死者が見えると自称している少年かね?」
学校の帰り道、カレンと別れて自宅の入口手前で腰に剣を差した少し良い生地の服をオシャレに着込んだ30代と思しき男に声をかけられた。
「はぁ。誰も信じていませんし、自称であってますが、何用ですか?」
「ふむ。私はロンベリ騎士爵、この街ランベルカの治安を守る者だ」
「あっ。貴族の方ですか、俺、僕はリュートです」
この国、ローリンベルは人口300万人の世界有数の大国であり、比較的豊かな国である。
また王政である事から、少なくない貴族も存在する訳だが、我が街ランベルカにも領主やそれに付随するお貴族様が、街を管理している。
「リュートか。でだ。突然だが、死者と会話は出来るのか?」
「へ? いや、会話はできない、ませんけど、残留思念と言うか、思いが強いお化けの事はわかりますね」
「ほぉ。私はこの街で様々な犯罪の調査をする部隊を率いているのだが、今回は中々厄介な案件があってな。君の能力で糸口をつかめればと思い参上した」
「失礼を承知で、、本気で言ってます? お化け信じます?」
「ふはははははっ。いや、信じない。が、それほど行き詰まっている。が、本件はそれを許されない。私も追い込まれているわけだ」
「はははっ。ですよね。で、俺、僕の能力が本物であれば、ワンチャンって事ですか」
「ワンチャン? まぁ本物であれば捜査の一助になるだろうしな」
「手伝うのは構いませんが、もし成功したらどうします?」
そう。リュートは前世でも似たような商売をしていたのである。先程の就職の話も含めてチャンスに思えてしまったわけで。
「ほぅ。相当な自信だな。当然捜査予算もあるが、金額も含めて結果次第だな」
「まぁ。それもそうですね。では、お、僕は現場にいけば?」
「もう俺でいい。では着いてきてくれ」
ロンベリは相当に追い込まれていたわけである。この街の領主の弟にあたる人物が、街中で殺害されたのである。激怒した領主は、方法は問わず犯人を捕まえろと、命令を下すわけだが、とにかく証拠や目撃証言がなく、普段から身分を隠して飲み歩く被害者は、誰と接点があったかすら家族にも話していない。
無駄に時間だけが過ぎていく中で、道端で死者と話せる青年の話を耳にした。
諦め半分であったが、いざ会話して見ると、少し真実味を得てしまう。このような感覚は、数多の調査経験からくるものだが、ほんの少し期待してしまう。
「くっさ!」
憲兵の服装をした人が封鎖するエリアに入り、第一声がこれだ。
「おい。飲屋街の路地裏なんてこんなものだ。声をだすな」
「し、失礼しました。で、ここで刺されたと」
「そうだ」
「被害者の名前を聞いても?」
「‥‥‥アダム・ランベルカだ」
「げっ。なるほど、」
実はすでにアダム・ランベルカと思わしきお化けさんと目線がガンガンあっている。
『こいつ結構怒ってるね?』
「おわっ!」
「なんだ?」
急にナミが耳元で話し出すから驚いてしまった。なんたって血だらけのお化けを目の前にしてるからだ。
「い、いえ。なにもありません」
『なんだ。死神が協力してくれるのか?』
『だって、わたしとリュートはダンス仲間よ? 協力するに決まってるわ』
『だ、ダンス仲間? まぁいいや。俺は除霊しても想いしか読み取れないんだよな』
『この人が亡くなる3分前までの映像を見せてあげるわ』
またしても、ドヤポーズだが、セーラー服にルーズソックスあんど鎌は、中々。
しかし、これも3分って、3が好きな数字なのか、、
『た、頼むよ』
「少し見てみますので、お時間ください」
「‥‥‥わかった」
お化けから、映像が流れてくる。
「ほぉ。ふむふむ。えーーー」
「ち、ちょっと、君」
「まった! ひゃー! えっっぐ!」
ロンベリは、この一連の流れを期待せずに見ていたが、リュートの反応を見て、期待やら何やら、そもそも気になって気になって堪らなくなる。