四分の四
「……なるほど、事情は掴めました」
敢えなく拿捕された私は、これまでの経緯を『じゃない方』に説明した。
「ひとつ質問して良いですか?」
そう言うと、彼はスポーツブラを指してこう尋ねた。
「それって、普通のサイズですか?」
一瞬で女子の苛立ちが辺りを支配した。
が、そんなこと、お構いなしに彼は続ける。
「大きくないですか?」
(コイツ、どんな死に方したいのかな?)
しかし、その言葉に今までとは明らかに違う反応を示した人物が一人いた。
宮野大介だ。
「持ち主は女性でしょうか?」
黙秘していた容疑者の様子がおかしい。
完全に動揺している。
(皆に質問してるけど、これって宮野くんの反応を見てるんじゃ……)
「ちょっと!」
ただ、これには女子も反応する。
「それってどういう意味?」
更科さんが喰ってかかった。
「更科さん達が怒ってる理由を知りたくて。これって、皆さんのですか?」
「久利生くん、その質問はデリカシーに欠けると思う」
今度は委員長が立ちはだかった。
「え、何で?」
「何でって……今、確認する必要があると思えないから! 久利生くんは女の子の気持ち判って聞いてるの?」
それが口火を切った。
「自分が使ってる下着のことなんて、教えたくないに決まってるじゃない」
江東真紀さんが加わった。
「久利生くんは女子にそう言うこと聞いて、恥ずかしくないんですか?」
北條舞香さん。
「今の発言は、学級委員として問題あると思う」
西仲多恵さんも……。
皆が口々に不満をぶちまけた。
「はい!」
そんな中、挙手で発言を求めたのは二組のアイドル、蒼井紗香。
こちらを直視して当てられるのを待っている。
(正直、面倒臭い)
とはいえ、無視する訳にも行かない。当てるしかなかった。
「蒼井さん、どうぞ」
「同じことを宮野くんもしてるってことは……無いのかな?」
(おお! それな!)
意外にも、蒼井さんの口から飛び出した意見が、最も説得力があった。
しかし……、
「え、何なの? 意味判んないんだけど!」
「男子に良い顔したいだけじゃない?」
「ここに来てやる? 普通。」
(いやいや、今のは、そう言うんじゃ……)
江東さんと北條さんは、蒼井さんへの当たりが容赦ない!
知りたくもない、彼女のクラスでの立ち位置が薄っすらと見えてしまった。
「ちょっと待って、皆んな。」
さすが委員長、タイミング良く話に割って入ってくれた。
「私の質問に久利生くん何も答えてないから!」
(えっ、あれ? ひょっとして……岩崎さんって怒らせちゃマズい人?)