6.バイオハザード2
葉一の働くBAR柳は【完全紹介制】
基本的にオーナーの柳会長からの紹介が無ければ、店内に立ち入る事すらできない。
外に漏れる心配がない機密性の高いBARでどのような話が繰り広げられるのか
椿は「おしりのシビレが治った〜。」と帰って行き、入れ替わるように時城がゾンビのように入ってきた。
「今、だいじょうぶ〜?」
椿さんより身体がデカい分ゾンビ感もハンパないな。
ってか次々と何のハザードだよ。
どうぞと勧められて時城は、椿の座った場所に座り、椿と同じようにカウンターに突っ伏した。
時城さんも尻洗われたのかとは流石に聞けない。
ただ椿のように引っ張る訳でもなかった。
「ラフロイグをロックで。」
ラフロイグはスモーキー・アイラの象徴でアイラ島で作られている。
薬品を想わせる独特な香りに、味わいはオイリーで濃厚。加えて塩っぽくドライな後味といった強烈な個性は非常に好き嫌いの分かれる逸品である。
ぶっちゃけ「消毒液のにおい。」とも言われる。
「珍しいですね。」
そして葉一はやっぱり薮から蛇をつつきだす。
「消毒液ロックでもいいぞー。」
「いやいや死にますって。」
アルコール系消毒液ならワンチャンとか冗談言う状況でもない。
「昨日閉店前にさー。全員30歳前後の女性2名男性3 名あとやたらゴツい50代男性1名の6名のお客さんがいらしたんだわ。」
「和気あいあいと飲んでたんだが、女性の2名さんが『王様ゲーム』をしたいと言い出して。まぁ他にお客さんも来ないだろうからいいかと流れで俺も参加する事になったんだ。」
昔ながらの王様の命令を何でも聞くというものだが、やり過ぎないよう制御するのもバーテンの仕事だ。
「で、もう終わろうかって時に誰かが『最後に王様と1番がキスってのはどう?』とか言い出して。」
「制限ラインかなと思ったけど、女性2人はテンション上がって喜んでるし、んじゃいいかと最後のゲーム。」
なんか見えてきたぞ。
「王様が俺でゴツいオッサンが1番。」
ですよね。
「そりゃな、長い間この仕事やってんだから罰ゲームでオッサンとチューなんか何度でもあるし、もっと酷い目にあった事もある。」
ん?じゃなんで?
時城は叫んだ。
「柔らかかったんだよー!」
それからイソギンチャクのような身振り手振りで再現する。ほんと見たくない。
「絶対ラグビーかアメフトやってただろう。しかも前の方で、ってくらいのゴツいオッサンだぜ。」
「当然ザラっとかゴツって感触のつもりでいたのに。なのにさぁ。」
そして絶叫。
「ぷにゅっと柔らかくてぬめりゅってしたんだよー。」
全身総毛立ちながらも何とか乗り切った時城だが、その夜キッチリ夢に見たそうだ。
「帰るなりシンクで洗って、家でもダッシュでシャワー浴びて洗って、起きてから1時間以上風呂入って唇の皮めくれそうなほど洗っても感覚がなくならないんだよー。」
コメントのバリエーションが少ない葉一に気の利いたセリフが出るわけもない。
実際『何とも言えない。』のひとことなのだが。
「それ以来俺はラフロイグしか飲めない身体になっちまった。」
最後だけ聞くとなんかカッコいいが実情はひどい。
そして消毒液扱いのラフロイグさんに謝れ。
家に帰ってくちびる洗うと言い残した時城ゾンビを見送り閉店作業に入る葉一。
ゾンビ2体の相手ですっかり疲れてしまい思わずつぶやく。
「尻洗うとか口洗うとかってこんなん続くなら俺は足洗いたいよ。」
あ、なんか上手い事言えた♬
大喜利の成果か少し機嫌が良くなった葉一は鼻歌まじりにグラスを洗うのであった。
会長( ´・ω・)ノ 葉一君のメンタルが強くなったようで嬉しいですぞ
時城( ´Д`)y━・~~ 俺の唇も強くなったけどな。
椿( ꒪⌓꒪) 私の****も強くなりましたけどね。
Σ( ̄。 ̄ノ)ノ会長 時城 葉一
「「「それ言っちゃダメーー」」」