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4.ようつべ

葉一の働くBAR柳は【完全紹介制】

基本的にオーナーの柳会長からの紹介が無ければ、店内に立ち入る事すらできない。

外に漏れる心配がない機密性の高いBARでどのような話が繰り広げられるのか

開店作業を終え葉一がさて何をするかと考えていると、会長から1時間後に2人で行くと連絡があった。


食後の一杯といった感じで会長と共に50代の男性が入ってきた。


青木さんとおっしゃるそうだ。

会長はアイスコーヒーを所望。


別にバーでソフトドリンクを頼んでも問題はない。

酒もどきなお酒もあるしソフトドリンクもどきなお酒もある。


青木さんが頼んだお酒もそんな飲み物。

ティフィンのウーロン茶割だ。


ティフィンはドイツ産の紅茶のリキュールでありスピリッツにダージリンを加えたものだ。

ソーダ割をはじめ色々な飲み方があるがウーロン茶で割るとまんま紅茶の味になる。


ただソフトドリンクのようにがぶがぶ飲むと酔う。

度数が24度あるからだ。意外に油断ならない。


青木さんはつい先日までワシントンDCに出張していたそうだ。

乾杯の後、「向こうはどうだ?」と聞く会長に片肘をついて答える。


「ラーメン220ドル、かつ丼250ドル。日本食好きな俺にとっては地獄だよ。牛の方が安い。」


思わず葉一も声が出る。

「ラーメン1杯が3,300円ですか!」


青木は首を振る

「それにチップが20%でほぼ4,000円だ。」


日本だとトッピング全部入れてチャーハンにから揚げに餃子つけてもおつりがくる。


「しかも『ラーメンから揚げセット』だとラーメンにから揚げ浮かんでるんだぜ。3つも。もう油でギトギト。帰国して空港で食ったラーメンが泣けるほどうまかった。」


「YOUTUBEとかでも外国の方が本場日本のラーメンはめちゃくちゃ旨い。って言ってますもんね。ああいう番組みたら日本のよさを発信しててすごいなぁと思います。


だが青木は乗り気ではない。

「良し悪しだなぁ。」


日本の良さを発信して知ってもらえて何で悪いんだ?


青木は少し考えてからたとえ話をしだした。


「小学生のゆうた君は肉牛農家。毎日学校帰りに家の手伝いをしてる真面目な子。おとうさんと一緒に牛にビールを飲ませてマッサージ。そうすると美味しい霜降り肉ができるそうだ。」


和牛人気って凄いらしいもんな。


「でもゆうた君は牛肉が嫌い。」


なんで?


「鶏肉のから揚げは美味しいし豚しゃぶも好き。でも牛肉はなんか臭くて硬い。から」


和牛イズNO1では?


「それはね。育成している『和牛』は商品だから。生活のために高く売れる海外に全部輸出するから。」


え?


「それで手に入れたお金で輸入牛肉を買って食べる。」


さらに青木は続ける。

「食物は経済レベルが同じなら問題ない。だが異なってくると美味しい食物を輸出し、単に生命維持目的の食物を輸入することになる。発展途上国の上質な作物が全部輸出されるのと同じだよ。」


葉一は何も言えない。


「そして金持ちの観光客は美味しい食事にお金を払う。今や北海道のニセコのラーメンは2000円を超えているそうだ。関西空港のレストランもリニューアルして外国人向けに大幅値上げをした結果、日本人はファーストフードかコンビニのおにぎりを買うらしい。」


青木は煙草をふかして感慨深く言う。

「俺は昔のものづくり大国、職人が機械を超える国がよかった。観光立国なんて必要なかった。ああいう発信をユーチューバーがして来日した人が喜んでくれ好きになってくれる。それは日本人として嬉しい。ただその結果、ビルの所有者はどんどんと外人に代わり日本人は賃料を払う。そして給料はあがらない。より安価な外国人労働者とIT革命が成り代わるから。」


さらに続ける。

「近所の小さいスーパーに行くとさ、和牛なんてないよ。よくてオージー。ていうか牛肉自体ほとんど置いていない。わずかに味付けカルビとかがある程度。第一次産業に注力しないと日本中ゆうた君だらけになってしまう。」


青木の真剣な目がゆるむ。

「愚痴多い客ですまんな。ただ、30年前はラーメンと焼飯半分のハンチャンラーメンセットは500円だった。今は1,000円だ。初任給は少し増えた程度なのにな。なので給料を上げればいいって考えもある。そこで日本と同様の問題を抱えた韓国政府は大幅に最低時給を上げた。するとどうなったか。」


どうなった?


「解雇が増え失業者が増えた。当たり前だ。利益も上がってないのに無理やり人件費上げられちゃ人なんて雇えない中小企業がほとんどなんだから。」


そこで顔を上げ急に会長へ顔を向ける。

「だから会長!」


会長は驚いて答える。

「え?なんだ急に?」


青木は親指で葉一を指さす。

「こいつの給料あげてやって下さい。黙ってオッサンの愚痴をずーっと聞いてるなんていいやつじゃないですか。」


まぁ仕事ですし・・。話も勉強になるし・・・。


「オチそこかい!フリが長すぎるわ。」

会長はイスにもたれかかる。


青木は笑う。

「まぁ、そういうの何とかするのは政治家さんの仕事なんで。僕は僕の手の届く範囲を幸せにする程度の器量しかありませんのでね。」


会長はふてくされたように言う。

「だいたい経団連が初任給上げたとか言ってたが上がったのは「初任給」だけだからな。2.3年目の給料と同じになったり逆転したりして2.3年目の社員のモチベーションダダ下がりなんだ。社長がさんざん文句言ってたわ。」


「そりゃ成果ってもんが・・・」

「そんな見栄でいい迷惑だ・・・」


論争を続ける2人についていけない葉一。


物事には多面的な見方があるんだなぁと自分の未熟さを感じると共に吉野家の牛丼(並)が1,000円超えたら泣きそうだと考えていた。


さくら(^^)/キャバ嬢がドリンク頼むときに『カシスオレンジⒻ』とか書いてたら要注意

葉一( ̄▽ ̄;)どゆこと?

さくら(^^)/Ⓕってフェイクって意味なの

葉一( ̄▽ ̄;)えー

さくら(^^)/モナンとかのノンアルコールリキュールを使った飲み物。

葉一( ̄▽ ̄;)つまり 酔わないからいくらでも飲めると。

さくら(*≧∀≦*)うりあげうりあげ~♬

葉一(T . T)キャバ嬢怖えぇ

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