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3.いいバーテンとは

葉一の働くBAR柳は【完全紹介制】

基本的にオーナーの柳会長からの紹介が無ければ、店内に立ち入る事すらできない。

外に漏れる心配がない機密性の高いBARでどのような話が繰り広げられるのか

「いいバーテン」とは何か?


お酒に詳しい。

それはプロとして当然の範疇なので、これは日々色々な本を読んだり試飲したりしている。


「今日はいつもよりお疲れのご様子。そんなあなたにこのカクテルを。」

なんて現実問題としてありえない。


してみたいけれど。


カウンターの端からウイスキーグラスをさーっと滑らすのもやってみたい。


以前会長が連れてきたプロマジシャンに「プロは50回連続で成功しなければ人に新作マジックを披露しない。」と言われて感銘を受けた。さすがプロだと。


以来時々ウイスキーグラスに水を入れてさーっと滑らせてみる。

急に加速するとこぼれるしゆっくりすると滑らない。


慣性の法則が憎い。


それでも時々滑らせてはカウンターを水拭きしている。


もちろんそれだけではない。

トーク力も必要だ。


働き始めてすぐにお客さんに怒られた。

「黙ってグラス拭いてるなんて50過ぎた爺さんバーテンじゃあるまいし、若いんだから積極的に切り返さんかい。と。」

関西人はほんとトークに厳しい。


そのお客さんによると以前神戸にあるラグナバーというところに行ったそうだ。

そこのバーテンに「今日この娘口説きたいから俺を好きにさせるようなお酒を。」と頼んだそうだ。


もはやカスハラだろ。


するとバーテンは「かしこまりました。」と2杯のカクテルを用意し

「こちら中東産のリキュールで現地では惚れ薬の成分が含まれていると言われております。さっぱりとした飲み口ですので是非一度お飲みください。」

と答えたそうだ。


なんてダンディ。


「実際成分なんてどうでもいいんよ。そんなのに頼るほどすたれてもいないし話のネタになればそれでいい。第一美味しかった。」


なるほど。切り返しかぁ。


元より受験生という狭い枠の中で生きてきた葉一には何もかもが新しいし、持っている知識なんて偏りすぎて役にも立たない。引き出しがないというのはここまで辛いものかと頭を抱えた。


だが救世主が現れる。


店外の掃除をしている時に隣の店の40前くらいのマスター時城さんと仲良くなったのだ。

一緒に掃除をしているうちに悩みを相談すると大喜利をすると切り返しが早くなっていくと教えてもらった。


例えばバー初体験の男の子がいたとする。

誰だって初めは話下手だ。

そういう時に大喜利をする。

とにかく面白くなくとも何か答えさせる。

面白くなければバーテンが気の利いたツッコミを入れるなりして面白くすればいいのだと。

何回かやっているとたまにホームランが出るしそれが本人の自信にもつながるのだと。


それ以来閉店後、たまに隣のバーに修業がてら寄らせてもらっている。


今日もふらりと寄ってみたら、常連っぽい女性1名とまだバーに不慣れな感じの男性2名のお客さんがいたので混ぜてもらう。


「こちら葉一さん。隣の店のバーテンさん。」と紹介してくれる。

「こちら山本さんと川原さん。最近この辺でバーまわりをしているそう。」

男性2人組が軽く頭を下げる。

女性のほうに手を向け

「そして常連の『変わった人』」

なるほど。いじられキャラか。


さあやさんという女性はわーきゃぁと文句を言っていたが、時城さんが制止する。

「さあやさんは納得がいかないようなので3人に聞きましょう。」


葉一の注文したハイボールを作りながら言う。

「以前腰が痛かった私は電マを腰に当てていたのです。」


なるほど。


「そこにさあやさんがいらっしゃいました。そして開口一番『マスターそれ使い方間違ってるやん。』と。」


・・・・


「私は言いました。『あっとるわ!』と。さて皆さんどうでしょう?」


「「「変わった人」」」


「ですよね。そもそもマッサージ器ですもんね。」


さあやさんはカウンターに突っ伏して撃沈していた。



ともあれ始まった大喜利。

今日のお題は「フライパンの無駄な使い方を教えてください。」


一同頭をひねる。

とりあえず言ってみ。

と誘導されて山本さんが「テニスのラケット」と言い「重いわ!」とさあやさんのツッコミ。

さらに川原さんが「卓球のラケット」と答え「天丼か!もっと重いわ!」と時城さんのツッコミ。


なるほど。とりあえず出た答えにどうツッコミを入れるかも大事なんだなぁ。


感心する葉一に時城さんが容赦なく責める。

「さぁバーテン葉一君どうぞ。」


ハードル上げないで。


「え・・と。雨降った時に。」大事なのは思いついたらすぐに言う。


さあやさんが食いつく。

「相合傘かわりだとチューしそう。いやーん。」

時城さんが切り返す。

「脳みそピンク色やろ。顔以外びしゃぬれやし。」


一同あははと笑う中


自分でも大して面白くない答えだと思う。

でも周りが協力的だと何となく面白い事を言った感じがする。

プロなんだなぁと感動した。


そんな中さあやさんが手を挙げる。


「はい。さあやさん。」時城さんの指名。


「フライパンに卵を割ります。」


ふむ。


「よく混ぜます。」


ふむふむ。


「ご飯にかけて卵かけ!!」


「・・・無駄やなぁ。」

「「「・・・無駄ですねぇ。」」」


「優勝。さあやさん。」


結局1時間ほどの大喜利で一度も優勝できなかった葉一。


「修業が足りんわ。」

とさあやさんにバーチャファイターのラウのようなコメントを頂いて帰途につくのであった。










椿( ´・ω・)ノ 頑張れ葉一君

会長( ´Д`)y━・~~ バーチャーファイターって30年前のゲームなんだが……

椿( ´・ω・)ノ おいくつなのか葉一君に聞いてもらいましょう

会長( ´Д`)y━・~~ 「聞けない。」に千円

椿( ´・ω・)ノ じゃあ「聞けない。」に千円

会長( ´Д`)y━・~~ 「天丼か!」

椿( ̄▽ ̄;)おあとがよろしいようで

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