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1.新幹線

葉一の働くBAR柳は【完全紹介制】

基本的にオーナーの柳会長からの紹介が無ければ、店内に立ち入る事すらできない。

外に漏れる心配がない機密性の高いBARでどのような話が繰り広げられるのか。

フィクションかノンフィクションかは定かではない。

なぜ定かではないのか知る由もない。そんなシリーズ。

完全紹介制のバーとは言っても多人数での会費運営を目的にするものではない。

法人の会長の個人趣味である。

どちらかと言うまでもなく会長の接待交際または社員の福利厚生にプラスアルファされるといったもの。

それでもある意味「酒飲みの憧れ」なのか、ちょいちょい紹介された来客もある。

まぁまとめてみれば曜日や日付とか全く関係なく、しかもどんな人が来るのか全く分からないといったところ。

それが四谷葉一が店長を勤めるBAR柳。


それでも不動産部に属する椿はよくくる方だ。

いつものように葉一は椿と無駄話をしていると、会長から電話があった。

半笑いの会長は今から若い男の子が1人で行くから好きなだけ飲ませてやってくれと言う。


なぜ1人なのかなぜ会長は半笑いなのか。葉一はそういった事を聞かない。バーテンとして粛々と働くだけなのだ。


「かしこまりました。」と答え「会長より伺っております。」と来客者に告げる自分に、ちょっとしたダンディ気分を味わったりもする。


30台になったばかりのようなその男は、半袖のポロシャツで右肘の辺りを包帯で巻きわずかに湿布の匂いをさせていた。


椿の一つ席を開けた隣に座り「湿布臭いと思いますがごめんなさいです。」と一礼を入れた。


人の良さそうな人だ。葉一も椿も好印象を抱いた。

たった一言の気遣いで酒が旨くも不味くもなる。


「全く匂わないですよ」椿はにこやかに答える。

匂わなくはないのだがこれもまた我慢できる気遣いだろう。


若い男もそれを感じたのだろう。

伊藤と名乗り爽やかに笑いながらオーダーをした。

「じゃあバレないうちに誤魔化すとしてモヒートをお願いします。」


モヒートとは、ラムベースのカクテルであり、キューバ発祥と言われている。

暑い国で好まれるだけあり、涼しげなミントの香りが冷感を誘う。

日本でも夏場に特に好まれる。

モヒートで有名な店となれば銀座のBAR耳塚あたりがあげられるか。


バースプーンで丁寧にミントの葉を潰しているとミントの爽やかな匂いが店内にただよう。

葉一は思う。

これを湿布のニオイ消し扱いとはモヒートを愛したヘミングウェイもうかばれないなぁ。と


軽く乾杯の後、椿の好奇心が顔を出す。

「その包帯お仕事か何かで怪我されたのですか?」


「少し長めの話ですしお聞かせするほど大したものではないのですが…。」

伊藤は語り出した。


「オッパイがですね。」

葉一と椿の頭上にクエスチョンマークが乱舞する。

「おっぱい?」


だが伊藤の顔は真剣だ。

「先日友人4人でドライブしてましてね。その時に1人が走行中の車から手を出すと風圧がおっぱいの感触になると言うわけです。」


あー思ったより変な人だ。


葉一が思うと同時に椿が答える。

「ああ、聞いた事あります。」


あるのか?


伊藤は続ける。

「で60キロほどで走る中、皆で手を出すとホントにそんな感触なのですよ。」


なぜ目を光らせる?


「そしてスピードをあげたのです。100キロにもなるとだいぶ大きくなるわけですよ。もう私達は大興奮でした。」


葉一は積み上がったツッコミどころをとりあえず放置する事にした。


「その日はそれで終わったのですが、自他共に認める巨乳好きの僕としては耐え難い好奇心を抱いてしまったのです。」


知らねーよ。


「その後の協議の結果、時速60キロならBカップ相当、時速100キロならDカップ相当の感触という合意が形成されました。つまりは1カップ当り時速20キロという計算が成り立つわけですよ。カップパー20キロ的な感じです。分かりますよね。」


「なるほど。」

テンションが上がる伊藤に椿も引き込まれる。椿も好奇心旺盛なタイプなのだ。葉一も男性として興味がないわけではない。


「そして止められぬ好奇心が、Dカップの感触しか知らない私を未知の領域へ誘うのです。」

「なんのためにスピードメーターは180㎞まであるのだと。」

「禁断の領域の中、80キロオーバー一発免取の恐怖の中誰も通らない真夜中の高速道路でアクセルを踏み込みました。」


葉一「おお」

椿「おおお」


「そして窓を開け暴風の中意を決し右手を外に」


葉一「おおおお」

椿「おおおおお、で?」


「腕折れるかと思いましたよ。でこの結果です。」


葉一「でしょうね。」

椿「あははははは。感触はどうだったの?」


伊藤はやや首をひねり答えた。

「新幹線みたいな?」


椿「なるほど。Hカップは新幹線と。」


んなわけねーだろ。


けがの理由を上司に話しているところたまたま通りがかった会長の耳に入り、面白いことを教えてもらったご褒美にここをごちそうになることになったらしい。

もちろん上司にはしこたま怒られたそうだが。


その後1時間ほど酒をたしなみ伊藤は帰っていった。


会長の車ってメーター260キロまであるんだよな。

てか20キロパーカップか


グラスを片付ける葉一の妄想に気づいたかのように椿が言う。

「葉一君今日飲んでないわね。」

ぎくりとする葉一。

「たまたま買い出しに使うのに会社から軽四を明日まで借りてきてましたので。」

ジト目の椿

「帰り走行中に手を出すでしょ。」

「出すわけないでしょ。」

「私は出すわよ。代行だからもみ放題。」

半笑いで続ける。

「正直になりなさい。出すでしょ。」

「ごめんなさい。出します。」


椿の笑い声が店外まで響いていた。

会長( ´・ω・)ノ 「新幹線といっても昔のこだま号のような鼻の丸いやつだったんだろうね。」

椿( *`ω´)「そこまで聞けるわけないでしょ。」

会長( ´Д`)y━・~~「・・・・」

椿o(`ω´ )o「マネしないで下さいね。事故りますよ。」

会長「……へんじがない。ただのしかばねのようだ。」

椿o(`ω´ )o「ドラクエのマネしてもダメです。秘書室にしばらく運転させるなと言っておきます。」

会長 (´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


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