第2話: 疫病の村
高橋直樹がエルドラの村に降り立った瞬間、その異様な雰囲気に気づいた。村全体が重い空気に包まれ、人々の顔には不安と疲労の色が浮かんでいる。遠くからは、咳き込む音が途切れ途切れに聞こえてきた。直樹は心を落ち着け、まずは情報収集から始めることにした。
「ここは疫病に苦しんでいると聞きましたが、具体的にどのような症状が出ているのですか?」
村の中心にいた村長らしき老人に声をかけると、彼は深い溜息をついた。
「おお、あなたが助けに来てくれた方か。私たちは一体どうしたら良いのか分からず途方に暮れていました。病は突然始まり、咳や高熱、そして体中に斑点が出るのです。最初はただの風邪だと思っていたのですが、どんどん悪化していって…。」
直樹は村長の話を聞きながら、手持ちの資料を思い浮かべた。この病の症状は、過去に自分が読んだことのある疫病と似ている。彼は村人たちに落ち着いてもらうために、具体的な行動を提案することにした。
「まずは感染拡大を防ぐために、病人を隔離しましょう。そして、村全体の衛生環境を改善することが必要です。水源の管理や、食事の衛生状態にも気をつけましょう。」
村人たちは直樹の指示に従い、すぐに行動を開始した。彼は次に、村の周囲を調査し、病の原因を突き止めるための手がかりを探すことにした。
村の端に位置する小川に向かう途中、彼は一人の少女と出会った。彼女は病にかかった家族の世話をしていると言い、直樹に案内を申し出た。少女の名前はリナ、明るく快活な性格だが、その瞳には深い悲しみが宿っていた。
「お兄ちゃん、私のお母さんもこの病にかかってしまって…。お兄ちゃんが助けに来てくれて、本当に嬉しいです。」
リナの言葉に胸を打たれた直樹は、彼女と共に小川へ向かった。そこに辿り着くと、水源が汚染されていることに気づいた。川の上流に何か異常なものがあるようだ。
「リナ、この川の上流に何があるか知っているかい?」
「はい、そこには古い鉱山があります。でも、ずっと使われていないので、誰も近づかないんです。」
直樹はリナと共に上流へ向かい、鉱山の入口に辿り着いた。鉱山から流れ出る水が異常に濁っていることに気づき、直樹はその原因を探るために鉱山内部に足を踏み入れた。
鉱山の中は薄暗く、湿気がこもっていた。彼は注意深く進みながら、やがて水源を汚染している原因を発見した。それは、鉱石の採掘跡から漏れ出る有害な鉱物であり、それが川に流れ込んでいたのだ。
「これが原因か…」
直樹はすぐに鉱山から引き返し、村に戻った。彼は村長に報告し、鉱山の封鎖と水源の浄化作業を提案した。村人たちは再び協力して、直樹の指示に従い始めた。
「リナ、君のお母さんの病状はどうだい?」
「まだ辛そうですが、お兄ちゃんが来てくれたことで希望が見えてきました。ありがとうございます。」
直樹はリナの感謝の言葉に励まされ、自分がここで果たすべき役割を強く感じた。彼はさらに村の調査を続け、病の完全な根絶に向けて尽力することを誓った。
次回、直樹は村の水源の浄化に取り組む一方で、新たな仲間と出会い、エルドラの村のさらなる秘密に迫っていく。彼の知識と努力が、村を救うための鍵となるだろう。