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09. 誓いのキス? 絶対にしません絶対!


「汝ルートは、エレーナを妻として、

良き時も悪き時も、富めるときもより富める時も、

病める時も健やかなるときも、

死がふたりを分かつまで愛を誓い、

妻を想い、妻のみに添うことを誓いますか?」


「は…はい…ヒック、誓います」


 エレーナが提示した条件、それは――結婚だった。


 最初は「何言ってんの!?」と断ったルートも、口八丁手八丁な話術に乗せられて、今や花婿だ。


 銀貨2枚で神父も雇い、大きな木の下で結婚式は始まった。

 街並みの反対側には草葉でいっぱいの平野が見えた。

 音のない風にそれらが揺れ、緑の波が右から左へと押し寄せている。


 花嫁は足先が隠れないほどの裾の簡素なドレスと花輪を被り、手にはブーケを持っていた。

 神父の前だからか常に余所行き用にも見えるほほえみを絶やさない。

 そして新郎と目が合うときにだけ、より晴れた笑顔を振りまいていた。


 だが、新郎は緊張から酒を大量にあおってきていた。

 おかげで式の最中は常にフラフラだ。


「エレーナさん、あなたは、ルートを妻として、

良き時も悪き時も、富めるときもより富める時も、

病める時も健やかなるときも、

死がふたりを分かつまで愛を誓い、

夫を想い、夫のみに添うことを誓いますか?」


「はい、誓います」


「では今日より二人を夫婦といたします」


 神父がにっこりを微笑んだ。


 誓いのキスは、しないことに決めていた。

 結婚とはいえ今後パートナーシップを結び、行く先々で住居を借りたり書類に記入したりする際の利便性を上げるためのもの。そう、この結婚はあくまでビジネスライクなものなのだ。

 そのような結婚なら、キスはしなくてもいい。

 あくまで目的はエレーナの妹探しと、ルートの資産形成にある。そう二人で話し合ったのだ。


 ルートもこう考えていた。

(だってキスなんてしてしまったら理性が……せっかくいい友達になれたのに……。

 エレーナだって契約結婚なのに好きでもないやつとキスなんて絶対イヤだろうしね……)


 神父にも追加で銀貨を1枚渡して、キスを省くようにお願いするほどの徹底ぶりだった。


「ふむ」


 しかし神父は見た、目の前の初々しい二人を。

 そわそわと何かがのど元を這い上がってくる。

 銀貨一枚もらった、でも言ってみたらどうなるだろう、言ってもいいんじゃないか、むしろ神のもとに愛を誓うんだからしないほうがおかしくね? いやこれは言わなければならぬ。

 私がこの二人にキスをさせるのだ!!というわけで言った。


「では――誓いのキスを」


 きっぱりと、言い切った。


「長めの誓いのキスを!」


「え……ええええ……っ!?」


 ブーケを思わず手からポロリと落としたエレーナの顔が真っ赤になった。




【ルート 資産】

 金貨    98

  内訳【銀貨20枚に両替 ー1】

 銀貨     2

  内訳【金貨1枚から両替 +20、結婚式の神父 -7、ルートの中古タキシード -5、エレーナの簡素なドレス -6】

 銅貨     0 

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