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05. 本物?偽物?

 

 酒場のすみっこで、体液、消しゴムから生まれた金属。

 それをエレーナは『オリハルコン』と呼んだ。


 彼女曰く、『世界最強の金属』であり『最も高価な金属』。

 もちろんその名はルートも前世の記憶を通して知ってはいる。

 しかしいざ目の当たりにすると、にわかには信じられなかった。


 その様子を見たエレーナは指先ほどのオリハルコンを突き返すと、彼を酒場から連れ出した。


 向かった先は王国でも高級店がひしめくバルコ・ガーデン通り。

 高級店がひしめくとはいえ、人通りは少ない。

 いくつかの貴族たちが、戦利品の箱の塔を抱えた使用人を引き連れて歩いているくらいだ。

 しかも道端には老人の物乞いがブツブツと言いながら恵みを待っていた。

 だがどんな貴族も老人に気づきもしない。


 2人はそういった光景を横切って、通りにある宝飾店で一番老舗に入った。

 その一番奥に。一番厳重に。何重もの魔法強化ガラスで覆われたオリハルコンのネックレスが展示されている。

 まさしくそれは、ルートのポケットにある金属とまったく等しい輝きを放っていた。

 店の雰囲気をネックレス1つが支配しているかのようだった。


「ね? そっくりでしょ? あ~ドキドキする……」


「そっくりだけど、でもまだわからないよ」


 二人は宝石店を出ると、バルコ・ガーデンの並木道を横並びで歩いた。


 だがとても内心穏やかではいられなかった。

 まるで宝くじが当選して、その当選番号が本当に間違っていないか目を皿にして確かめている。

 そんな心境だった。


「私たち鑑定技能も持っていないし、確かめる方法は一つね」


 そう言って彼女が目線を向けた方には、『宝石質店』の看板が釣り下がっている。




「ほんものですねえ……」


 数分前まで、

「こんな高純度のオリハルコンは滅多に出土しませんからねえ。よくできてるとは思いますけどねえ」と訝っていた鑑定士がすっかり青ざめていた。


「ほ……ほんもの? いま、本物って言った? ルゥ、あなたも聴いたよね? 聴いたでしょ?」


 ガクガクと肩を揺さぶられながらルートは「聴いた、聴いた」と返すのがやっとだった。


「そうだなあ……大変貴重なものですから……」


 店主はそういうと僕らの身なりをジロジロと見た。

 ルートとエレーナは優秀なパーティに所属していたとはいえ、入ってすぐに追い出されたため大層な格好はしていない。

 この通りを利用する貴族たちと比べてはるかに見劣りするのは間違いなかった。


「出血大サービスで――金貨50枚でどうでしょうかねぇ」


 店主がニヤニヤしながらそう言うとエレーナが食ってかかった。

 カウンターに身を乗り出して、指先を銃口のように店主へ突き付ける。


「冗談じゃないわ!

 オリハルコンは貴族たちが屋敷の家具を全部売り払ってでも身に着けたいもの。

 この大きさでもその倍はするはずよ。最低でも金貨100枚にはね。

 ……いやだっていうならいいわよ。見る目がある店に行くから」


 店主は黙って、奥の金庫からジャラジャラと音がなる袋を持ってきた。

 ずっしりと重いそれには、金貨100枚が確かに入っていた。




【ルート 資産】

 金貨   100

  内訳【小オリハルコン売却+100】

 銀貨     0

 銅貨     0 

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