【冒険者ギルド買収編 最終話】37.新婚旅行
金貨2000枚。
一時は2万枚を優に超えたグルムバッハの資産が一気に1割程度に縮小したことは、新聞各社の格好のネタになった。
『新興会社彗星のごとく散る』、『1週間の命』、『歴史的大損害』など、悲観的な見出しがニューススタンドを飾った。
また所有するギルド内で行った「バラマキ」についても批判の声が大多数だった。
『偽善的行為』、『もらい逃げが続出するだろう』、『新世代は翌月には旧世代になる』、ネガティブな文章が紙面を埋め尽くしている。
しかし数日が経過するにつれ、事情は好転していった。
『ギルド加入希望前年同月比390%増』
『依頼数前月の2割増 他ギルドに大差』
資産の大半を投げうってでも信頼回復に賭けた若き実業家、とのイメージが伝染し、冒険者、依頼者双方の信頼を得ることに繋がったのだ。
ルートがエレーナの腹部にキスをしているとき、部屋の扉がノックされた。
「グルムバッハ様 フロントにてお急ぎの手紙をお預かり致しましたのでお届けに参りました」
ルートは名残惜しそうに口を離し、絡め合っていた手をほどき、寝室を出て扉を開けた。
礼を言って手紙を受け取りボーイを見送り、その手紙を開封する。
『情報に合致する奴隷の目撃情報。数か月前にポルトクロスの奴隷市場にて』
すぐさまエレーナに手紙を見せると、彼女は深刻そうに、しかし希望を込めて「妹がここに……?」と言った。
「ポルトクロスに家を借りよう」ルートは即決して、上着を手に取った。「ここから3つ離れた町だ。ギルドの運営も並行して出来る。あっちに行って、情報を集めよう。伝手を使って『優秀な奴隷を探している実業家』として行けば、表には出ない奴隷たちも見せてくれるはずだ」
「よし」とエレーナはベッドから跳ね起きて、同じように上着を手に取り、音を立てて羽織った。それからマットレスに転がっていたオリハルコンを4つ、肩から下げたかばんに仕舞っていった。「準備OK」
「まずはシェリーに会ってしばらく留守にすることを伝えよう」とルート。「それからポルトクロスの不動産屋に掛け合って、なるべく港に近く見晴らしのいい部屋を取る。食事は?」
すると妻からは唾を飲み込む音と共に返事がある。
「あのほら、いくら食べても代金変わらないやつ」
ルートは苦笑した。
「ビュッフェスタイルね。探してみるよ」
「は、腹が減っては戦ができないってやつだから」
どちらからともなく手を取り合って、グルムバッハ夫妻は部屋を出ていった。
ルートが受け取った手紙は机の上で風に吹かれて、カサカサ、と動く。
『ポルトクロス。王国内で2番目に大きな奴隷市場を抱える港町。港を望む丘の上に築かれた大昔の砦は、今では奴隷を収容し、売買されるまでのあいだ餌をやるための『飼育場』となっている。
丘の近くに建つ住居からは昼夜問わず、遠くから叫びや泣き声が聞こえる。
ただし資産を持ち自己顕示欲の高い成金に貴族が多く滞在。
ビジネスのチャンスは多い。
追記:王国内で2番目に新婚旅行に向かない街。』
【グルムバッハ夫妻 資産】
金貨 1574(+190)
内訳【小オリハルコン売却+239、不動産仲介手数料-49】
銀貨 2025(+23)
内訳【小オリハルコン売却+23】
銅貨 197(―3)
内訳【夫婦割で買った露店の串焼き2本 -3】
冒険者ギルド 1
【冒険者ギルド買収編 完】
これにて冒険者ギルド買収編は完となります!
もし評判が良ければ続きます(笑)
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