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31.必ず最後に金は勝つ

 

 装甲を身にまとった何かが、業界屈指の怪力を誇るアンガスを無傷のうちに打ち倒した。

 しかもその何かの中に入っていたのは、かつて自分たちが追い出したルートという、あのひ弱で取り柄の一つもないと思っていた存在だった。

 そんなルートは、久しぶりに会ったクラウディアと談笑していた。


「なんだか懐かしいわねえ。ルートちゃんいつぶり?」


『もう2か月は経ったんじゃないかなあ。ごめんね別れの挨拶ができなくって』


「ううん、無理やり追い出されちゃったものね。むしろ謝るのはこっちだわ。リーダーったら強引に決めるし、人使いも荒いし。私も転職しようかしら」


『じゃあうちに来なよ』


「あら。でも私は高いわよ? それにクレリックだもの。人々に声を届けて救いの道を差し出すには世間の人気が高いこのチームは打ってつけで――」


『金貨月15枚』


 ルートがそういうとクラウディアは黙り、くるりとヴァルダルの方へ向いた。


「というわけなんで私辞めます。あ、街中で見かけても軽々しく話しかけないでくださいね。私このチームメンバーそもそも好きじゃなかったんです。ルートちゃん以外」


 さすがのヴァルダルも言葉を失ったようで、他の面子動揺に口をあんぐりと開けている。


『僕もいまいち付いていけてないけど……味方してくれてありがとう、クラウディア。1時間後に食事でも』


「まあっ」クラウディアは手のひらを胸の前で合わせた。「喜んで」


『OK、妻と新入りの子も連れてくよ』


 一転、しゅん、と彼女は肩を落とした。だがすれ違いざまにルートの異変に気が付いた彼女は、彼に簡単な魔法をかけた。


「あらルートちゃん、血が少ないわ。はい、そこの忍者ごっこが好きな中二病くんの血で申し訳ないけど輸血♡」


 気が付くとクレイの右肘あたりから細く赤い線が伸びて、ルートの同じ部位に繋がっている。クラウディアの治癒魔法の一つで輸血をしていたのだ。クレイには無断で。


「うおおおい! 勝手に俺の血をそいつに輸血すんじゃねえ! し……しかも結構取ってるぞ……、おい……」


 そのままクレイは貧血で倒れてしまった。

 再びルートはクラウディアに礼を言い、クラウディアは「これで採用試験は合格ねっ、じゃ、またあとでね」と彼の勝利を疑っていないような口ぶりで去っていった。


「て、てめえ何ちゃっかり引き抜き成功させるんですか! 赦しませんよおおおあ!」


 魔術師クアントは一刻も早く目障りな存在を消し去るべく、ろくに分析もせず、炎魔法を唱えた。


 瞬く間に生み出された火球が、空間を切り裂きながら突き進む。

 ルートはそれを頭部にモロに食らってしまった。

 小さな爆発と炎の奔流が広がる。


「……は、ハハーッ!」クアントは高らかに奇声を上げた。「筋肉馬鹿を倒したくらいで調子に乗ってんじゃありませんよタコがあ! 新作の鎧を付けて意気揚々としてましたけどねぇ! 私の炎魔法は鋼鉄をも楽々と溶かすんですよマヌケ!」


 武闘家サンシロウは警戒を解き、拳を収めると同時に眉間から力を抜いた。


「アンガスの肉体の強靭さは誰もが知っている。にも関わらずやられた。つまりは不意打ちか、卑怯な手を使ったのだろう」とサンシロウ。


 だがヴァルダルは立ち込める煙の向こうをにらみつけたままだった。


「まだ終わってねえぞてめえら」


 彼の言葉が真実だと、すぐに分かった。

 煙の向こうで何かがゆっくりと立ち上がる。

 刃物を研ぐような音を立てて装甲がこすれている。

 目と左胸部から発せられる光が、再びセブンペガサスに向けられた。


『しまった、油断してた』とルートの声が響く。『扇でも持ってくればよかった』


「な、なんですあの防御力は……」手を震わせながらクアントは言った。「鋼鉄をも瞬時に溶かす私の炎魔法が、き、き、傷一つ付けられないなんて」


 じりじりと後退を始めるクアントにヴァルダルが渇を飛ばす。


「うろたえんじゃねえ! 俺にはその鎧の検討が付いたぜ。当ててやろうか雑魚。それはオリハル剣と同じ、オリハルコンでコーティングした鎧だろう」


『……!』


 ルートの静かながらも確かにあったリアクションを見て、ヴァルダルは確信を深めたようだ。


「フハハハハ! やっぱりな! それならいいモンがあるぜ……」そう言ってセブンペガサスのリーダーはローザを放り出して、席の下から一振りの剣を取り出した。まぎれもなくそれは『オリハル剣』だった。


「国中の鍛冶屋をあたって改造させた特注品だ! お前のとこの技術力じゃ含有率も1%ほどだったようだが……これは3%の含有に成功した! 常に俺はお前の百歩先を行ってるんだよぉ! 役立たずくうぅぅぅぅぅん!」




 一方そのころ、セブンペガサスの屋敷を見下ろせる丘の上。

 エレーナとシェリーは二人並んで双眼鏡を手に取って、戦いがどう転ぶのかを眺めていた。

 ガクガクと身を震わせている新妻に対して、シェリーは余裕綽々、ソーダをストローで啜りながらピクニック気分だ。


「ね、ねえシェリーさん」エレーナが訊いた。「ルゥの着てる鎧ってホントに大丈夫なんでしょうか」


「そりゃあもう…ズゾゾゾゾ」と一度ソーダを啜るシェリー。「ふぅ……なんてったって()()()()()()()()()()()()ですからね。大陸を乗せても壊れないですよ」


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