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17. オリハルコン製品第一号

 伐採された樹木のように倒れたシェリーは意識を取り戻すと5倍は大きな声でまくし立てた。


「きっとご期待に添えます! 自信があります! お願いですから私にオリハルコンを提供してくれませんか……!? これが叶わないなら私の生まれてきた意味はなくなっちゃいますぅ! お願いしま”す”ぅ”う!」


 断ったらホテルの窓から身投げでもしかねないと夫妻は思った。二人は話し合うまでもなくシェリーにオリハルコンを提供する意思を固めた。


 ひとまず令嬢を落ち着かせようとエレーナが水差しからコップへ水を注いだ。それを彼女に手渡す。

 受け取ったシェリーは礼を言ってからコップに口をつけようとしたが、水が濁っているのを見て「……ぁやっぱダイジョブす……」と急に盛り下がった。

 意図した形ではなかったが場が落ち着くと、ルートは令嬢の気絶中に練っていた考えを話し始めた。


「オリハルコンの提供はしよう」


 シェリーの顔がパアっと明るくなる。


「まずシェリーさんにはオリハルコン装備の試作をしてもらいたい。万人が、一目でハッキリと差を理解できる道具がいい。剣だ。打ち合った相手の剣を破壊するほどの性能を見せつけられたらうちの商品をどこにだってアピールできる」


「剣を打つのはウチの職人の得意分野です……!」とシェリー。


「よし、それでいこう。シェリーさん、まずはお宅の工房でオリハルコンを少しだけ混ぜた剣を作ってください」


「すこし?」とエレーナが不思議そうにする。「オリハルコンは大量に作れるんだから、量はケチらず純粋なオリハルコンの剣を作った方が高く売れそうじゃない?」


「一振りだけの単価を上げるならそれが最善の方法だろうね。でも純粋なオリハルコンを一気に市場に流通させてしまうのは危険だ」


「需要と供給の原則、ってやつですね……」シェリーが言う。エレーナに知識がないのをみてあざ笑うでもなく、順を追って丁寧に説明していく。

「装飾品としてのオリハルコンを欲する人間が多い中で、いきなり純オリハルコン製の剣を出しても、あくまで装飾品としてしか見られません……。そのうえで何本も作ってしまえばオリハルコンの価値は低下してしまいます……。どんどん安く買えるようになってしまう」


 説明を受けたエレーナはすぐに腑に落ちた。


「そうか……! オリハルコンが高額で取引されているのは『珍しい』からなのね」


「うん。僕らはオリハルコンを『珍しい』から『欠かせない』に変えていく必要がある。その為には『希少性を極限まで落とした』、『既存のものよりも高性能』な製品を出すんだ。剣はその先陣を切る」


「そうと決まれば」とシェリー。「わたくしはすぐ帰って試作に取り掛からないと」


「ええ。そうしてもらえると助かります。これ、さっき試験で使ったオリハルコンです。使ってください」


 オリハルコンを受け取ったシェリーは再び青ざめていたが、すぐに顔を上げてコクリ、とうなずいた。


「かしこまりました、ぼす!」


 その呼び方はやめてください、とルートは慌てて止めさせた。


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