005 検査結果①
MRI検査が終わり、もう当分検査はやりたくないとげっそりとした毎日を送っていた私。検査結果を聞くまでに更に二週間も間が空いていたので、精神的にもぐったり。
できるだけ考えないようにしようと思ってはいるが、ふと思いつくのは『癌だったらどうしよう』『私、いなくなっても家族大丈夫だろうか……』そんなことばかり。
普段私は、あるボランティア活動に所属しているのですが、そこで一緒に働いていた人にポロっと自分の現状を話してしまった。
主人にだけは話してはいたんだけど、結果が出るまでは誰にも言わないでおこうと思って。そしたらすごくびっくりされて……それはそうだろうけれど……。
「でも、検査して二週間も特に連絡がないなら大丈夫なんじゃない? 急を要するような検査結果なら電話が来ると思う」
そんなことを言ってくれる同僚。それ、信じていいのだろうか……と思いつつ、少しだけ気が楽になったのは確かだった。
そしてやっと迎えた、検査結果当日。三度目の大学病院。いつものように、受付の機械に診察券を通す。そうすると、その日の診察予約と呼出し番号が書かれた紙が出てくる。
なので、予約時間に間違えがないか目を通す。
耳鼻咽喉科 十時半
消化器内科 他診療科より予約受付
「ん?」
私、自分の目をごしごしこすったよね。消化器内科? 他診療科が予約? そんなの私、予約してないし……。間違えているのかな? っとわざと明るく自分の中でスルー。
とにかく耳鼻咽喉科に行こうと向かいます。すでに三度目なので、もう慣れた私は診察室の前で椅子に座って大人しく待つ。
予約していても結構待たされてしまうのですが、この日も予約時間から二十分くらい過ぎてからティコンッって鳴ってディスプレイに表示された自分の番号。
一回深呼吸をして、診察室に入った。中で待っていたのは、初診の時とは違う先生。はじめましての先生は、「耳鼻咽喉科〇〇です。よろしくお願いします」と前回の先生同様、挨拶してくれた。
緊張しながら「よろしくお願いします」と診察台に腰掛ける私。一拍置いて先生が、検査結果を話してくれた。
「今回は特に検査結果に問題はありませんでした。どう? その後、痛いとか腫瘍が大きくなったとか変化あった?」
先生は、淡々と話をしてくれます。私は、心の中で良かったーとそれはほっと胸を撫でおろす。
「とくに何も変わりないです」
私はにっこり笑顔。
「では、一度見てみるので口開けて下さい」
そう言って、先生がこの前と同じように見てくれる。
「一応、写真も撮っておくからね」
手際よく診察をしていく先生。私は、とりあえず最悪な事態にならなかったことで、今まで心に重くのしかかっていた靄がサーと消えてなくなった気がした。良かった良かったと心の中で繰り返す私。
「それで、前回も説明した通り癌になる可能性があるから取った方がいいんだけど、手術はするってことでいいかな?」
そう言われた私は、ズドーンと現実に引き戻されるんだけど……。癌になる可能性があるなら取るしかないんだろうなって、渋々返答します。
「はい。よろしくお願いします」
「何か質問とかある?」
「手術の時間はどれくらいなんですか?」
「手術自体は三十分ぐらいで終わるんだけど、取った腫瘍と周辺の細胞をその場で検査するんだよ。色々検査して大丈夫ではあったけど、現物を検査して確認するのが一番間違いないからね。その検査に1時間くらい待たなくちゃいけなくて、検査結果でOKでたら閉じるからトータル余裕見て二時間の手術になるよ」
へーそうなんだと素直に関心する私。その場で即検査して、結果がでるんだなと感動すらある。あとは、何か聞くことって考えて質問する。
「あのっ、どなたが手術してくれるんですか?」
「あー。それね、ギリギリにならないとちょっとわからなくて……。誰がいいとか希望ある?」
またしても……美容院の担当じゃないんだからさ……。それに、どの先生が何が得意とか知らないし……。
「ん-ちょっと分からないから希望とかはないです……」
「安心して大丈夫だから。誰になっても耳鼻咽喉科の先生全員で朝日さんのことは共有できてるし、そんなに難しい手術って訳でもないからね」
先生は、朗らかに話してくれます。人当たりのいい先生です。
「わかりました。よろしくお願いします」
「うん。じゃー、手術の詳しい内容は別室で看護師から説明するからね。それでね、実はMRI検査でたまたま肝臓に嚢胞が見つかってね。それは僕らではわからないから、消化器内科の先生に見てもらいたくて別で予約しておいたから今日いけるかな?」
は? 今までの安堵はどこへやら、一瞬で闇の中に突っ込んだよね。
「はっ、はい。ダイジョウブです」
どうしたって動揺はもう隠せなかったよね……。現実逃避しそうになっていた私に、先生は更に話を続けてくる。
「あっ、あと一応、もう一回血液検査を今日していってもらいたいの。だけど、消化器内科の方でももしかした血液検査必要かも知れないから、先に消化器内科の受診をしてその後、血液検査してから帰って下さいね」
「……はい……わかりました」
「では、もう今日は大丈夫ですよ。次は別室で手術の説明受けて下さいね」
「……はい。……ありがとうございました」
完全に元気が無くなっている私。肝臓ってなんだよ! お酒飲まないし、肝臓悪くするような要素全くないんだけどー泣
次回、消化器内科に続きます。