004 初めてのMRI検査
初めての大学病院での診察を終えて帰った日から『癌だったらどうしよう……』『転移とかしていたら一体どうすれば……』などなど、憂鬱な毎日を送っていた。
次に病院に行くのは、初診から一週間後のMRI検査。検査結果を聞くのは祝日を挟んでしまったので、さらに二週間後。三週間もずっと鬱々とした日々を送るのですが……その前にMRI検査が待ち受けている。
今日は、MRI検査についての体験記を書こうと思っているのですが、その前に一つだけ横道に逸らさせて下さい。
ただの口内炎だろうと思っていたものが、かなりの大事になってきて不安な日々を送っていた訳ですが……。これってもしかしたら、セカンドオピニオンとか受けた方が良いやつなのか? とか思い始める。だって手術だし。
言葉はよく聞くセカンドオピニオン。でも、どうやってやればいいのかとか全然わかならない。
そこで登場するのが便利なネット。はい、いつもと同じように検索する。
「セカンドオピニオン」「やり方」
すぐに沢山情報が出てくる。引っかかった記事に目を通すと、意外な事実が判明。セカンドオピニオンするためには、そのための金額がかかるってこと。
皆さん知っていました? 私、全然知らなかった。てっきり、最初に見てもらった病院の検査結果を持って行って、他の病院で同じように診察してもらう感じなのかと思っていた。だから、費用も普通に診察するのと同じなのかなって。
そしたら全然違った。セカンドオピニオンの金額は、病院によって違うらしくその費用は30分21600円。(一例です。地域や病院によって金額差あります)
しかも時間が増えるごとに高くなる。保険適用がないのでこの値段。また、紹介状を書く方の病院にも費用は発生するがこちらの場合は保険適用。
基本的にセカンドオピニオンは、病状の説明や治療方針を別のお医者さんに確認するためのものなので、特に差異がないなど問題がなければ初診のお医者さんに戻すのを推奨しているとのこと。
検索して調べた結果、私はへーって思った。思ったよりも金額が高いし、検査結果を初診のお医者さんがまとめて紹介状という形にするので、先生側は割と手間もかかる。
相当、不安だとか治療方法が特殊(手術が難しいなど)じゃなければ、やらないだろうなと言うのが正直な感想だった。
だって私、初日の大学病院の請求書かなりの額だったわけ。だって、いきなりCT検査とかしたし。
そんな訳で、私の場合はまだ検査結果も出てないしセカンドオピニオンを考えるのはまだ早いなと思った。
ちょっと脇道にそれてしまいましたが、本題のMRI検査に戻ります。鬱々とした日々を送りながらも、刻々と日々は過ぎていって検査日当日になった。
今回は、事前に造影剤を使用する同意書と注意事項が書かれた紙をもらっていた。同意書は、CT検査の時と同じものだったのでサッと読んでサインをする。
次に注意事項の書かれた紙に目を通したのですが、かなり禁止事項がたくさんあった。
お化粧× コンタクト× ネイル(マグネット・ジェルネイル)× 金属類× アートメイク× 入れ墨× タトゥー×
これらは、磁気のために火傷してしまう危険性がある。こんなことも、実際に受けたことがないと知りようがない。私は、いつもコンタクトなのでこの日は眼鏡に変えて出かけて行った。
ここで、MRI検査についての説明です。
――――MRI検査とは超伝導磁石が埋め込まれたトンネルの中に体を入れて検査。磁石と電波の力によって体の中の構造を調べ、コンピューターによって人間の目でわかりやすい画像を再構成する。これらの方法によって体の中を映し出す検査。レントゲンと違って、人体には無害。
病院に到着して、地下にあるMRI検査室に向かう。今回は、二回目の来院なので病院内の場所も覚えていた。
MRI検査の受付を済ますと、予約時間よりもちょっと早めに着いたのが良かったのか、すぐに検査服に着替えるように言われた。
MRI検査も前回同様、初めてなのでどんな検査なのか内心ドキドキしていた。またあの注射も打つのか……と若干テンションは低め。
検査服に着替えた私は、待機場所に向かう。そこで検査技師さんから、いくつかの質問事項を聞かれた。
まずは、上で紹介した禁止事項の確認。メガネはギリギリまでつけていてOKなので、後で外して貴重品入れに入れる説明も受ける。最後に、金属探知機で全身のチェックを終えたら厚い扉を開けて検査室に入る。
中には、白い大きな筒が真ん中にドンっと置かれていて筒のトンネルの前に横になる台があった。
その台に横になるように言われる。その前に付けていたマスクも取る。全体がガーゼで鼻部分に金属が入ってないものと交換しますと軽く説明された。
準備ができたら台に横になった。上からタオルをかけてくれて、音対策に耳に小さいクッションを入れてくれる。
その後は、CT検査の時と同じように腕に造影剤の注射を打つ。この時の担当さんも、ミスすることなく一発で入れてくれた。
今回は、頭と首の胸から上の検査なので頭をガッチリと固定された。剣道の防具みたいなのを上から被せられ、そして最後に手に連絡ブザーを握りしめる。
「何かあったら、このブザーを押して下さいね。動きに弱い検査なので絶対に動かないで下さい。では、始めます」
検査技師さんがそう言うと、検査台がトンネルの中に押し込まれて白い空間の中にすっぽりと納まった。またしても言われてしまった、動かないで下さい。
ただでさえ緊張しているのに、動かないでと言われて体に力が入っちゃう私。この時すでに、極度の緊張で胸はバクバク。すると頭の方から検査技師さんの声がした。
「では、検査始めますねー。何かあったらブザー押して下さい」
一拍置いて、ジーと機械が動き出す。それとともに、ガーという音が鳴り響く。MRI検査は、とにかく音がうるさいと前情報で読んだのですが、私的にはそこまで気にならなかった。
うるさいのはうるさいけれど、耳に置いてくれたクッションが良かったのかもしれません。音も、結構色んな音がして、ガチャガチャ、ピーピーピー、ガーガーガー、とにかく一種類の音じゃない。
磁気が体を通るからなのか、じんわりと体が温かくなる感覚がある。そして今思うと、この時は全然大したことないのだけど……とにかく初めてで緊張してて力入っちゃってたから精神的にキツイ。
動いちゃいけないってどの程度なのかわからないし、目は開けていいのか? とかくだらないこと考えちゃって。そして、耐え抜くこと数十分。また、検査技師さんから声がかかる。
「一度、画像確認します。少々お待ち下さい」
良かった、終わったと胸をなでおろす私。暫くすると、シャーと台を筒から引き抜かれた。
「お疲れ様です。これで半分終わりましたからねー。あと半分、造影剤入れて撮影しますからねー」
笑顔で検査技師さんから言われる。私は、心の中でまじで? 今のが半分なの? 長すぎじゃい? もうあと半分同じことするの? って動揺が半端ない。確かに、造影剤のことすっかり忘れてたけども……。でも忘れちゃうほど、長かったのよ。
でも、そんなこと言ったってやるしかないから、検査技師さんはテキパキと準備をしてくれるんだけど……。
準備を終えた私は、もう一度筒の中に台が移動する。さっきいた空間に逆戻り。
「では、今度は造影剤を入れていきますね。何かあればブザー鳴らして下さい」
そう言われた直後、CT検査の時と同じ不快感が体を襲った。注射からじわじわと温かい液体が入ってきた感覚。すると、またさっきと同じようにガーという音とともに検査も開始される。直後、造影剤が血管にいきわたる温かい不快感と磁気が体を通る温かい感触がぶつかる。緊張感が解けてない私は、感覚が鋭くなっちゃってその感覚がもう気持ち悪くて「無理無理無理ー」って心の中で叫ぶ。
でも、一回で検査を終えたい私は必死で堪える。こんなの二回も絶対にやりたくない一心で、他のことを考えようと神経を目に集中させた。
んで、頭の中を真っ白にして何も考えないことにした。そうしたら、体の不快感は感じなくなったけどさらなる精神的負担が大きくて……。検査が終わる頃には、もうぐったり。
無事にノルマを達成して外に出て来た時には、なんか後光が見えた気がする。体を固定されていた機器とか点滴とか外してもらうと、もうやりきった感が凄かった。私、よく頑張った。
「では、ゆっくり起き上がって下さい。お疲れ様でしたー」と言われて、起き上がるんだけど全身に力入ってガチガチだったから、なんかちょっとクラクラしちゃって。
「すみません。なんかクラクラしちゃって……」
「あっ、では一回台に戻って座って下さい」
私は、素直に台にゆっくりと腰を降ろしてちょっと休憩させてもらう。しばらくすると、だいぶ収まったのでもう大丈夫ですと立ち上がる。
「本当に大丈夫ですか?」と心配されたが、もう早く帰りたかったしそのまま立ち上がって検査室を後にした。
たぶん、検査時間四十分くらいはあったと思う。長い。長すぎるだろーって泣きそうだった。もう当分、MRI検査なんてしたくないって心から思った。
でもね、検査が終わって落ち着くと、もっと力抜いてリラックスすれば良かったんじゃないの? って後々気づいた。だって誰もそんなこと言ってくれないし……。
どう考えても、力入れすぎだったし緊張しすぎだった……。でもさ、これは経験したからわかること。初めてのことって緊張するじゃん。
これから検査を受ける皆様、CT検査もMRI検査も動いちゃ駄目だけど力抜いてリラックスして望んで下さい。そしたら割と大丈夫。
そんなこと言って本当なの? って思った方。本当です。だって、私が実践したのですもの。
――――まさか、二度目のMRI検査があるなんて……誰が予想する?
次回、ついに明かされる検査結果です。