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002 初めての大学病院

 九月中旬


 人生で初めてやってきた大学病院。当たり前なんだけど、色々な科があって大きい病院だった。初診の予約は朝10時。受付を済ませていざ耳鼻咽喉科へ。

 耳鼻咽喉科前の待合室は、たくさんの患者さんが座っている。飛び飛びに壁にディスプレイが置かれていて、呼ばれると自分の受付番号が表示される仕組みになっていた。


 耳鼻咽喉科だけでも、診察室が五個くらいある。凄いなーとか思いながら、ひたすら待つ。心の中では、検査ってどんな検査なのかな? とか、いきなり癌とか言われないよね? と嫌なドキドキで溢れていた。


 ティコンッと新しい順番が表示された音と共に、私の番号が表示される。冷静を装いつつ、椅子から立って指定された診察室へと向かった。

 扉を開けると、男の先生とパソコンに向かっている女医さん、隅っこに医学生だろう白衣を着た青年が椅子に座っていた。


 ここでちょっと余談なんだけど、大学病院なので医学生の実習生がいる場合がありますと事前に書類を配られてた。

 あっ、こういうことかと納得する私。


「よろしくお願いします」と挨拶をして、診察台に座る。すると、先生が自分の名札を見せて「医師の〇〇です。よろしくお願いします」と丁寧な挨拶が返ってきた。


 今まで、お医者さんに自己紹介とかされたことあったかなと思いつつ先生と向き合う。病院に来た経緯を簡単に説明した。


「口内炎ですね。では、見てみますので口を開けて下さい」


 先生は、椅子から立ち上がって眼鏡にくっついているライトを付けて口の中を見てくれる。


「あー。確かにあるね。これ自分で気づいたの?  歯医者さんじゃなくて?」

「はい。本当にたまたまだったんですけど……」

「そっか。そっか。首周りとかは、特に違和感ない?  喉が痛いとか。扁桃腺が腫れているとか」

「ないです」

「ちょっと触らせてねー」


 先生が首周りに触れて、感触を確かめる。私的に、首周りって何?  え?  と内心恐れおののく。ちなみに白板症の場合、自分で気づかずに歯医者さんが見つけてくれて病院を紹介されるパターンが多いらしい。ネットに書いてあった。


「うん。確かに腫れているとかはなさそうだね。でも一応、内視鏡でも確認しようね」


 そう言って先生が、黒くて細い線をどこからともなく引っ張ってくる。え? いきなり内視鏡? 何なになに? それ、痛いんじゃないの? って私の心は暴風雨ですよ。


「鼻から入れるから、リラックスして力を抜いてねー。頭、後ろに付けて上向いてー」


 私は、言われた通りに上を向く。すると、先生が黒い管みたいなのを鼻の中に通して行く。痛くはないけど、苦しいってか違和感! 気持ち悪い。


「はい。息吸ってー。うんうん。喉は綺麗だね。大丈夫そうだ」


 先生は、スッと管を抜く。痛くないけどさー、まさかいきなり内視鏡入れられるとは心の準備がーってげっそり。


 すでにゴリゴリに削られている精神に追い打ちをかけられる。先生は、一度椅子に座って私に向きあう。一呼吸おいて、説明を始めた。


「まずね。これは検査してみないと悪性が良性かわからないの。だから、まず検査をします。今日、血液検査とCTの予約を取るので時間ありますか?」


 え? これ無いとか言えないよね? 私は、素直にありますと答える。すると先生が、更に説明を続ける。


「良かった。あと別日になっちゃうんだけど、MRIの検査も受けて貰うね。それでね、良性でも悪性でもどっちにしても手術して取った方がいいんだけど。とりあえず仮で手術の予定も取っちゃっていいかな?」


 はい? って心の中はパニックですよ。でも、そんな私には構わずに先生は話を続ける。


「入院もすることになるんだけど」


 ここで、流石の私も言葉を発する。


「入院って期間はどれくらいですか?」

「うーん。長くて一週間かな。舌だから痛いんだよね。ご飯が食べられないから、それ次第なんだけど。あと手術は、二時間くらいの手術です。難しい手術って訳じゃないから、心配しなくて大丈夫だよ」


 先生は、心配させないようにかさっきよりも明るく話をする。だけど私は、いきなり手術の予約と言われてただただ呆然。だけど、ネットで読んだ通りだしきっとそれが最善なのだろうと、頷くしかできない、


「では、手術の予定とりますね」


 そう言って、先生が一冊の大学ノートを出してきてパソコン担当の女医さんと話し出す。え? なぜ、このIT化の時代に大学ノートなんだと違う驚きが襲う。

 カルテとかはパソコンなのに、そこはノートなんだと変なところが気になってしまう。


「うーん。もう結構先まで予定一杯なんだよねー。11月半ばだったらいけるかな?」


 女医さんとあーだこーだと話す先生。それを見つつも、私の頭の中は癌の可能性もまだあるってことだよね? と怖くなる。


「では、この日で予定お取りしますので。それで、この後受けるとMRIとCTだけど、より分かりやすく見るために造影剤を使った検査だから。癌だった場合に、首にあるリンパに転移してないか確認する目的もあるからね。検査の説明は看護師がするから」


 情報量が多すぎて、処理しきれない私。とりあえず、診察室を後にして待合室に戻った。ただの口内炎だと思っていたのが、まさかこんな大事になろうとは……。

 ネットで調べて、手術の可能性もあるって心の準備はしていたつもりだったけれど……。初診でいきなり手術の予約まで取ることになるなんて……。展開の速さに恐れおののく。


「まじかよー」って叫びたい私がいた。


 次回、初めてのCT検査。


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― 新着の感想 ―
[良い点] うわあ、ただ口内炎を見せに行っただけなのにナニコノ「内視鏡」「良性でも手術」「舌だから痛い」の波状攻撃。(笑) 笑っちゃ失礼だけど笑ってしまう。 コレで落ちない城があるだろうか。
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