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第3話


2人の検査が終わり、私たちの番になる。


「では、同様にこの瓶に手をかざしてもらえるか?」

「はい」


新しく用意された同じような瓶にアルシェさんが手をかざす。


すると水が動き出し止めどなく溢れてくる。

瓶から溢れ、広場をどんどん濡らしていく。


「え」


審査担当の教師から戸惑った声が漏れる。


「こ、これはどういうことだ…?」

「何か問題なんですか?」

「と、とりあえずその手を下ろしてください」


アルシェさんは手を下ろしたが水は止まらない。

どんどん溢れてくる水のせいで、少し離れていた私たちの足元も濡れていく。


「水やばくないですか?」

「分かっています!」


先生が慌てていると、後ろの方で見ていた先生が駆け寄ってきた。


「どうされましたか?」

「この生徒の魔力量が異常です」

「え、俺のせいですか?」


アルシェさんは何もしていないという顔をしているが、明らかにアルシェさんが関わっていると思う。


「……少し調べたいことがあるので、お2人はこのまま待機していてください」

「分かりました」


私も頷いておいた。

どうやら人間の言葉を話す使い魔は少ないらしいから喋らなくても違和感ないだろう。

まぁ、さっき大勢の前で話してしまったから今更過ぎる気もするが。


審査担当の先生や集まってきた先生は水が止まらないせいか、顔を引きつらせている。


「アルシェ、何やったんだ?」

「普通に手をかざしただけなんだけれど…」


ジニアさんは心配そうにアルシェさんと話している。

私はこの機会にランサさんに話しかける。


「あの、あれって何をすればいいんですか?」

「あぁ、あれは主人と使い魔の相性や契約がちゃんとできているかを見るんだ。あの液体は特殊な作り方をされているから、最初に干渉した人間本人と使い魔以外は干渉できないようになっているんだ。まぁ、自分にできることをやれば問題ないぞ」


親切に教えてくれたランサさんにお礼を伝えて慌てている教師陣に近づく。


「あの、手伝いましょうか?」

「なっ、先ほどの白虎様ですか!?」

「…ルイです。ところでこれどうやって止めるんでしょうか?」

「……」


私の質問に対して教師たちは黙り込んでしまった。

その間にも水は増え続けている。


「あの、とりあえず止めちゃっていいですか?戻した方がよければ戻すので」


それだけ伝え、水をじっと見つめる。


練習通りやればいいと思っても、この世界では初めて魔法を使うから緊張してしまう。


落ち着け、大丈夫だから。


心の中で言い聞かせながら集中する。





すると水はだんだんと形を変えていき、大きな鳥に姿を変えた。


大きな水の鳥が羽ばたく度に霧状の水が辺りに降り注ぐ。

鳥の中心には未だに水が溢れ続けている瓶を入れておいたため、水という不安定な物質でも十分体を構成できている。



「綺麗…」



後ろにいるジニアさんの声が聞こえた。

それが嬉しくなって思わず尻尾を揺らしてしまう。

表面的だけでも平静を保ちつつ、空中浮揚を続ける鳥を見上げる。


「その水が出ている瓶ごとあげるので自由に暮らしてください。できれば水に困っている地域で暮らしてくれると嬉しいです」


そう伝えると理解したのか、鳥は大きく頷いた。

そして大きく羽ばたき、虹を作りながら遠くに飛び去って行った。


「…あっ、自由にしたらいけませんでしたか?呼び戻しますか?」


今更気づいてしまい焦るが、教師たちを見ると唖然としているようだった。


「えっと……大丈夫ですか?」


呆けたような顔だった教師たちは、すぐに我に返ったようで詰め寄ってきた。


「先ほどのは何ですか!?」

「はい?」

「先ほどの水鳥です!!あれは何の生物ですか!?」

「いや知らないですよ。水が溢れ続けていたので凍らせても意味ないだろうなと思い、生き物になるよう力を加えただけですので」

「力を加えたとはどういうことですか!?」


物凄い熱量で質問を続けられるが、あまりの圧にたじろいでしまう。

こちとら半引きこもりみたいな生活を長時間していたんだからもう少し優しくしてほしい。

怖くなり、しゃがんでいるとアルシェさんが間に入ってくれた。


「今の術に興味があるのは分かりますが、ルイのことを考えて質問してもらってもいいですか?」


アルシェさんのその言葉で教師たちはようやく私が怯えているのに気付いたようだ。


「すみません、あまりにも無礼でした」


アルシェさんの言葉を聞いて、慌てて謝ってくる。

別にそこまで気にしてないので首を横に振る。


「ルイ、大丈夫だったか?」

「はい、助かりました」

「元はと言えば俺のせいだよな。ごめん」


アルシェさんは申し訳なさそうな顔をしているが、特に何もなかったので気にしないでほしい。


審査自体は問題なかったようなので寮の受付に通される。


「ジニア・レヴァンタさんとアルシェ・ルフォードさんですね。こちらがそれぞれの部屋の鍵になります。」


受付の女性にから鍵を受け取った2人は不思議そうに顔を見合わせている。


「もしかして隣?」

「僕たち元々縁あったんだね」


会話から察するにどうやらジニアさんとアルシェさんは部屋が隣らしい。

同じく話を聞いたらしいランサさんが隣に座る。


「隣みたいだな」

「ですね。広い部屋だと嬉しいのですが…」

「広さとか気にするタイプなのか?」

「今まで広いところで暮らしていたのでちょっと不安で」


その言葉にランサさんは不思議そうに首を傾げている。

あとは今は違うが、前世が男女だったことも意外と気にしてしまう。

まぁ、アルシェさんに虎を襲うような趣味はないと思うから気にしなくていいと思うが。



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