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第10話


「……遅い」

「ごめんって!」


あれから部屋に戻ってアルシェさんは着替えたり準備をしたりしながら待っていたのだが、一向にジニアさんはやって来ない。

私もネックレスを弄りながらも暇を持て余していた所でようやく来たのだった。


「お待たせしました…」

「まぁ登校時間内には間に合うからいいか。じゃあ2人とも行ってくるな」

「行ってらっしゃい」

「慌てずお気をつけて~」


アルシェさんとジニアさんを見送り扉を閉めたところでランサさんがため息をついた。


「何とか間に合った…」

「お疲れ様です。ジニアさんの寝坊ですか?」

「何やっても起きなかったからそろそろ実力行使に出ようかと考えた時にちょうど起きてくれたからまだ良かった」


暴力を取るか遅刻を取るか、ランサさんにとっても悩みどころだったようだ。

垂れ下がってしまっている尻尾がその苦労を物語っていた。


「ルイの方はどうだった?」

「私の方は逆にアルシェさんが先に起きていて驚かされました。起こしてくれれば良かったのにと伝えたら、急いでなかったからなんて言われてしまって」

「…今後ジニアさんを起こす時はアルシェさんに協力してもらおうかな」


よほど苦労したのか遠くを見ているランサさんを見て思わず笑ってしまう。


すると、何かに気づいたようにランサさんがこちらを向いた。


「そういえば今日の予定とか考えたのか?」

「私はこの辺の立地が分からないので散策しようかと。ついでに服がないので買いに行こうかなって」

「服?」


ランサさんは不思議そうに首を傾げる。

たしか神様は人間に姿を変えることができる使い魔は少ないと言っていたから当然の反応だろうと今更ながら思う。


「説明が少し面倒なので実際に見せますね」


魔法で毛の色を戻すと共に人間の姿になる。

高くなった景色に少しだけ違和感を覚えつつも、手を広げてアピールをする。


「こんな感じで人間化できるのでそれ用の服も数着欲しいなと」

「おぉ、すごいな。しかも相当可愛い部類に入るんじゃないか?」

「ありがとうございます。ランサさんも人間化します?」

「あー、実は自分でできるにはできるのだが耳と尻尾が残るんだよ」


そう言いながら人間化したランサさんはたしかに狼の耳と尻尾が残ってはいるものの、姿は人間を完璧に模倣していた。


「帽子を被ったりすることでいくらでも隠せるからそんなに気にしなくてもいいんだけどな」

「……あ、そう、ですね」

「どうした、どこか変か?」


きょとんとした顔で首を傾げているが決して変なわけではない。

ただ、私のタイプの顔且つイケメンはただの顔面偏差値の暴力である。


「……いえ、なんでもありません」

「そうか?ならいいけど」


危ない、危うく本音が漏れるところだった。

心の中で深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。


前世で先輩に彼女がいることを知ってから所謂推しというものに思考を逃がしていたのだが、その推しとランサさんの外見が似ている。


ありがとうあの時の推し。

あなたのおかげで今もの凄くいいものを拝めています。



「服を買いに行くなら俺も一緒に行っていいか?」

「構いませんけれど、ランサさんの予定は大丈夫ですか?」

「あぁ、問題ない。そもそも何も考えていなかったから」

「そうだったんですか。じゃあ早速ですが行きますか」


ここはアカデミーの中だから一応獣の姿に戻ることにした。


見たことない人が敷地内をうろついていたら通報される可能性だって考えられる。

お金が入った袋には紐をつけてくれていたからちょうど首から下げることができた。


「お金はあるのか?」

「アルシェさんから貰ってます。心配するなって言われてしまって」


お金の入った巾着袋を見せるとランサさんは納得してくれたようでそのまま部屋を出た。

鍵はオートロックなのか勝手に閉まってくれた。


「生体認証でもあるんですかね」

「せい…?なんだそれ」

「あー、えっと…個体を認識して勝手に開くようになっているのかなって」

「そういうことか。多分だけど識別魔法がかかってるんだと思うぞ」


何気なく出した物がこの世界には存在しないものだと知ると、改めて異世界に来たんだという実感が湧く。


アルシェさんの前でこんなボロを出しては変に言及されかねないから気を付けないと。


2人でアカデミーの外に出るために歩いていれば、姿が獣だからか周りからは優しい目で見守られる。


「この辺りに服屋ってあるんですかね」

「辺境でもないし多分あるだろ」



寮を出て、しばらく歩くとアカデミーの門が見えた。


どうやらここを出ると街の敷地になるらしい。


警備隊らしき人に「気を付けてね~」と声をかけられながら私たちは門をくぐった。



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