第6話
食事を終えると個々でやることもあるだろうということで、ジニアさんとランサは自室に戻り、私たちも部屋へ戻った。
「ご飯美味しかったですね」
「…そうだな」
なんだか機嫌が悪いようだ。
何かあったんだろうか。
「どうしたんですか?」
「…………」
やはり無言だ。
こういう時は放っておいた方がいいのかなと思い自室に戻ろうとすれば声をかけられる。
「どこ行くんだ」
「自室に戻ろうかと」
「…そうか」
やっぱりおかしい。
それに心配よりもじれったさが募ってくる。
「…ちょっとそこ座ってください」
ソファーを示せば動揺しながらも座ってくれた。
私はその向かいに座る。
「言いたいことがあるなら素直に言ってください」
「いや何も…」
「あのですね、これから長い付き合いになるんですよ?敬語を無くすとかよりも、言いたいことを素直に言えるような関係を築くことを優先すべきじゃないですか?」
感じていたことを素直に伝えるとアルシェさんは口ごもりながらも話し始めてくれた。
「…毛の色さ、周囲の視線が不快なら2人でいる時だけでいいから元に戻してくれないか?」
「え?そんなことだったんですか?」
たしかにさっき魔法をかけてから黒いままだった。
同じように首を振って魔法を解けば毛の色は真っ白に戻った。
「これでいいですか?」
「ありがとう」
この色が好きなのか、元に戻せば嬉しそうな表情を見せてくれる。
アルシェさんが自分の隣を叩いたためそちらに移動して座れば、褒めるように頭を撫でられる。
前世では褒められることはあってもこんな風に直接褒められる機会がなかったからぎこちなくなってしまう。
「頭撫でられるの嫌いなのか?」
「…慣れていないだけです」
「なら慣れるまでしようか」
「いやあの…」
拒否する間もなく撫でられるので大人しく受け入れることにする。
優しい手付きに眠気を誘われてしまい、思考が微睡んでいく。
しばらくすると満足したのか手が離れて行った。
「俺もお前に聞きたいことがあったんだけどいいか?」
改まって言われると緊張してしまう。
何を聞かれるんだろう。
思わず身構えてしまう。
「本当に俺のこと覚えていないのか?」
「…」
きっと前世のことだろう。
覚えていないわけがない。
寧ろ、忘れようとしても忘れられなかったほどだ。
前世で先輩の結婚の話を聞いてからずっと辛かったのだ。
「何のことでしょうか」
だからこの復讐を私怨だと言われても構わない。
「……いや、今のは忘れてくれ。悪い」
「分かりました」
先輩は私に覚えていて欲しかったのだろうか。
転生の特典に私を選んだ理由も分からないし、私を選ぶぐらいなら婚約者を選べよと何度も思ってしまう。
「どうかしたか?」
「いえ、大丈夫です」
使い魔と精神が微弱ながら共有されるのか、精神面の不安定さはお互い感じ取ることができるようだ。
変に読まれないように気を付けながら返事をする。
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