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悲しい過去

ーーガイン視点ーー


 真っ暗な部屋には、月明かりでさえ照らすことができない闇が満たされている。

 虫が食いかけた毛布は、独りで眠るには十分だ。けれど、眠りには幼いガイン独りでは入れなかった。


 父親には捨てられ、母親には面倒を見られず、ただ一人で生きた。愛を人一倍欲しがっていたガインには、腹の欲求よりも応えた。


 それでも、いつかと願って生き続けた。生きるためには強くいなければならなかった。そして強くあろうとしたら、仲間ができた。仲間はガインを認めた。ガインはそれが嬉しかったが、満たされることはなかった。


 強さを生かして悪いことをしていては欲しいものが手に入らなくなると思い、ガインはやがて国の兵士になった。体格にも恵まれたためか、強かったので称賛された。沢山褒められた。沢山注目された。けれど満たされることはなかった。


 もっともっと注目されたい。求めるものが欲しい。満たされない欲求は、強さを求めることで昇華していった。


 やがて、ガインは魔王の剣を偶然発見することができた。魔王は忌避される存在だったことは知っていたが、この際どうでもよかった。魔法は今はまだそれほど強力ではないが、今後ガインを脅かす可能性もある。魔物の魔法は馬鹿にできない。強くないガインはガインではない。その剣を振るい、魔法を扱う魔物を圧倒したが、満たされることはなかった。


 やがて強さを認められて地位を昇っていった。暮らし向きに面影は一切残らなかった。ガインはそれでも、満たされなかった。


 なぜ満たされないのか何度も何度も考えた。ガインの強さが足りないのか。魔王の力をもってしても、何が足りないのか。


 いや、足りているはずだ。おかしいのは他人だ。俺が副戦士長で止められているのも、英雄にされないのも、この国に危機がないからだ。戦士の数が多すぎるからだ。


 認められたい。


 認められたい。


 認められたい。


 認められたい。


 どこからその言葉が湧いてくるのだろう。もう止まってほしい。心の叫びを止ませたい。けれど鳴りやまないすすり泣きが、ガインを突き進ませた。

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