プロローグ2
プロローグ2です。
死んだほうが良かったのか、まだ心の中で悩む自分がいる。
しかしこれは仕方がないことなんだと、自分を捻じ曲げてみる。
太陽の光が点々と照らす薄暗い森の中。せっかく日の光が差しているにも関わらず、レイに届くのはごくわずかだ。
いいや、これでいいんだ。これがちょうどいい。
レイはおだやかな暗さに、目をつむって感触を楽しむ。しかし、いつまでもそうしている訳にはいかなかった。
これ以上考えても仕方がない。レイは再度、深くため息を吐いた。
目の前には、鋭い瞳を爛々と輝かせて、レイにじりと詰め寄り続ける人がいる。
正確には人間ではないそれは二本の足で歩き、手には不格好だが凶悪な木製の鈍器を握りしめて軽々と振り回している。
魔物はでっぷりと出っ張った腹を豪快に揺らしながら凄まじい速度でレイに突進してきていた。耳を塞ぎたくなるほどの奇声もセットだ。
肌は病的に見える紫に毒々しい斑点が浮き出て、自慢するように見せる口元は悪魔のような牙で歪んでいる。この魔物は確か――
「ゲェアァァァァァァァァァ!」
襲いくる魔物のおたけびが、断末魔へと変貌を遂げる。
思い出すのが面倒になったレイは黄色い線を魔物に突き刺した。
レイが放ったのは雷の魔法。
呪文も唱えず、杖も振らず、ただレイが念じれば言うことを聞いてくれた。
レイの懐も暖かくしてくれるし、レイの命も救ったし、なによりその威力は絶大だ。
電撃が体内を通過して地面に吸い込まれた途端、魔物は大げさに土ぼこりを舞い上げ倒れ伏した。もう二度と立ち上がることはないから、安心してレイはまた目を閉じることができる。
これでまた一つ、人間の平穏が保たれることになった。長い間、人々の悩みのタネになっていた障害が取り除かれた。それだけでよかった。
それ以外は何もいらない。
レイは生活できるだけの金がもらえればよかったが、このまま帰れば、英雄扱いされることは間違いないと踏んでいる。
本当は断りたかったが、泣きつかれても断れるほどレイは冷酷にはなれなかった。今までもずっとそうだった。そして、何も変わらなければこれからもそうだろう。
このまま死体を捨てて帰りたい。だが、それでは魔物を討伐した証拠を提出できないので、報酬がもらえない。ガリガリと滅茶苦茶に頭をかきむしり、魔物の体の一部に手を伸ばす。
乱暴だが、耳を根元までしっかり掴み、無理やりちぎる。肉を割く感触にレイは思わず口を歪ませる。だが、これ以外に方法がない。レイには刃物は扱えない。もう一度、肺から勢いよく息を吐きだした。
これで依頼は達成だ。もう少しここでくつろいでいたいが、帰ってふかふかのベッドに寝っ転がりたいし、温かいスープも飲みたい。なるべく面倒ごとは忘れたかった。
だが、どうしてこうなったのか、未だに不思議な部分も多い。
レイは過去を思い出しながら、少しだけ重い足取りを、レイが根城にしている国、ランタインへと向けた。
これでプロローグは終了です。お疲れ様です。
次から本編に入ります。