〜1.再会とこれから〜
勝又 昭彦 (15歳)
佐藤 優 (15歳)
昭彦は母の死をきっかけに小学校まで育った地元に1人戻り高校生活を送ることを決意する。
引っ越し初日幼馴染も優と再開することに!
2人の甘くて焦ったい恋のお話
〜〜〜小学6年生3月〜〜〜
小学校の卒業式が終わったその日僕は東京へ引っ越した。
父の仕事の都合で12年過ごした町から離れたのだ。
友達がいて最後まで泣いてくれる幼馴染もいた。しかしそこまで悲しくはなかった。その時はまだ実感していなかったのかもしれない。
〜〜〜中学3年生5月〜〜〜
そして中学校3年生のある日突然母が死んだ。それこそ実感はなかったが時間だけが過ぎていった。
僕は父が許せなかった。仕事仕事で母が死んでからも何もなかったかのように働いている。
父は昔からよく「女性は大切にしなさい」とよく言っていた。
そんな教育からか僕は紳士的と呼ばれるような性格になった。
しかし父は母が死んでも涙一つ見せず家に帰る回数も減っていった。
僕は家事もできず部屋はぐちゃぐちゃでご飯もろくに食べずに生活をしていた。
〜〜〜中学3年生8月〜〜〜
ある日父は女性を連れ帰ってきた。僕はそれが本当に許せなかった。何も考えず父を怒鳴りつけ家を出た。
帰ると女性の影はなく父が何事もなかったかのように言った。
「進路は決まったのか?」
「南高校へ行く」
僕は咄嗟にそんな言葉がでた。そこは僕が通っていた小学期の近くの高校だった。そんなつもりはなかったが向こうで1人で暮らす。そう頭の中では思っていたのかもしれない。
その後父は何も言わずにただ頷いた。
〜〜〜中学校3年生3月〜〜〜
僕は久しぶりの地元に帰ってきた。と言っても小学校のそばだと微妙な距離の知り合いに会うと思ったので2駅離れたマンションにした。
住宅街の間に詰め込まれた4回建てのマンションは綺麗でこそあったが隣の一軒家のベランダから届くほどの距離だった。
僕は2階だったので一軒家の家の中まで丸見えだった。
(住んでるのは高校生か・・・)
僕がそう思ったのは南高校の女子制服がかかっていたからだった。
(ここで1からやり直そう)
そう決心した。
とりあえず散歩にでも出よう。と荷解きを終えた僕はスマホの地図を片手に出かけた。
東京ほどではないが割と都会で程よい田舎懐かしい匂いがした
マンションに入ろうとした時聞き覚えのない可愛らしい声で
「あき?」
と呼ぶ声がした。僕の名前は昭彦であきというあだ名があったのは小学生までだったのでこんなところで小学校の同級生に遭ってしまったかと思ったのもつかの間。僕に抱きついてくる女子がいた。
「だれ!?」
と驚いた表情をしていると
「私だよ?忘れたの?優だよ」
「ゆ…う…?」
僕は一瞬ピンと来なかったが改めて顔をのぞいて驚いた。
昔こっちに住んでいた時隣に住んでいて毎日のように遊び最後は泣いてお別れをしてくれた幼馴染だった。
一瞬誰かわからないくらい見違えるほど美人になっていた。
「久しぶり、何してるの、何でここにいるの?」
と質問攻めにあったが全部丁寧に答えた。
話しているうちにわかったことがある。
隣に住んでいたのは優だった。あのベランダがほとんどくっついているほどの家に住んでいると言うのだった。
「ということは南高?」
とボソッと口から言葉が溢れてしまった。
「えっ何で知ってるの?」
と可愛い顔を近づけてきた。
僕は距離をとりながら
「風の噂で聞いた…」と誤魔化した。
その後も色々話したが母が亡くなったことは言えなかった。
この楽しい雰囲気を壊したくないと思ったし、母と仲の良かった優がしったら悲しむから時が来たらと思った言おうと思っていたからだ。
そんな濃い1日を過ごした次の日の朝玄関のチャイムがなった。僕は中学の時から基本チャイムがなってもどうせ宅配便とか勧誘だと思っているからだ。
そんなことを考えていると立て続けに3回もチャイムがなった。仕方なく出てみるとそこには誰もいなかった。
(何だ悪戯か)
と思いもう一度ベッドに潜ると今度はベランダから音がした。
驚いてカーテンを開けるとそこには優がいた。
「なんで出てくれないの!」
とそこには少しお怒りの優がいた。
「寝てたから…」
僕はそっけなく返した。
「とりあえず入れてよ」
そう言われて僕は鍵を開けた。
「相変わらず汚い部屋だね」
と懐かしそうに言った。
「そりゃー昨日引っ越してきたばっかだからな」
そう返すと優は何も言わずにダンボールを開け始めた。
「あきは変わらないね。」
突然そういい意地悪そうな笑みを浮かべた。
僕は成績は普通だし運動はそこそこできるけどとびきりというわけではない。家事はすべてできないしやる気もない。
「優も変わらないな」
運動も勉強もできて容姿端麗家事も得意そうな彼女を見て僕はそう言った。
「もう夕方かそろそろご飯にしよう」
と同棲してるのかと思わせるほど突然にそしてなんの違和感もなく優が言い台所へ向かった。
「料理なんてできるのか?あの泣き虫の優が!?」
と少しからかいながら言った。
「お母さんから料理は習ったし、家事だって別にできるもんもう昔とは違うの!泣かないし」
と耳を赤くして恥ずかしそうに言った。
僕はそんな優がとても愛おしく見えた。
「ごちそうさま!本当に美味しかった!」
僕はそう言うと優は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「また何かあったら何でも言ってね。お母さんもお父さんもあきに会いたがってるから!」
そうは言われたが流石に悪いと思った僕は返事だけしてあまり頼らない方がいいなと思っていた。
しかし、次の日もその次の日も優はうちにきた。
毎日家事をしてくれて料理を作ってくれた。
「何でそこまでしてくれるんだ?」
と聞くとなぜか優は下を向いて恥ずかしそうに
「秘密」
何度聞いてもその答えしか返ってこなかった。
(かわいい)
とは思ったが幼馴染を好きになるのなんて漫画や映画の話だ
この時はそう思っていた。
そして高校生活が始まったら優も友達と遊び彼氏ができて僕とは関わらないだろうそう思っていた。
そんなこんなの春休みも終わりを迎えようとしていた。