第5話 六角堂の怪奇譚4
沙也加は師匠の公方良賢に電話する。
「先生、お久しぶりです、私では手に負えない件がありましてご助力お願いできませんか。」
「手に負えないなら手を引きなさい。」
「しかし、依頼者に泣きつかれまして、お願いできませんか。」
「まあ、久しぶりにあなたの顔を見るのもよいでしょう。
「ありがとうございます。」
沙也加はたすくに
「明日は先生が来られるから、失礼の無いようにしてね。」
と言い含める。
翌日、老僧が事務所にやってくる。
沙也加は
「先生、お久しぶりです。」
しかし彼は、たすくを見ると
「沙也加がお世話になっております、公方良賢と申します。」
「中野たすくです、よろしくお願いいたします。」
「沙也加、いい人を見つけたね。」
「彼はバイトです、そんな関係では。」
「まあ、どちらにしろ離すんじゃないよ。これで漁師たちを海に叩きこむ恐れも無くなるねえ。」
「やめてください、先生。」
話の中心になっているたすくには訳がわからなかった。
「公方さん、僕になにかあるのですか。」
「まあ、今は知る必要のないことだよ。」
たすくは沙也加を見るが彼女は目をそらす。
たすくは、これ以上触れないことにした。
「さっそく片づけることにするかね。」
「休まなくても良いにですか。」
「今、厄介な件にかかわっていてね、あまり時間がないんだよ。」
沙也加は黙り込む。
彼女は良賢に時間が残されていないことを知っている。
沙也加は市役所に連絡を入れて、北条公園へ向かう
公園には、職員が5人来ている。
良賢は、職員とたすくに離れて見ているように指示する。
そして、沙也加がサポートにつく。
良賢は、錫杖を左手に持ち、右手には数珠を持って池の縁に立つ。