第105話 水面の上2
沙也加とたすくは、近くで畑仕事をしている人などに声をかけていく。
みんな、一様に淵には近づかない方がいいと話すが着物の女幽霊の話になると黙り込んでしまう。
子供連れの老婆に声をかけた時である、老婆も他の人たちと同じ反応をしたが、子供が着物の女幽霊について話す
「見ると淵の主が呼んでいるんだって、水の中に引きずり込むために出てくるんだよ。」
「たけ、やめー」
老婆が子供を叱る
「着物の女幽霊が水の中に人を引きずり込むのですか。」
たすくが聞く
「わしは何も知らん。」
老婆は言う。
沙也加とたすくは村長の所へ行くことにする。
村長宅を訪れると快く応対してくれる
「私は探偵の古馬沙也加と申します、鎮めが淵について調べているのです、お話よろしいでしょうか。」
「淵について何を知りたいのかね。」
「すべて話してもらえると助かります。」
「茶田川は暴れ川で昔、鎮めが淵の主に生贄を捧げていた、そのため淵に近づくと引きずり込まれるのでみんな近寄らんよ。」
「それだけですか。」
「そうだが。」
「着物の女幽霊の話はどうです。」
「そんな話は知らん。」
「淵の主が呼んで引きずり込まれるからですか。」
「どこで聞いた。」
「いろいろ聞いて回っています。」
「そうか、着物の女幽霊は淵の主の使いじゃ、あれを見ると次の日には水死体になっておる。」
「ありがとうございます。」
「これからどうするつもりだ。」
「鎮めが淵へ行きます。」
「やめておけ。」
「でも、レジャー客はいいんですか。」
「あいつらは話を聞かん。」
「そうですか。」
「毎年、死人が出ているのにやってくる。」
「私は龍神に仕える巫女ですから何とかできるかもしれませんよ。」
「龍神様の巫女ですか、信じられん。」
「信じなくて結構です。」
「急に言われてもな。」
「心配なら付いて来ますか。」
「淵には近づけん。」
「なら待っていてください。」
沙也加とたすくは村長の家を出て鎮めが淵へ向かう。