第1話 たすくのアルバイト
明城大学1年の中野たすくは、一風変わったアルバイトをしている。
探偵の助手である、それも来る依頼は、浮気調査や人探しではなく、おかしなものばかりである。
その探偵事務所は、東海市の朝宮駅の近くにあり、探偵の古馬沙也加は、まだ20歳代半ばである。
今日は不動産業者の案内でアパートの1室に案内される、業者は説明する
「この部屋の入居者はみんな直ぐ出てってしまうのです。」
たすくは聞く
「事故物件ていうのですか?」
「違いますよ、そのような部屋ではありません。」
業者は語気を強めて言う。
沙也加は、たすくと業者に部屋の隅を指さしながら聞く
「あなたたちあれ見える。」
たすくには何も見えない、業者も同じようだ。
「見えないの、じゃあ消しましょう。」
沙也加は言うとミネラルウォーターのペットボトルから水を手のひらに出す。
しかし、水は流れ落ちずに手のひらの上で水の玉になる。
たすくは、また例の手品もどきだと思う。
そして、水の玉は薄い刃に形を変えると部屋の隅へ飛んでいき壁に当たる前に霧散する。
沙也加は
「消したわ。」
と独り言を言う。
さらにカバンの中から紙を取り出し、部屋に置く、紙には丸い円に梵字のような模様が描かれている。
そして、彼女は業者に
「そこのコンセントカバーを開けて」
と指示する、業者がドライバーでこじてカバーを外すと盗聴器が仕掛けられている。
業者は
「これが原因ですか?」
「これはおまけよ、原因は消したから大丈夫よ。」
たすくのアルバイトは、大体こんな感じである、はっきり言ってオカルトじみていた。
沙也加は、霊などを見ることが出来る。
彼女は、部屋に入った時、部屋の隅に霊が黒く集まって混ざり合った霊団を見つける。
一応、業者とたすくに確かめる
「あなたたちあれ見える。」
返事はない、彼女は群体を消し去ることにする。
ペットボトルから水を右手の平に出しコントロールする。
彼女は水の刃を作り出すと群体目掛けて刃を飛ばし切りつける。
群体は水の刃と共に霧散する。
これで仕事は終わりのはずだが、沙也加は何か引っかかる感じがする。
そこで魔法陣を描いた紙を取り出し部屋を探る。
何も感知できなかったが、コンセントがなんとなく気になる。
「そこのコンセントカバーを開けて」
と業者に言う、そしてそこからたまたま盗聴器が出てきた。
人は見えないものより見える物の方が反応はいい
「先生の力は素晴らしい、ありがとうございます。」
沙也加は、不動産業者に感謝されて仕事を終える。