王都到着
馬車は初老の男が御者として運転をしている。俺とレミは馬車の中で座っている訳だが、どうにも退屈なので色々と聞くことにした。
「なぁレミは王都に何しに行くんだ?」
「元々私は王都出身だから家に帰るだけよ。クオンは?」
「俺は探し物をしてるんだ。金彩ってお酒なんだけど、知ってる?」
「お酒? うーん、ごめんなさい。聞いたことあるような気もするけど私お酒は詳しくないの」
「そうか」
それにしても、と俺は思う。
金色の艶やかな長髪。鼻筋が通っていて、目も大きい整った顔立ち。出るとこは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる綺麗なスタイル。
レミは、とても美しかった。
「レミって可愛いな」
だから、俺は素直にそう言った。父さんが言うように、大陸にはびっくりするほど可愛い人がいるみたいだ。最初に話した女の子がこんなに可愛いとは……。なんかお使いとかどうでもよくなってきたな。
すると、レミは最初ぽかんとしていたが、言葉を理解したのかみるみるうちに茹でダコのように顔が赤くなっていき、
「な、何を言うの! もう、からかって!」
そう言って腕をぶんぶん振り回し始めた。
うーむ、そんな姿も可愛らしい。
「いやいや本当だよ。俺がいた故郷じゃこんなに可愛い子はいなかった。田舎から出てきて良かったよ」
「ま、まだ言う! ずいぶん手慣れているのね。クオンは何歳なのかしら」
「俺? 15だよ」
「わ、私と同い年。田舎は随分と女性の扱いが発展しているのね……」
「レミ、同い年だったのか! そりゃいい。俺と結婚してくれないか?」
俺が軽い感じでそういうと、レミは目を大きく見開いた。今度は恥ずかしさというより驚きといった感じだ。
でも、すぐにその目は諦めのようなものへと変わってしまった。
「……次言ったら怒るわよ」
「はは、わかったよ。もう言わない。お? もうすぐ着くみたいだな」
馬車から外を覗くと、大きな門と塀が見えた。あの奥に王都があるのだろう。
「クオンは王都への通行許可証は持ってるの?」
「通行許可? なんだそれ。持ってないけど」
「ええ!? じゃあ一人でどうやって王都に行こうとしてたのよ」
「とりあえず行けば入れるかなって」
「あなたいったいどれだけ田舎から出てきたのよ……まぁ私たちがいるから入れるけど」
そうか王都に入るには許可証が必要だったのか。レミ達と会ってなかったら入れなかったな。
やっぱり良いことはするもんだ!
そんなこんなで俺たちは門をくぐり、王都の中へと入ることに成功した。
俺は馬車から降りて、周りを見渡す。
「すげえ……!」
そうとしか言いようがなかった。
綺麗に区画通り建てられた家。塔のように高いものもある。
それに見渡す限りの人、人、人。広場のような場所には多くの露店が並んでいて道を埋め尽くすように人が行き交っている。
「これが国の中心、王都! 都会ってやつか!」
「長旅お疲れ様でした、レミ様、クオン殿」
爺やがそう言って馬から降りる。
レミがずっと爺やと呼んでいたから俺もうつってしまった。
「ここまでありがとう、爺や、レミ!」
「いいえ、お礼を言うのは私たちの方よ! いずれこの恩は返させていただきます」
「いいっていいって。旅は道連れって言うしな。じゃ、俺は酒の情報集めてくるから、ここで解散ということで」
「ええ、王都にいればまた会う機会もあるでしょう。また会いましょう、クオン」
「おう、じゃあなー!」
というわけで、俺はレミ達と別れて王都を散策することにした。とりあえずお酒に関する情報を集めないと。そう思って歩いていると、さっきの露店が集まる広場とは別に、大広間があって、何やら人だかりができていた。途轍もない人の数だ。王様でも出てくるのかってレベルだ。
ジャンプして人だかりの先頭を見てみると、どうやら甲冑を着た偉そうな男が何か描かれた看板を持っているようだ。その周りにも同じく甲冑をきた男たちがいる。あの甲冑、『騎士』ってやつか?
「王都の民よ。朗報だ! いや、これはもはや朗報という単純な言葉では表せない! 我らを長年苦しめている魔王軍。奴らによって、我々は大事な家族や友人を失ってきた……!」
なんか話し始めたぞ。
朗報? いいことがあったのか?
「圧倒的な力を誇る魔王軍に敗北を続けてきた我らだが、遂に! 奴らに大きな風穴をあけることに成功した! これを見よ!」
そう言って、騎士の一人が持っていた看板を高く掲げる。そこに描かれているのは、魔族の絵だった。なんかどこかで見たような気がするが、気のせいだろう。
「この絵は魔王軍幹部の一人、ジャイロだ! 昨日、このジャイロの死体が港町に上がっている事が判明した!」
「「「おおお!?」」」
魔王軍? ってなんだろう……あ、待てよ。なんかじっちゃんがそれとなく言ってたな。
確か人間を悪とした教えを絶対としている宗教、【魔王教】を掲げているのが魔王軍だったか。
そうか、その魔王軍の幹部が死んだのか。そりゃ人間にとってはめでたいな。ん? ジャイロ? どっかで聞いたような……気のせいか。
「そして、そのジャイロを討った誠の勇者こそ、ここにいる、タロー殿である!」
勇者? 何、そんなに強い奴がいるのか!
どんな奴だ?
そう思ってジャンプして見てみると、黒髪で中肉中背のあんまり冴えない感じの男だが、俺と同じくらいの年齢に見える。
あの年で魔王軍の幹部をやっつけるとは、やっぱり都会には化け物がいるなぁ……!!
「皆、勇者タローに拍手を!!」
歓声と共に、皆が盛大に拍手を送る。
俺もタローに向かって拍手を送る。
いやー、勇者かぁ、すごいな。俺も負けてられないぜ。
そう心を新たにした俺だった。
勇者タロー(16):浜辺に死体として打ちあがっていた四天王ジャイロを偶然見つける。
作者のやる気は感想とポイントで上がります!
是非よろしくお願いします!