二度目
俺は今までのワクワクが全て打ち砕かれたような気がして、呆然としていた。
「ふむ。その様子じゃと外海に強い憧れでもあったのかの」
「うん……あったね。憧れ……はは、外海には化け物みたいなやつがいるって、化け物は俺じゃねーか……」
なんていう馬鹿馬鹿しさ。
だから父さんは俺の「化け物はいるのか」っていう問いにあやふやな答えしか返さなかったんだな。
あのくそ親父め……。
「え……えぇ? クオンがニルバーナ島出身って冗談じゃなかったの?」
「びっくり。うけてないのにニルバーナ島のネタをごり押しするクオンのメンタルを尊敬してたのに」
いやルナフレアの感想はただの悪口だろ。
「何かすまぬことをしたのう。まあ気にするな。そもそもお主の目的は酒じゃろ。持っていくといい」
「え? いいのか? これ貢ぎ物なんだろ」
「我は酒は飲まぬ。いつのまにか酒が献上されるようになったがの。珍しきニルバーナに会えたのだ、それくらいはやる」
意外と水龍様っていい人……いい龍なんだな。
ならとりあえずこの酒はもらって行くとしよう。
「じゃ、ありがたくもらってくよ」
「うむ。気をつけて帰る……必要もないかお主なら」
水龍はそう言った。
なんだか投げやりな言い方だな。
まぁいいや、気が抜けた。さっさと帰ろう。
「よし、用は終わったし帰ろう」
俺がリリアたちに話しかけて帰ろうとしたその時、俺は気配を感じて辺りを見渡した。
「なんじゃお主は!?」
水龍の声がして、そちらを向くと水龍の背中に人が立っていた。
あれは……タローじゃねえか。ばっちり生きてるな。
そう、その人物は異世界転生者のタローだった。奴はそのまま水龍の身体を歩き、水龍の頭上に登る。
「お主は……その魔力、なるほど……お主こそ異世界からやってきたものだったのか」
「良く知ってるじゃないか。そうだこの俺が異世界転生者のタロー様だ」
「転生者は何故毎回不遜な態度なのか……まあよい、して我に何用じゃ」
「聞く必要はねえよ。今からお前は俺の操り人形だ」
タローが水龍に向かって手のひらをかざすと、何やらあたりに魔力が漂い始めた。あれは、洗脳系の魔法か。器用な奴だな。俺はそういう類の魔法は苦手だ。
「愚かな。この我にそのような魔法が通じるわけが――なっ?」
水龍の様子がおかしい。
身体を思ったように動かせないようだ。
「愚かなのはてめえだ。こいつが見えるかぁ?」
タローは水龍が見えるよう移動して、自分の腕を見せびらかした。彼の手首には銀の腕輪がつけられている。
「それは……『覚醒器』か!」
「そうだ。魔力を増幅させる禁断の宝。魔王をぶっ飛ばすために使う予定だったが俺はそこのクソ野郎を倒すために使うことにした。さぁ俺のために働いてもらうぜ水龍様よ」
そう言ってタローは俺の方を見て笑った。
懲りない奴だ……俺はちょっとばかしお前にワクワクしてたってのによ。お灸を据えてやろう。
俺は固く拳を握りこんだ。
増幅器はチート




