理から外れし者
森の中を適当に歩いていると驚いたことに、すぐに方向感覚がなくなった。自分が今どこを歩いているのかよくわからないのだ。
俺たちはルナフレアの先導に付いて行ってるわけだが、こんな状況で彼女は道がわかってるのだろうか。
「なあルナフレア、お前今どこ歩いてるのかわかってるのか?」
「大丈夫。元々迷って辿り着いた場所だから、迷ってないと辿り着かない」
「迷ってるんじゃねーか!」
おいおいこんなんで龍のもとに行けるのか?
「そういえばクオンは島から来たと言っていたけど、どうやってきたの?」
リリアは歩きながらそう聞いてきた。
「ああ、外海のことか。それならいかだを作って渡ったよ」
「え? い、いかだ? いかだってあの木で作るあれ?」
「そうだけど?」
なんか問題あったか?
「い、いや流石にクオンといえどそれは無理でしょ。外海はA級以上の魔物がうようよしてるんだよ? 普通は武装された船で渡るものでしょう」
「魔物? いや遭わなかったし普通に渡れたけど……」
「前なら私も冗談だって笑ってたでしょうけど、今は冗談とも思えないから不思議ね」
リリアはそんな風にして笑った。
一つも冗談は言ってないんだけど、いつになったら俺の話は本当だと信じてもらえるんだろうか。
そんなことを話しながら俺たちは1時間くらい歩いていた。すると、俺たちは少し開けた場所に出た。
そこには小さな祠がある。
「あ、これきっとお母様が言ってた大和酒を捧げてる祠だわ」
リリアがそう言う。
「ほら、ちゃんと辿り着いた。えへん」
ルナフレアは誇らしげにそう言ったが、絶対偶然だ。
俺は祠の扉を開けてみた。するとそこには大和酒が置いてある。持ってみると、中身があることが確認できる。
「なあ、これ盗んじゃったほうが早くないか?」
「え? だ、だめだよ。そんなことをしたら水龍様が怒って殺されちゃうよ」
「いやでも水龍様とかこんな森の中で見つかりそうもないし、これこっそり持って行ってもばれねーだろ」
俺はそう言って祠の中にある大和酒を持った。
そのままそれをもって振り返るとそこには巨大な龍がいた。
「は?」
俺は思わず酒をそのまま落としそうになってしまったが頑張ってそれは踏みとどまった。
周りを見るとリリアとルナフレアは腰を抜かしていた。どうやら声も出せずにその場にへたり込んでしまったらしい。
青い身体をもち、俺たちをにらんでいる。うろこの一枚一枚がでかい……これが龍。迫力だけで食べられた気分だ。
「あ、あのー、あなたが噂の水龍様?」
俺はそう尋ねる。
すると水龍は、その大きな口をゆっくりと開いた。
「ああ、そうじゃな。我が水龍アクエリオンじゃ。こんなところになんのようじゃ、『理から外れし者』よ」
龍は確かに俺をみてそう言った。
ああ、なんかまたわけのわからないことを言いだしたな……。
俺は面倒なことになる予感がして思わずため息をついたのだった。
次回ニルバーナ島について語られます




