モテモテの異世界転生
Aクラスの連中を倒した事でクラスメイトからは信頼を勝ち取ることができた。そこで俺は早速彼らに金彩について知らないかを尋ねてみた。
するとクラスには父が大和酒コレクターだというリルートという男がいる事を知る。リルートに早速話を聞いてみると、意外な事実を知ることになる。
「父さんは大和酒コレクターなんだ。ついこの前金彩の競りがあったんだけど、今年の金彩は手に入れられなかったって嘆いていたよ」
「そんなにレアなのか?」
「ああ。だけど持ってる人なら知ってる。レオンハートさん、君のお父さんは持ってるはずだよ」
レオンハート、つまりはリリアの家? ええ?
俺はリリアの方を向く。すると彼女は全く知らないといった様子だ。
「リリアの親って酒好きだったのか?」俺はリリアに尋ねる。
「いや、別にそんな好きじゃないと思うけど……」
じゃあなんで買ったんだ。
俺が考えているとリルートがこう言った。
「趣味ではなくあれだけの高級酒を買ったっていうことは、何か盛大なお祝い事でもあるんじゃないかな」
そう言われたリリアはハッとして、何かを考え込む。
そのあと彼女は気分が悪くなったらしく、教室から出て行ってしまった。
どうしたんだろう。
俺は彼女を追いかけた。リリアは外の演習場にいた。
「おい、どうしたんだリリア」
「クオン……実は、私のお父様がお酒を集めた理由わかったの」
「なんなんだ?」
「結婚式よ」
結婚式?
「誰の?」
「……私の」
「は?」
俺は思わず声を出してしまった。
意味がわからない。
「リリアの? どういうことだ?」
「どういうことも何もそういうことよ。私が結婚するの」
「王都だと15で結婚するのが普通なのか? 早いな……ていうかリリア恋人いたのかよ! そいつ羨ましいな」
「こ、恋人なんていないわよ! それに普通じゃない。お父様は焦っているんだわ」
「恋人がいないのに結婚?」
「政略結婚よ。私もこう見えて辺境伯の娘だからね。最近有力な相手とやらを見つけたらしくて結婚させられることになったのよ」
「おいおい、リリアはそんな無理やり結婚させられていいのかよ!」
「いいわけないわ! でも私、魔力も才能もないし、家に貢献するには良い相手と結婚するしかないってお父様に言われて……今回は相手の条件がいいからお父様逃すまいと焦ってるの」
リリアは悔しそうにそう言った。
「いやいや何言ってんだよリリア。お前はもう魔力があることがわかったし、魔法だって使えるようになっただろ? じゃあ普通にその力を使って家の貢献とやらをすればいいんじゃねーの?」
「あ……」
リリアは気付いていなかったようだ。ずいぶんと長い間自分に魔力がないと言われ続けたせいで、考えることもできなくなっていたのだろう。
「つまり、リリアが結婚する必要はねえってことだよ」
「で、でもお父様はそんなこと許してくれないと思うんだけど」
「だろうな。ふっふっふ、だからさ部外者の俺がその結婚ぶち壊しちまえばいいんだよ!」
「ええ!?」
リリアは驚く。
俺は笑みを浮かべながら続ける。
「リリアの結婚相手とやらをぶっ飛ばす。政略結婚ってことはどうせ相手もこの学校のとんでも魔法理論を使ってる貴族だろ? それなら俺でも倒せるさ。貴族が庶民の俺に負けたりしたら面目丸つぶれだ。結婚もなくなる。そしたらどさくさにまぎれて俺は酒をゲットする。完璧だろ!!」
「確かにそうかもしれないわ……けど一つ問題がある。相手はただの貴族じゃないの。『特別貴族』よ」
「特別貴族? なんだそれ」
「代々続く貴族じゃなく、特別な成果や功績を出したものに与えられる貴族の称号よ」
「へえ。その結婚相手は何をしたんだ?」
「彼は――『異世界転生者』。魔王を唯一倒せるといわれる、女神に選ばれし男よ」
異世界転生者? また俺の知らない言葉が出てきたな。
「なんだか随分と強そうだな」
「強いなんてもんじゃないわ。異世界転生者は『世界を統べるもの』といわれてる。つまりは反則級の力を持っているの」
「そ、それは強そうだな……。で、でもそういうのってだいたい嘘だったりするんじゃないのか?」
「それはないわ。つい最近彼が魔王軍幹部の一人を打倒したと聞いてるもの」
魔王軍幹部を倒したって、俺王都の広場で聴いたじゃん!
ってことは異世界転生者って、あの時の奴だ。
「勇者タローか!」
「そうよ。実は私は本妻じゃないの。彼の本妻はこの国の王女よ。私は一人の妾に過ぎないわ」
「め、妾ってまじか」
「それでも名誉なことなのよ。妾だけですでに四人いるみたいだけどね」
な、なんて羨ましい、じゃなくてとんでもねえ奴なんだ。
お姫様だけじゃ飽き足らず、リリアまでとは……俺なら妾なんて区別しないで全員本妻にするのに。
「で、でもそもそも魔王軍幹部を倒したってのも嘘だったりするんじゃないのか」
「実は私も最初は噂を疑って、事件があった港町までお父様に黙って出かけてたのよ。その帰り道に私はクオンと会ったのよ」
「そういうことだったのか。そうか、勇者か……確かにそれは強そうだな……」
「そう。だから無理なの。ごめんなさい、助けてくれようとしてるのに……。私のことは気にしないで。お酒のことはお父様に言ってみるわ。私の命の恩人だって言えば譲ってくれるかもしれないもの」
リリアは精一杯笑顔を作ってそう言った。
勇者なんてそれこそじっちゃんが言っていた化け物のような強さを持つ一人だろう。
絶対に勝てない。そんなことはわかりきっている。俺の目標は酒だ。こうなってしまえば勇者を倒すのではなく、どうにかして酒をこっそり盗む方法へと変更したほうがいいだろう。それかリリアの言ったように、恩を返してもらうのを期待するか。
そのほうが効率的だ……だけど、
「気に入らね―な」
俺はそう言った。
「え?」
「思い出したんだよ。俺が都会に来たかった理由。酒は島を出るためのただの手段だ。いいかリリア、俺はなあ! 女の子にモテモテになりたくて都会に来たんだよ!」
「へっ?」
「ごちゃごちゃ考えてるのは俺の性に合わん! 俺よりモテてるやつはどうも気に入らねえ! 決めた! 俺は勇者をぶっ飛ばす!」
リリアがぽかんとしている中、俺はこぶしを天に突き上げてそう叫んだ。
クオンの父「なんだかクオンが俺と同じ道を歩いている気が……」




