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少年は外に出たい

タイトル模索中

 

  外に出たい。ああ外に出たい。


「外に出たいよーーー!!!」


 俺は思わずそう叫んだ。


「遂に頭おかしくなったのか? クオン、ここは外だぞ」


 俺に対面しているガタイのいいおじさん。マサルさんは棒切れを構えたままそう言った。


「ちげーよ! 俺が言ってる外って言うのは家の中と外の事じゃなくて、外海のこと!」


 そう、外海。俺ことクオンが住んでいる【ニルバーナ島】は周りが海に囲まれた小さな島だ。そしてこの島では2000人ほどが暮らしている。


「こんな小さな島じゃなくてでっかい都会に行きたいんだよ!」

「都会ぃ? この島の何が不満なんだよ。飯は美味いし、空気は綺麗だし、人も優しいし良いことだらけじゃないか」

「だからって毎日動物狩って飯食って、修行してる日々は飽きたんだよ! 都会行って可愛い女の子にモテモテになりたいんだーー!!」

「ったくクオンは弱いくせに飽きるのは早いんだから」

「なんだとーー!!」


 俺は棒切れに魔力を込める。

【火属性付与】【武器強化最大】【身体強化最大】

 俺は一気に踏み込んでマサルさんの胴を叩き斬ろうとした。


「一陣の舞!! おりゃああああ!!」

「隙がありすぎだ」

「うわあああ!?」


 だがあっさりと避けられてしまい、俺は足元を棒で引っ掛けられて転がされてしまう。


「それまでじゃな」


 少し遠目から見ていた爺さんがそう言った。

 この人は『じっちゃん』。村長だがみんなはそう呼んでいる。


「くそー! また負けた!」

「ほっほっほ。クオン、お主はまだまだ力が足りん。外海には化け物のような奴がうようよおるんじゃ。お主が行っても早死にするだけじゃぞ」

「また出直せクオン」

「ちきしょーー!!!」


 俺は走り出していた。

 また負けた。何回やっても大人たちには勝てない。俺が弱いからだ。じっちゃんに教わっている【じっちゃん剣術】も基礎は一通りマスターしたのに、まだ勝てない。やっぱり俺には才能がないのか?


 山を駆けていく俺。身体強化最大をかけているので、頂上まではすぐだ。とはいえ、『動物』が邪魔をしてくるけど。


「グルルルル」


 ほら出た。熊だ。逆立った黒い毛。血走った目。口からはみ出ている二本の牙。なかなか硬いんだよなあれが。正式名称はなんだったか、【デビルベア】だったかな。じっちゃんが前にそんなことを言っていた。

 とはいえこいつは全長5メートル“程度”しかないから体格も小さい方だし弱いな。


「悪いけど、邪魔だよ」

「グルォッ!?」


 俺は【身体強化】を解除して、熊を殴った。それによって一発で熊は遠くへ吹き飛ぶ。まぁ身体強化を解除したから死にはしないだろう。無益な殺生はしないのだ。


 俺はそのまま走って頂上にたどり着いた。頂上はかなり大きな原っぱになっている。そんなに高くない山だから村の景色が見やすい程度だけれど、俺はここから見る景色が好きだ。果てのない海が見えるから。


「外はどんな街があるんだろう」


 俺がぽけーっとしていると、空から翼をはためかせる音が聞こえてきた。鳥かと思って上を見てみると、人だった。いや、正確には人じゃない。


 角を生やした種族、魔族だ。魔族はこの島にも少ないけどいる。もちろん仲良く暮らしているが、こいつから感じる気配は、邪悪だった。


「おっ? こんな山に人間がいるとはな」

「なんだお前」

「俺を知らないのか? さすが島だな。俺は魔王軍四天王の一人、ジャイロ様だ」


 まおーしていのう? なんだって?

 けど外界の人と会うなんてかなり珍しい!


「なぁ! 外海から飛んできたのか? その翼って生まれた時から生えてるのか? 外には化け物みたいに強い奴がいるって本当か?」


 俺は矢継ぎ早に魔族にそう質問した。

 質問されたことに驚いたのか、魔族は一瞬困惑していた。


「お前、魔族を知らんのか? それとも死にたいのか?」

「は? なにが?」

「ま、所詮は田舎の人間か。こんな所に探し物があるとも思えんが、俺様は寛大だ。許してやる」

「よくわからんけど、そのジャイロ様がここに何の用だよ」

「2日前、探し物をさせるためにこの島にS級の魔物を放ったんだが帰ってこなくてね。やられるわけがないから、おそらく何か事故でもあったんだろうとは思い、一応俺様が確認しに来たって事さ」


 S級ってなんだ?

 魔物なんていたら流石に気づくはずだよな。じっちゃんが魔物はめちゃめちゃ強いってよく言ってるし。


「魔物ってどんなのだよ」

「ボルケーノベアだ。火山地域にしかいない赤い毛が特徴の熊型の魔物さ」

「赤い毛……」


 そういえば2日前にそんな感じの熊に出会ったような。


「ちょっと待ってろ!」

「あ?」


 俺は少し山を降りて、熊を倒した場所にやってきた。案の定デビルベアに食い散らかされていたが、シッシッとハイエナたちを追い払って、頭だけ残っていたのでそれを持って元の場所に戻る。


「赤い熊ってこいつか? 見たことないから生態系壊しそうで殺しちまったけど」


 俺は頭をジャイロの近くに放り投げた。

 奴はそれを見て、口をあんぐりと開ける。おもしろい顔だな。


「ば、馬鹿な。死んでいる? そ、それより餓鬼、お前殺したと言ったか?」

「ああ、俺が殺した。でもそいつは魔物じゃないだろ? すっげー弱かったし。熊だったらそこらにいる【デビルベア】って熊の方が強いぞ」

「デ、デデデデビルベア!? それって神話級の魔物じゃねえか。嘘をつくな!」

「うーん、本当なんだけどな。神話級? デビルベアならそこらじゅうにいるぞ?」

「く、くそ、馬鹿にしやがって。子供なら俺が殺さないとでも思ったのか?」


 ジャイロは、手のひらに魔力を集中させ始めた。魔法を打つつもりか。何をするのか知らんけど、練度が低いな。魔力の密度が低い。


「お前程度に使うのは勿体無いが、見せてやる。これが俺の最強魔法【ダークスパイラル】だ。あの世で後悔するんだな」


 そう言って、奴は手のひらに集まりつつある暗黒の魔力を見せつけてきた。

 あれが最強?


「何言ってんだお前。それじゃせいぜいうさぎをビックリさせるくらいしか出来ねーよ」

「意味のわからん事を……死ね!」


 奴の手のひらから放たれた暗黒が渦のようになって俺に襲ってきた。

 俺は右手を前に突き出す。これなら最大はいらないな。

【身体強化中】

 無詠唱で魔法を唱えて、俺はやってきた渦を片手で消し去った。奴はそれを見ると口をパクパクさせている。忙しい奴だな。


「ば、ばばばば馬鹿な。か、片、片手ぇ!?」

「よくわかんねーけど、闇魔法を使うならこうだ」


 俺は手のひらに魔力を集中させて闇属性の魔法を発動させた。これは『ダークネスブロウ』と呼ばれる渦回転の闇魔法だ。島の人間なら誰でも使える。


「お前っそれ、最高階位の……ぎゃあああああ!!!」


 俺の魔法を食らった奴は、消え去ってしまった。やべ、今ので死んじまうのか、あんまり殺したくなかったんだけど……悪そうな奴だったしいいか。

 つーかこいつなんだったんだ? 四低脳とか言ってたけどアホの自己紹介かな?


 よくわからないまま、俺は下山した。



???「奴は四天王の中でも最弱……」


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