表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある夏の思い出

作者: 佐藤 遥

初めて文を書きましたので、大変冗長な文章になっております。

お目汚しかとは思いますが、お読みいただけると嬉しいです。

それは、ある暑い夏の休日。

私は病院の大部屋にいた。



あれは昨日の晩のこと。

私はいつものように、仕事帰りにスーパーに寄った。

いつものようにいつものスーパーで、いつものように割引のお惣菜を買って。


…いつもと同じことをしていたはずなのに、食あたりを起こして病院にお世話になる羽目になってしまった。


何が悪かったかといえば、食べきれなかったお惣菜を今朝朝食として食べたことだろうか。

仕事で疲れ果てていた私は、せっかく買った夕食を食べきることができず、常温で一晩放置していた。

目が覚めてから失敗したと気づいたが、まぁ一晩だし大丈夫だろうとも思ってしまった。

少しもったいないという気持ちもあったのだが、こうなってしまうと後悔しかない。


そんな話を、同室のおばあさんにしていた。


おばあさんは、私の馬鹿らしい失敗談を、馬鹿にするでもなく聴いてくれた。

そしてそのまま、おばあさんの話を聞くことになった。


といっても、深刻な病気などではなく。

畑仕事中に転んでしまい、頭を打ってしまったそうだ。

たんこぶこそあれどどこにも問題ないのに、大事を見て入院中だという。

しきりに畑のことを気にしていた。



さて、病院とは味気ないもので、ひとしきり話をし終えてしまえば、もう他にすることなどない。

病室で退屈になってしまった私は、院内を見て回ることにした。


さほど大きい病院でもなく、すぐにぐるっと一周してしまった。

病室に戻る途中売店で雑誌を買い、そのまま交流スペースで読み始める。

しかし雑誌の内容よりも、目の前のものの方が気になってしまう。


…とても大きい花が置いてある。


病院にはそぐわない、キツイ匂いのする大きな花。

誰かからの贈り物だろうか。 それにしても、このようなものを置くなんてことがあるだろうか。

今まで病院にとことん縁がなかった私には、大きな違和感を抱かせるものであった。

しかし、周りの人は特になんの興味も示していない。

その様子を見ているうちに、私は花への興味をなくしてしまった。



翌日。

すっかり調子が良くなった私は、医師の診察を受け、特に問題がなければ明日退院することになった。

過ぎてしまえばなんということもなく、大きな荷物も持っていなかったため、何をするでもなくぼんやりしていた。

そこでふと、昨日の花を思い出した。

別に私は花に詳しいわけではない。

病院のマナーを知っているわけでもない。

でも少し、ほんの少し花のことが気になった。

その程度の興味だったが、することもなく暇を持て余していた私は、花を見に行くことにした。



花は無かった。


あれだけ大きく、強烈な匂いを放っていた花。

見舞いに来た患者の家族から、苦情でも入ったのだろうか。

なんとなく、ナースステーションで聞いてみた。


「昨日置いてあったあの花、捨てちゃったんですか?」


何もおかしくない、ただの質問のはずだった。


しかしそれを聞いた看護師さんは、キョトンとして、何を言われているのかわからないどういった顔で、こう言った。


「花…ですか? 院内に花は飾っていなかったと思いますよ。 匂いを気にされる方もいらっしゃいますので。」


おかしな話だった。

あれだけはっきりと匂いを漂わせ、あれだけ目に鮮やかな色を放っていた花が、存在しなかったなんて。

私は混乱したまま、病室に向かい、そして翌日何事もなく退院した。



あの時のことを思い出すと、今でも奇妙な感覚に襲われる。

私はあの時確かに花を見たし、匂いを嗅いだ。

それは間違いないはずだ。


しかし思い返してみれば、確かに私以外の人々は、患者さんも、お見舞いに来ている人も、看護師さんも、誰もあの花に目を向けていなかった。


あれははたしてなんだったのか。

私は今でもわからないままでいる。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 夏のホラー2019から来ました!お目汚しなんて仰ってましたが、初めて書いたとはとても思えないほど綺麗な文章ですね!内容も日本のホラーにふさわしく、どこか不思議な体験談という、しかもあるはずの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ