ある夏の思い出
初めて文を書きましたので、大変冗長な文章になっております。
お目汚しかとは思いますが、お読みいただけると嬉しいです。
それは、ある暑い夏の休日。
私は病院の大部屋にいた。
あれは昨日の晩のこと。
私はいつものように、仕事帰りにスーパーに寄った。
いつものようにいつものスーパーで、いつものように割引のお惣菜を買って。
…いつもと同じことをしていたはずなのに、食あたりを起こして病院にお世話になる羽目になってしまった。
何が悪かったかといえば、食べきれなかったお惣菜を今朝朝食として食べたことだろうか。
仕事で疲れ果てていた私は、せっかく買った夕食を食べきることができず、常温で一晩放置していた。
目が覚めてから失敗したと気づいたが、まぁ一晩だし大丈夫だろうとも思ってしまった。
少しもったいないという気持ちもあったのだが、こうなってしまうと後悔しかない。
そんな話を、同室のおばあさんにしていた。
おばあさんは、私の馬鹿らしい失敗談を、馬鹿にするでもなく聴いてくれた。
そしてそのまま、おばあさんの話を聞くことになった。
といっても、深刻な病気などではなく。
畑仕事中に転んでしまい、頭を打ってしまったそうだ。
たんこぶこそあれどどこにも問題ないのに、大事を見て入院中だという。
しきりに畑のことを気にしていた。
さて、病院とは味気ないもので、ひとしきり話をし終えてしまえば、もう他にすることなどない。
病室で退屈になってしまった私は、院内を見て回ることにした。
さほど大きい病院でもなく、すぐにぐるっと一周してしまった。
病室に戻る途中売店で雑誌を買い、そのまま交流スペースで読み始める。
しかし雑誌の内容よりも、目の前のものの方が気になってしまう。
…とても大きい花が置いてある。
病院にはそぐわない、キツイ匂いのする大きな花。
誰かからの贈り物だろうか。 それにしても、このようなものを置くなんてことがあるだろうか。
今まで病院にとことん縁がなかった私には、大きな違和感を抱かせるものであった。
しかし、周りの人は特になんの興味も示していない。
その様子を見ているうちに、私は花への興味をなくしてしまった。
翌日。
すっかり調子が良くなった私は、医師の診察を受け、特に問題がなければ明日退院することになった。
過ぎてしまえばなんということもなく、大きな荷物も持っていなかったため、何をするでもなくぼんやりしていた。
そこでふと、昨日の花を思い出した。
別に私は花に詳しいわけではない。
病院のマナーを知っているわけでもない。
でも少し、ほんの少し花のことが気になった。
その程度の興味だったが、することもなく暇を持て余していた私は、花を見に行くことにした。
花は無かった。
あれだけ大きく、強烈な匂いを放っていた花。
見舞いに来た患者の家族から、苦情でも入ったのだろうか。
なんとなく、ナースステーションで聞いてみた。
「昨日置いてあったあの花、捨てちゃったんですか?」
何もおかしくない、ただの質問のはずだった。
しかしそれを聞いた看護師さんは、キョトンとして、何を言われているのかわからないどういった顔で、こう言った。
「花…ですか? 院内に花は飾っていなかったと思いますよ。 匂いを気にされる方もいらっしゃいますので。」
おかしな話だった。
あれだけはっきりと匂いを漂わせ、あれだけ目に鮮やかな色を放っていた花が、存在しなかったなんて。
私は混乱したまま、病室に向かい、そして翌日何事もなく退院した。
あの時のことを思い出すと、今でも奇妙な感覚に襲われる。
私はあの時確かに花を見たし、匂いを嗅いだ。
それは間違いないはずだ。
しかし思い返してみれば、確かに私以外の人々は、患者さんも、お見舞いに来ている人も、看護師さんも、誰もあの花に目を向けていなかった。
あれははたしてなんだったのか。
私は今でもわからないままでいる。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。




