1話 暖かいもの
僕は殺し屋だ……命令されれば躊躇なく人を殺す。目の前で人が死ぬのも今は対抗がない。
「 たった助けてくれぇ!! 」
そう言って命乞いしているのは今回のターゲット。しかしそんな言葉に耳を貸す事なく無言で僕はそいつの体を五本のナイフで切り刻んだ。
僕は団体へ戻りターゲットの首を団長に差し出す。
「 ……おぉよくやった……次も頼むぞ…… 」
団長はそう言って頭を持ち何処かへ行ってしまった。
僕は家に帰った……唯一安らげる場所に……
「 あらヒトデおかえり! 」
「 ただいま……母さん。」
母さんは心配そうな目で僕を見つめる。
「 今日は仕事でなにかあったの? 元気がないよ? 」
「 大丈夫だよ!心配しないで! 」
僕は殺し屋であることを母には伝えていない。
僕は孤児だった……。
そんな僕を母が拾ってくれた……母は僕に魔法のイロハを教えてくれて生きる事を教えて貰った。
この世界で純プレデターは貴重な存在であり僕の入っている団体は純プレデターではなく新プレデターを使って実験していた。
僕の母は純プレデターで母には絶対に手を出さないという約束で僕はあの団体にはいった。
ある日……僕はいつものように家を出て団体の基地へと向かう。
そしてある仕事を言い渡された。
「 今日純プレデターと新プレデターのパーティがあるらしい……そこに行って皆殺しにして来い。 」
「 了解しました 」
その時なぜか団長は気味の悪い笑みを浮かべていた。
僕がパーティ会場に着いたのはパーティが始まり少ししたときだった。
そこで仲間から仮面を受け取る。
「 純プレデターはかなりつよいから逃げられた時に顔が割れてたら困るだろ…… 」
「 問題ない……逃さない。 」
僕たちは突入した。突入した瞬間少しの沈黙が流れそして悲鳴が一斉に聞こえ始めた。
僕はあたりにいるプレデターを全員殺した。
その時一番聞きたくない声が聞こえる。
「 ヒトデ……ヒトデなの…… 」
僕はその方を振り返る。そこには仮面を外した母がいた。
「 母さん……逃げて!!早く!! 」
母は逃げれないと横に首を振り僕の方へと走って来たそして右手を振り上げる。
僕は殴られる事を覚悟した。親に黙って殺し屋なんて普通の親なら絶対に怒って当然だ。
僕は目を閉じる。
「 ぐはぁっ!!なんで……お前……! 」
そこには瞳を赤くし僕の良く知っている母とは別人のプレデターがそこにいた。
そして母が殴ったのは僕を殺そうとしたプレデターだった。
母は殺し屋とプレデター両方を敵に回したのだ。しかし僕は母の強さを思い知る。武器も使わず次々と人を殺していく。
僕はそんな母を守りながら戦った。しかし僕は死体で躓いて転んでしまった。
そしてそれを見て僕を殺しに来たのは殺し屋の仲間だった……次の瞬間僕の顔には純プレデター特有の黒い血が流れた。母は僕をかばい刺されたのだ。
僕はここで団長の狙いを理解した。純プレデターの母を実験に使いたかったのだろう。そして僕が邪魔だったのだろう。だから2人ともここで殺して連れ帰るつもりだったのだろうと。
僕は怒り狂った。次々と仲間を殺しプレデターも沢山殺した。何故か体が軽く力が湧いてきていた。
そして僕はある程度殺すと小さい体で母を抱き上げ逃げた。遠くへと…遠くへと。
僕はある湖に着く……ここがどんな湖なのかそれはわからないが綺麗な湖だった。
僕はその鏡のような湖で自分の顔を見るとそこには母の黒い血で汚れた顔の中で緑色に光る自分の目を見た。
「 なっなんだ……この目は…… 」
その僕の言葉を聞き母が苦しそうに話しはじめる。
「 貴方はねーーーー・・・ーなの…… 」
「 母さん!喋らなくていいから!! 」
母さんは僕の頬に手を当て涙ながらに告げる。
「 私は……ちゃんと貴方の母になれたかしら…… 」
「 喋らなくていいってば!! 」
母さんはいつも笑うように暖かく優しく笑う。
「 私はもう長くない……せめて最後まで貴方と話していたい…… 」
「 そんな……大丈夫だよ!! 助かるよ!! 」
母は横に首を振る。そして真剣な顔でそれでも弱々しく。僕の頬を叩いた。
「 そうそう……母さんは……殺し屋なんて認めた覚えはありません……もう……やめてね…… 」
「 あぁ!やめるから!もうしないから!だから…… 」
母は弱々しくしかしたくましいその手で僕の頭を撫でてくれた。
「 ヒトデ……しつこい男は嫌われるよ? 強くなりなさい…… 」
母は血を吐いた。黒い血が地面に広がる。
「 母さん大丈夫!? 」
もう母は目も虚ろになり今にでも死んでしまいそうだった。母は最後の力を振り絞り僕にある言葉をくれた。
「 ……愛してる…… 」
そして母は死んだ。体は冷たくなる。しかし母から貰った言葉はとても暖かかった。
僕は、もう団体を抜け、そしてあることを誓う。
「 もう人は殺さない…… 」
そう僕はもう冷たい母に誓った。