レリアの領主の冒険譚
マンドラドラゴンだけでなく、何匹ものゴブリンの討伐もギルドに報告すると報酬金が出た。
周りの冒険者達の好意なのか、恐怖からか分からないが分からないが、ゴブリン討伐分の報酬金は姉さんの総取りでいいとのことだった。
ギルドで報酬金を受け取り、大仕事を終えた俺達はテーブルを囲んで話し始める。
「終わった終わったあー!これで今日は美味しいもの食べれる...みんなでお城の近くのレストランに行きましょうよ!」
「報酬金は家を買うのに当てたいところだけど、初めての大討伐作戦成功祝いってことでいいよね?それに、城の近くのレストラン気になってたんだよね...」
この世界に来てからドタバタしてて、こうしてゆっくりするのも久しぶりだ。魔王は姿をくらましているし、日本の俺達は死んでしまったし、何か慌てる必要も無いが、それでも安定した生活が出来るまで落ち着けそうにない。
「そういえば気にしてなかったんだけど、あの城って何なの?」
そう、この世界に来てドタバタしていてあまり考えていなかったが、街の大通りを礼装のナイトが歩いていたり、日本でいう警察代わりの衛兵がいたりするし、何よりとてつもなく大きな城が街を見下ろす形で建っている。
「今更ですか?あんなに堂々とあるのに、あれはこのレリアの街とその周辺地域の領主、レリア家の家ですよ」
「レリア家?」
「レリア家の人間は才能豊かで、そのお陰でこのレリアの街は栄えていられるのですよ、ちなみにギルドもレリア家が直接運営しているので、ごく稀に領地内の重大問題がレリア家名義でクエストとして貼られていることがあるのですよ」
「そうなのか、そういえば今日のクエストに...」
そう言いながら姉さん達とクエストボードに向かう。
「んー...あ、ほらほら!ここにディザスターテンペストドラゴンの討伐って言うのがあるんだけどさ」
「あぁ、ディザスターテンペストドラゴンはですね、6本の腕を巧みに使いながら様々な災害を起こしながら炎熱を吐き、全てを切り刻むすごいドラゴンです。でも確かに手に負えないほど強いのですが、安っい名前してますよねぇ...」
「口が悪いぞ幼女神」
「うるさいです夢」
「じゃなくて、依頼人欄にストラルハント・レリアって書いてあるよね?」
「ほんとだ、じゃあこれはレリア家のクエストですね。ストラルハント・レリアは今の領主さんの名前ですよ」
メルカ曰くストラルハント・レリア、現領主は剣術に長けていて、SS級ソードマスターらしい。
「領主なのに冒険者もやっているのか?」
「夢様、お友達にも似た方がいるじゃないですか、この街ではそこまで珍しいことでもないのですよ」
リリアさんの言葉に重ねるようにメルカが目をキラキラさせながら話し出す。
「それに、初代領主も相当な冒険好きだったらしいですし。初代領主フェイン・レリアの話はたくさん残っていますよ。実は私冒険者レリアの冒険譚を読んで冒険者になりたいと思ったんです!あんなに色彩豊かな世界を見たいって思って」
「そんなに面白いのか、冒険者レリアの冒険譚。今度読んでみようかな。...ん?」
いつの間にか寝ていたグランシアが、眠そうな目を擦りながら俺の裾を引く。てか、よくこの数秒間で寝てたな。
「ストラルハント・レリアならそこに」
と言いながらギルドの奥を指さす。
ギルドの奥にはグランシアのような綺麗な金髪の青年がいる。白い光を放つ神々しさすら感じる鎧には純白の翼が生えている。ん?生えている?
「あの羽根本物なの?」
「あの翼はSS級の魔法アイテムですよ。使用者の思うままに空を飛べると言われていますが、あれを使う前にモンスターの討伐が終わるのでほとんど飾りらしいです」
「空を飛べるアイテムとかもあるんだ、でもなんでここに領主様がいるの?」
「姉さん、多分だけどさっきあったディザスターテンペストドラゴンの討伐に領主様も参加するんじゃないかな」
「夢さんの言う通りかと、領主様は冒険好きで有名ですし、周りの冒険者も実力のある人達だらけですから強敵を狩りに行く以外考えられません」
「お、なんか動き出した。でも何かこれから強敵と戦うような感じじゃなさそうだけど...」
「いや、夢様。きっともうディザスターテンペストドラゴンなんて余裕で倒せるのだと思います!だからあんなに余裕なのです!」
メルカとリリアさんは断固として領主様はクエストに行くと信じているらしいが、
「あれ?なんかギルドから出たけど、あれってクエストにあった地域に続く門とは逆方向じゃ、あっちは酒場に続く方だよね?」
「ちょっとついて行きましょう!もしかしたらもしかするかもしれないじゃないですか!きっとクエストに行きます!現領主が酒場で飲んだくれるなんて...」
カランカラン
心地よい鈴の音がなった。
「ほら、絶対入ったって。酒場」
むしろ庶民的ないい領主では?とおもった。