感染者6
記憶
感染者の時の記憶をたどりながら歩き続ける悟は、車の陰に身を隠し息を殺す。百メートル程先ではスーツ姿の顔色の悪く一点を見つめながら進む感染者が、悟の方向へとゆっくり歩いてきていた。
(見つかってはないはず。見つけてたらテンション上がって、小走りくらいにはなったはず。・・・嫌な思い出だよ。)
ボストンバッグのチャックを静かに開き念の為にと持ってきた金槌を取り出すが、ふと思い直し金槌をバックの中に戻していた。
(無理だよな、こんなので殴れるはずないだろ。スルーだスルー。)
180は軽く超えている高い身長と、一年前よりは少しだけ肉の量は減ったものの一般的には十分以上に鍛えられた迫力のある肉体を小さくして身を隠したまま歩いてくる感染者をやり過ごす。
「見つかったら逃げるしかないか、殴れねえよな・・・。そういや感染してる時に何で公園に行ったのか、何で公園を出たのかが思い出せねえ。」
悟は時折現れる感染者達を隠れてやり過ごし、公園までの道を慎重に進んでいく。
そして公園に到着し、葉の消えた木に登り双眼鏡を覗き込むと秩序のない中に秩序を作り、平和に生活している感染者の姿を見ていた。
見つからぬよう木から降り人気のない建物を探し出し再び身を隠した悟は、記憶の底から何かを思い出していく。
(この建物は確か・・・、指を噛まれた場所だな。そしてそうだ、何か声が聞こえていたはずだ。頭の中で集まれという声が聞こえて、公園に行った後確か俺は公園で皆と暮らし、また声に従うように公園の周りをウロウロしていたんだ。そしてあの親子を見つけて、追いかけここまで来たんだったな。)
見覚えのある建物の内部で座り込み、悟は一人これから先の事を考えるが何もいいアイデアは浮かんでこない。
(どうする?人を探して合流するか?いやっ、無理だろ。腕の噛み傷と指の噛み傷はどうゆう訳だか消えない。それが見つかったら面倒どころじゃ済まない。)
感染者の時の記憶もほぼ戻り、人との接触する気も起きないがこの場所にとどまる理由もないと悟は立ち上がる。
「とりあえず食料だな。」
次の行動の目的を決めた悟はその場を離れようと周囲を警戒しながら歩き出す。
しかし聴こえるの物音に思わず悟の足が止まる。静かな建物内を体重の軽い駆けてくる足音が明らかに悟の方向へ向かい近付いてきているのであった。
ようやく一番最初の話に追いつきました。ここからどのように話しを進めていくか悩みながらボチボチ書いていきます。