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真・恋姫†無双 ―恋影無想―  作者: 月神
外史洗脳編
9/13

拠点ノ巻 〝二幕〟

拠点(視点)回です。




思春SIDE


-After the half a year-



蓮華様から見捨てられる…?そんな事は考えたことも無かった。海賊をしていた私を拾い上げ自分の側へと置いてくれた蓮華様。私の主は、愛する者は蓮華様だけだと、つい先刻まで思い信じていた。だが私は……





柑奈は私の元へと雪蓮様が直々に〝貴女の様に隠密兼護衛として育てて頂戴〟と預けた男だ。最初は胡散臭い男だと思って嫌っていた。しかし雪蓮様は真名を許していたし他の隊員達も一週間もすると柑奈の事を信頼し笑顔を見せる様になった。


さらに言えば柑奈は真面目だった。すぐに教えた事を覚え身につけ分からない事があれば恥じることなく色んな者に聞いて回っていた。もちろん私も預けられた以上技や立ち回り方を教えた。


柑奈は直ぐに私に真名を預けたのだが〝まだ貴様の事は信頼していない。故に真名は呼ばん。〟と意地を張っていた。


元よりちゃんと接していれば信頼に足る人物だったのだろう。それでも私は周りが柑奈とどんどん打ち解けていく事に対して妙な嫉妬感からか奴を嫌い続けていた。




それはある月明かりの綺麗な夜の事だった。私は蓮華様の護衛を他の者と交代し夜に1人鍛練に励んでいた。途中休憩をしていると目の前に影が現れ〝孫策が呼んでいる。ここから東南にある呉側の森だ。そこの中心に泉がある。そこへ向かえ〟との事だった。


確かに東南方面には森があるのだが迷いの森と呼ばれている場所だ。昼夜を問わず霧が出ており頼の人間も近づかない。そんな森だ。そんな場所にこんな時間に雪蓮様が呼んでいるから向かえ?


普段であれば向かわないがその〝影〟には実体が無く気配も感じなかった。それに異様な寒気がした。行かなければならないと言われているようだった。


森の入口まで向かうと霞に会った。話を聞けばある男との約束が忘れられず男が失踪した日と同じ月が綺麗な夜に月見酒をしている。という事だった。さらに聞けばいつもこの森の奥の中心の泉で呑んでいるらしい。とても幻想的で綺麗な場所だと霞は言った。



中にな入ると周りは茨道。人が寄り付かないからか全く整備されておらずその上、霧が立ち込めていて今自分が何処にいるのか分からなくなる。だが霞はどんどん進んで行く。一体どのくらい此処へ来たのだろうか。



森の中心の辺りに近づくと太い大きな木に雪蓮様が寄りかかっていた。


「やっと来たわね。って、霞まで来たの!?」


雪蓮様は霞を見ると酷く動揺しておられた。



「え、はい。森の入口で一緒になりまして。」



「マズいわね……「別によろしいですよ?」于吉!?」



「別に構いませんよ。彼女は言わば地和と同じ立場の人間。妖術ではなく〝思い〟と〝酒〟で洗脳を拒絶した人間。」



「?、なんや?あんさん何を言うとるん?てか誰や?」



霞は殺気全開で謎の男に問う。この男、雪蓮様は知っているようだが見たことのない顔だ。しかも突然現れた様に見えた。



「私が何者か、それはあなたには関係の無い事です。話して差し上げる義理はない。それに静かにしてもらえませんか?もうすぐ最も月が光を放つ時です。」



「霞、止めなさい。彼は私達が相手にできる存在じゃないわ。」



「……、わかった。わかったわ。確かにウチもこんな得体の知れないモンと戦う気はない。 」



「ご理解頂けたようで助かります。それと張遼さん。2つほど質問があります。」



「はぁ?ウチの質問には義理は無いとか言っておいて質問やと?と言いたいとこやけどなんや?質問て」



「あなたに今愛する者はいますか?」



「……。ホントに答える義理は無い質問やな。あぁ。おるで。」



「それは誰ですか?」



「……、ウチが愛しとるのは生涯1人だけや。天の御使い・北郷一刀。ただ1人だけや。」



「そうですか。なら良いです。」



「思春。あなた天の御使いクンを見たことあるわよね?」



「はい。まぁ、任務で張り付いていた事もありますから。」



「それならいいわ。」



「ちょっと、まち。なんでそこで一刀が出てくるんや」



「霞。黙って。始まるわよ。」



雪蓮様が見つめる方向には小さい泉があった。その中心には岩がありその岩の上に誰か座っていた。その男は紛れも無く柑奈だった。



「あれは……柑奈?」



「ん?誰や?」



「ウチの部隊の柑奈だ。」



そのやり取りの後、柑奈は月に向かって歌い出した。その声はどこまで透き通る、だが哀しい歌声だった。





〝とある夏の夜の夢に酷く胸を灼かれては〟



〝心掻き乱される蜃気楼〟



〝獣故の性分か 甘い蜜に従順な〟



〝この身焦がし今宵も 下弦の月を睨む〟



〝二つの世を分け隔つ物 この手で切り刻む為に〟



〝月明かりに映る姿さえも変えてみせよう〟



〝通り雨で終わるなら 〟



〝泣いて泣いて それでも泣いて〟



〝大きな(うみ)になったなら〟



〝貴女は溺れてくれますか?〟




「「え?」」



歌が終わった時、私と霞は2人で同時に声を上げていた。泉の中心の岩へは月の光が当たり幻想的な雰囲気を醸し出すと同時にそこにいた人物の〝真の姿〟を(あらわ)にしていた。



それはかつて魏の重鎮だった北郷一刀そのものだった




「え?か、かずと?」



霞が持っていた酒瓶を落とした。

酒瓶の割る音と同時に霞は泉へと走り出していた。



「来るなっ!」



静かな森の中で怒声が響いた。




その後、霞は耳元で柑奈……北郷から何か言われているようだった。その後地面に膝をついて霞は倒れた。〝ごめん。ごめんな。一刀〟と言いながら。



私は雪蓮様から〝霞は私が連れていく。思春。あなたは優と一緒に戻りなさい。それと明日時間を取って頂戴。〟



雪蓮様から言われた通り私と柑奈は森を出て呉の屋敷棟へ向かっていた。



「柑奈?」



「なんです?甘寧隊長?」



「お前、魏の天の御使いだったのか?」



「はい。」



「なぜ魏に帰らずに呉にいる?」



「今の魏には俺は必要ないんですよ。それに俺にはやるべき事がある。俺は魏の皆が幸せであればそれでいいんです。」



「だが、先程の霞を見ただろう?あいつはいつまでもお前を忘れられないと言っていた。思い続けるあいつの気持ちを裏切るのか?」



「裏切りますよ。俺はもう決めたんです。ーーーーーーーーーーーーーー と。では俺は部屋に戻るのでこれで。甘寧隊長も気をつけて下さいね。」



「待て!今なんて…」



引き止める前に柑奈は行ってしまった。

柑奈が最後何と言ったのか聞き取ることは出来なかったがとても暗い顔ををしていた。




後日、私は冥琳様と雪蓮様からすべてを聞いた。

柑奈に起こった悲劇、そして魏の面々が柑奈にした裏切りを。


私は柑奈に霞や魏の連中を裏切るのか?と聞いたが先に裏切ったのは魏の面々だった。


柑奈は、北郷は人を辞め家族と別れてまで愛する者たちの為に戻ってきたのだ。


本気の色恋を経験した事無い私でもそれがどれ程までに凄いのかはよく分かる。だが北郷を待っていたのはその気持ちを裏切る残酷な現実だった。それでも北郷は愛する者達を守る為にこの世界に留まっている。


自らの手で平和へと導いた世界で



居場所を無くし、支えを無くし



全てを1人で背負い込んだまま



心から笑えずに、影での日々を過ごしているんだ。



柑奈は優しい。全てを包み込む優しさ。それはこの世界には辛く、不必要な物。


それゆえに事を知った苦しみはどれ程のものだっただろう。簡単に言ってしまえば捨てられたのだ。


もしも私が蓮華様に捨てられたら……考えただけでも胸が張り裂けそうになる。そんな現実を受け止められない。だが、柑奈はその現実と言う名の闇を受け入れたのだ。そうしてまで惚れた、愛した女達を守ろうとしている。



それから、その事実を知ってから私は柑奈と積極的に関わるようになった。接してみてわかったがやはり奴は優しい。一緒にいると心が暖まるほどに。


そしてこう思うようになった。こいつが自分を捨てた魏の連中を守るというのなら私がこいつを守ってやる。魏がこいつを支えないのなら私がこいつを支えてやる。絶対にこれ以上、こいつに、北郷に、優に悲しい思いはさせない。そして、いずれは……



「そうだ柑奈、私の真名は思春だ。」



「え?」



「私の直々の部下なのに呼ばせぬ訳にもいかぬだろう?これからもよろしく頼むぞ。傍にいてくれよ?〝優〟。」



「わかりました。〝思春隊長〟。」





こいつの愛す者になりたい。

ふ。私らしくもない……


「さぁ、行くぞ。」


今回は思春の視点でしたね。この話は前回の地和の1件から〝半年後〟となっています。

一刀さんが歌っていた歌は〝狐ノ嫁入リ〟と言う歌を少しいじったものです。それでは感想等お待ちしてます。月神でした。

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