拠点ノ巻 〝三幕〟
はい。更新です。霞がメイン。
呉の庭にて
「柑奈〜」
「なに?」
「いっちょウチとやろうや。」
「やだ。張遼と戦う気は無い。」
「言うやんか。でも、あんさんにはウチとしあってもらわなあかん。お互い今の気持ち確かめるためにも。」
「 …… 」
「昔なら別の方法があった。耳元で囁いてくれるだけで良かった。でも、今違う。お互いに真名も交換してない、言うなら赤の他人や。やから、お互いにお互いの事を知る必要がある。せやろ?」
「まぁ、確かにね。」
「そして幸運な事に今はお互いに武人や。なら、やることなひとつとちゃうか?」
「はは、変わってないなぁ。もしかしたら張遼は雪蓮さんと同じタイプかもね。」
「タイプ?あぁ、ウチはあんな戦闘狂とちゃうで。使う得物もちゃうし」
「……自覚、ないんだ。」
「ん?なんか言うたか?」
「いや?別に。」
「まぁ、お互いに認め合うための試合や。武人なら刃を合わせれば大抵のことはわかる。それにな、ウチとしてはあんさんに〝張遼〟呼ばれるんは心が痛む。せやから直ぐにでも真名許したいとこやねんけど、あれから3年半も経っとるし、どうせならな?ってこっちゃ。それともなんや?あんさんは武を嗜む者として飛龍偃月刀の使い手〝神速の張遼〟としおうてみたくはないんか?」
「そっか。そう言われたらやるしかないな。確かに1人の武人として、かの有名な〝神速の張遼〟としあってみたい。それに、俺も張遼の気持ちを知りたい。」
「そか。なら、始めよか。」
「あぁ。」
「ちょ、あんたらホントに「詠ちゃん。」 フルフル 月……」
「お2人とも準備はいいですか?」
「ん、月、ありがとうな。」
「いえ、霞さんの思いを存分にぶつけてくださいね。柑奈さんも受け止めてあげてください。」
「もちろんです。」
「両者構えて下さい。よぉい、はじめ!」
SIDE・霞
あの日、一刀と再開した夜にウチは一刀に言われた。
〝突然怒鳴ったりしてゴメン。霞、おかえり。あの時は約束を破ってゴメンな。〟
〝……!覚えててくれたんやな。でも、これからでも……〝無理だよ。〟え?〟
〝俺はもう皆を愛することはできない。この3年半の間、霞がどのように過ごしたのかはわからない。でも、 そこは関係ないんだ 地和にもその事は伝えた。残念だけど俺はもう皆を愛する立場にいない。だけど、俺は帰ってきた。華琳達を守るために。〟
〝どういう事や、華琳達を守るって、立場にないって……〟
〝そのままの意味だよ。俺はそのまま天にいることもできた。だけど戻ってきた。華琳達の危機を知らされたから。もちろん、今の華琳達のことも知らされた上でだよ。〟
〝え……?〟
〝俺は華琳の事を愛してた。もちろん、魏の皆も。そんな皆が命を狙われている、そんな事を聞けばもしも俺の居場所がなかったとしても戻ってくるのは当たり前なんだよ。〟
そもそもそんな知らせがなくとも戻る気だったけどね。そう言って一刀は笑っとった。目から涙出しながら。
〝でも、そんな一刀……〟
〝なぁ、霞。〟
〝?〟
〝俺はこっちに戻って来る〝対価〟として人間を辞めた。天の家族とも別れてきた。両親や妹たち、祖父ともね。友達とも別れた。そうやってまでこっちに帰ってきた。皆を守るために。だけどここには既に俺の居場所なんてなかった。なぁ、なんで俺がこんな目にあわなくちゃいけないんだろうな。俺はただ普通に生活してただけなのに。普通に恋愛をしてただけなのにな。管理者はなんで俺を選んだのかな。こんなの割り切れるわけがないんだけどな。笑えてくるよ。〟
〝-----------かずと、、、 〟
〝ごめん。霞に何か言ってもしょうがないな。これは俺の問題だ。兎に角、俺は皆の元へは帰らない。もちろん華琳達に話してくれても構わないよ。けど、今ならわかる。華琳達は相手にはしないと思う。それから俺はもう北郷一刀じゃないんだ。呉の隠密部隊〝楼〟の第二部隊長・柑奈だ。もしもこれから接する事があれば柑奈として接してくれ〝張遼〟。そして、さよなら、〝霞〟。愛してたよ。〟
その時にウチはボロボロ泣いた。一刀に申し訳なかった。魏の一刀の居場所を守りきれなかった自分が情けなかった。謝った。意味の無いことやとわかっとっても。一刀はウチらのことをここまで思ってくれて愛してくれてたのにウチらはそれに答えることができんかった。
一刀は歩いていく。月の影に入ると違う姿に変わった。さっきも見た。あれが柑奈の姿か。一刀とは確かに似ても似つかん格好やった。その後、立とうとしても涙が止まらんやったし足が動かんで雪蓮に屋敷まで運んでもろた。雪蓮は言った、
〝接してみて分かったわ。魏がなんで優……北郷一刀を置いてたのか。彼は魏の連中にとって〝癒し〟で〝心の支え〟だったんでしょ?それぞれ武将として軍師として王として各々信じるものを信じて戦った。そんな中で女として生きることなんてできない。まわりだって女として見てくれるやつなんていない。だけど北郷一刀だけは違った。戦いで疲れた心を癒して女としてあなた達と接した。それがあなた達の癒しとなって心の支えになった、だからこそ魏は私達に勝てたのよ。なのに…こんな…、魏の関係者のあなたに詳しいことは話せないわ。地和にも話してない。でも、優はああ言いながらまだあなた達のことを愛してる。だからこそこの世界にとどまってる。そのことをあなたも肝に銘じておいて。〟
雪蓮の話を聞いてウチはよくよく理解した。今までの自分達のこともそして一刀のことも。3年半経って他の連中は大分変わった。ウチでさえ変わった。なのに一刀は変わってない。昔と変わらず今は柑奈としてウチらを支えようとしてくれてる。それに答えるやつがおらんでも。
でも、直ぐに気づいた。このままやったら一刀は壊れてまう。そして、もしかすると……
「強くなったなぁ。」 ハァハァ
「あぁ。じいちゃんと鍛えたんだ。辛かったよ。でも、おかげでこうやって〝神速の張遼〟とまともに戦える。その事が最高に嬉しいよ。昔の俺じゃわからなかっただろうな。」 ハァハァ
「お互いもうそろそろ限界か。」
「だな。やっぱり神速は伊達じゃないね。速い。」
「あ、当たり前…やろ。」
一刀はえらく強くなっとった。3年半、およそ4年でこれか。恐らく血のにじむような鍛錬をしたはずや。速さにも惑わされん不意打ちもきかん。ある意味じゃバケモンやな。惇ちゃん、、はもう軽く超えとるな。星、いや愛紗と同等くらいか?
「速さに対する免疫は多少あったけど8割型、思春隊長の指導のおかげだね。思春隊長に隠密術を教わったからこそ張遼の神速にどうにかついていけてるんだ。逆にそれを駆使しないとついていけない張遼はホントにすごいよ。」
「それはそれは、師匠はじいちゃんと思春かいな。なるほど死角からの攻撃の反応もいいわけや。これやったら柑奈のじいちゃんともしあってみたいなぁ。」
「機会があればいいね。さて、そろそろ最後の一撃と行こうか。」
「あぁ、いくで!」
結局のところ試合は同時に倒れての引き分けになった。2人とも最後の一撃合わせる前に倒れたからな。やけど一刀は
「ありがとうございました。いい試合だったよ。張遼の気持ちはよくわかった。張遼。俺の真名は〝優〟だ。よろしく。」
「おおきに。ウチの真名は〝霞〟や。また受け取ってくれるか?」
「もちろんだよ。これからよろしく。霞。」
「優。ウチはもう昔の男の事は忘れるわ。今は優っていう男の支えになりたい。そしていつかまた愛し合うことができたらええと思ってる。もちろんウチの勝手な言い分や。曹紀に染められんかったといってもウチは一刀の居場所を守りきらんかった。それは……〝霞。〟 ?」
「ありがとう。その言葉だけでも嬉しいよ。これからは俺が霞を守る。もちろん皆もね。霞の事情は月さんから聞いてる。俺のせいでごめんな。そんな思いはもうさせないさ。今度は柑奈として、優として霞のそばにいるさ。幸い屋敷もお隣り通しだしな。食堂も一緒だし、」
「優…」
「あとさ、一つだけお願いがある。」
「なんや?」
「雪蓮さん達と共謀して暴れるのは止めてくれな。霞の鬱憤が溜まってるなら俺が相手するからさ。」
「あ、うん。わかった。」
「ん?どうかしたの?」
優し過ぎるな。ウチやったら絶対にこんな風に接しきらん。さっきの言葉も拒絶されると思ったのに……訂正やな。やっぱり一刀は、〝強くない〟。この世界にはやっぱり向いとらんのやな。
「いいや。なんでもない。承ったで。」
「あぁ。なら、飯でも食べに行くか?月さん達も行きませんか?」
「アンタみたいなのと行くわけ〝ご一緒させて頂きます〟 ちょ、月、また勝手に。」
「ただし、席は私と詠ちゃん、霞さんと柑奈さんでいいですか?」
「「あ、はい 」」
「あ、月さん、俺の事は真名でいいですよ。霞の命の恩人ですしこれからもお世話になると思いますし。詠さんも。」
「ありがとうございます。優さんですね。」
「ふんっ。」
道中
「霞さん、お疲れ様です。」
「あ、あぁ。」
「素敵な方ですね。優さん。」
「わかっとるよ。」
「カッコイイし優しいし惚れちゃいそうです。」
「月が?まぁ、相手があれならしょがないか。」
「もちろん、私は優さんの事を知ってます。私が霞さんの話をした後に優さんが話してくれました。ですから、何のために優さんがここにいるのかも大体知ってます。」
「それは、ウチには話せんか?」
「はい。優さんと約束しましたし。それに理由を知ったら霞さんも魏の皆さんもきっと……」
「月がそんな顔するの連合の時以来やな。ええよ。無理せんでも。ウチは、かず、優が話してくれるのを待つ。そう言えば詠っちは知っとるんか?優の事。」
「いえ、言ってません。でも、詠ちゃんは私の頼れる軍師ですから。多分、大体の事は予想ついてると思いますよ。」
「そうか。そういえば雄里は?おらんよな。」
「雄里さんは蒲公英ちゃんと近くの農場に出た熊の討伐に行ってるはずですよ?」
「いや、でも蒲公英のやつ一昨日には帰ってきてたで?さては、また忘れてこられたんかな。」
「大丈夫ですかね?」
「あいつのこっちゃその内猪でも持って帰ってくるで。」
「ふふ。類は獲物を呼ぶですかね?」
「およ、月も言うようになったなぁ。」
「さて、そろそろ着きますね。あれ?詠ちゃん?どうしたの?顔赤いよ?」
「月、助けて。アイツといたらおかしくなりそう……」
「はぁ、魔性の笑顔と仕草は健在なんやな。優!」
「なに?」
「責任はとれよ!」
「???、あ、うん。」 キョトン
次は本編になります。ちなみにTINAMIの方には2、3話多く出してます。それを少ししてからこちらにもって形を取ってるので最新話の読みたい方がいらっしゃればTINAMIの方にどうぞ。
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