律儀な少女はバイトの後輩くんに同棲しようと提案した
バイトの休憩室。
仕事を終えた女と、同じく仕事を終えた後輩の男が話をしている。
女「今日もお疲れ様」
男「お疲れ様です」
女「ところで、折り入ってキミに相談がある」
男「なんでしょう」
女「同棲しませんか」
男「…………」
男「…………」
男「清純派眼鏡美少女の先輩から告白された俺は、現在歓喜と混乱のただ中にいます」
女「告白というわけじゃない。落ち着け。早まるな」
男「その言葉をそっくりそのまま返したいところですけど、続きがありそうなので聞きましょう」
女「うむ。私もキミもフリーターだ。金がない」
男「そうですね」
女「ここは都会だ。特に家賃が厳しい」
男「そうですね」
女「そこで同棲だ」
男「先輩、二つ問題があります。一つ目、せめてルームシェアと言え。二つ目、女友達じゃなくて俺に持ちかけている時点でやっぱり告白にしか聞こえねぇよ」
女「女と同棲するのも、男と同棲するのも、平等にメンドクサイ」
男「だから同棲って言い方やめませんかね。女性バージョンでも変な妄想をかきたてます」
女「それにだ」
男「それに」
女「男と同棲した方が、ドキドキするだろう。そうすると日常が華やかになる」
男「うちの先輩は清純派かと思ったらとんだビッチだった」
女「キミはドキドキしないか」
男「そりゃあ、男はみんなケダモノですから」
女「よし、決定」
男「待て。やっぱりそっくりそのまま返さないとダメじゃん。落ち着け、早まるな」
女「……ダメ?」
男「突然上目遣いで女になるのやめて。そんなに俺を狼さんにしたいの」
女「キミの草食男子力には信頼を置いている」
男「俺の忍耐力試すのもやめて」
女「ちなみに、これが告白ではないというのにも理由はある」
男「ほう」
女「キミのことは、今は好いているが、今後いつまでも好きだとは到底思えない」
男「おかしい。何この告白前に絶対的に振られた感じ」
女「私は飽きっぽいんだ。キミのこともきっとすぐに飽きる。ちょっとしたことでキミを嫌いになることも、想像に難くない」
男「俺が飽きさせないし、嫌いにもさせないと言ったら?」
女「無理じゃね?」
男「うん。俺もそう思います」
女「さすが草食系の鏡。ガツガツしてない」
男「褒められてる気がしません」
女「褒めてないからしょうがない。話を戻そう」
男「はい」
女「そこで同棲だ」
男「先輩が律儀な人なのは分かりました」
女「返答は?」
男「……無理」
女「ですよねー」
男「それ断るのとか無理ゲーすぎる」
女「えっ」
男「えっ、じゃねぇ」