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1.13 ライブトーク

 アグロス=ナベルの『滅びの魔法』とは何なのか。

 俗説はいくつかあった。例えば、アグロス=ナベルは錬金術士で、トゥルーバニランが苦手とする金属を精錬することが出来た、というような。しかし、真実は歴史上の謎となっていた。

「母さんは、何か知ってる?」

 アルフがミナコに訊くと、彼女は首を振った。

「私は何も知らないのよね。父さんの――いえ、お義母さんの家のこと」

 ミナコの義母、そしてアルフの祖母にあたるカロリーナ=ナベル・クナイは、既に他界していた。

「父さんに聞いてみましょう。それが早いわ」

 ミナコはそう言った。

 アルフの父、イマール=クナイは、現在ファレンス国に単身赴任中だ。ヒノモト国との時差は七時間ほどあるので、向こうはまだ未明だろう。

「たぶん、三〇分ぐらいしたら起きると思うから」

 アルフが時計を見ると、二十一時半を少し回った頃だった。つまり、三〇分後のファレンス国は、朝五時ということになる。

 アルフの記憶の中の父はそれほど早起きではなかったが、きっと「問答無用で起こす」という意味なんだろうな、とアルフは解釈した。

「それまで、もう少しあなたの話を聞かせてくれる?」

 ミナコは真面目な顔で、改めてユーリーに頼んだ。

 ユーリーはこくりと頷いた。


     ◇


『……ふわぁ。なんだい、こんな時間に……って、そっちはまだ夜だっけ』

 三〇分後、リビングのテレビジョン・モニタに、寝起きのイマールの顔が映し出された。

「イマール、トゥルーバニランはわかるわよね?」

 ミナコは手短に話し始めた。

『それはもちろん。あの有名な』

「紹介するわ。トゥルーバニランのユーリーこと、ユーレディカさんよ。なんと今年で二九五歳になるんだって」

 ユーリーがモニタに向かってぺこりと頭を下げる。

『はぁ、これはどうも初めまして……って、ええぇぇーー!!!!』

 モニタ越しにイマールの絶叫が響いたが、ミナコが予めボリュームを絞っておいたおかげで、三人は耳を塞がなくても済んだ。

「驚いた?」

『あ、あぁ。驚いた驚いた。なんだ、お得意のジョークか。全く寝耳に水とはこのことだよ』

 ちょっとことわざの使い方が違うような? とアルフは思った。

「残念ながら本当よ」

『え? マジなの!?』

「イマール、悪いけど漫才をしている時間も字数もないわ」

 そういう方向に誘導していたのは母さんの方だったような……とアルフは思いつつ、何も言わないでおいた。

『あ、ごめんよ。……で、なんだっけ?』

「アグロス=ナベルの『滅びの魔法』の正体って知ってる?」

『なに、アグロス=ナベルの……? それも『滅びの魔法』か……』

「知ってるの?」

『ちょっと待ってくれ。確か……』

 イマールはしばし、思案する素振りを見せた。


『ごめん。さっぱりわからないや』

 十数秒ほど思案した挙句、イマールが笑顔でそう答えたので、アルフたち三人はズルッとずっこけた。

『お袋に昔、何か聞いたような気もするんだけど、忘れちゃった。今日、こっちにいるナベル家の者に連絡を取ってみるよ』

「え、えぇ……。お願いね」

 ミナコはソファに座る体勢を直しながら、答えた。

『それで、二人はもう、ユーリーからある程度話は聞いたの?』

「うん。ユーリーが十年前に死の眠りから目覚めて、ここにたどり着くまで、だいたいの経緯を聞いたよ」

と、アルフが答えた。

『なるほど。父さんにもざっくり教えてもらえるかな?』

と、イマールが言う。そこで、アルフはたった今、ユーリーから聞いた話を要約して、父に話した。

『……なんと。それは、すごい大冒険だったね。……こう言っていいかわからないけど、おめでとう』

 話を聞き終えて、イマールはユーリーに向かって言った。

「え……?」

 ユーリーは思わぬ言葉を聞いて、驚いた。ミナコもアルフも、その言葉には意表を突かれた。

主人公アルフの父、イマールがやっと登場です。リモートですが^^;

なんだか、思ってたよりもキャラとしていい味出してる気がします(笑)

相変わらずゆっくり更新の本作ですが、気長に見守っていただければ幸いです。

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