過ぎた冬
じわりと広がるシミのように
夜がゆっくりと穴をあけていく
ああ 声が聞きたい
そうか、寂しいのかと
空が月を隠して
私は一人歩く
風はやみ 星は消え
冷たい空気さへ感じない
私を呼ぶ声は過去へと
聞かせて欲しい
もう誰も思い出しはしない名を
きっと冬は過ぎてしまった
吐く息さへも白くはならない
そうか、皆どこかへ行ったのか
漏れる灯りも霞む
寒い冬が好きだった
歩いた道も枯れ葉が残るだけ
もうすぐ色とりどりの花が咲くのだろう
闇に満ちた静けさが震える
その声は温かかったのだ
忘れられた冬のように消えてゆく
そうだ、私はここにいるのだと




