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冷え切った熱 命の塊
暗い夏の夜が過ぎる
炎熱地獄のアスファルトも
夜はおやすみ
きりきりとした糸が ふつと離れる
墓守は仕事の終わりを懐中時計で計る
金色の懐中時計は分不相応な代物だ
しかしそれが彼の誇りなのだから
とやかく言うまい
びゅるりどくりと流れる血潮の
冷えたような熱いような赤
人体の迷路を流れるガソリン
途絶えれば停止するだけ
白い芙蓉の花が咲いて
僕たちに命を教えるけれど
花の命こそ儚いものと僕らは知る
きりきりとした糸が ふつと離れる
死を待つ人の傍らにありて
安らぎと癒しを与えよ
暗い夏
暗い目をした少年が裸足で国道を歩いている
やがて溶けて道の一部となるのだろう
愛して愛されればそれだけで
救われる命の塊こそあれ
暗い夏の夜が過ぎる
炎熱地獄のアスファルトも
夜はおやすみ




