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春
朝草の露
陽炎伸ばし
ふと振り向けば春日なる
笑みこぼす歯の
一つ一つが眩しい
流れる涙の
一粒一粒が悲しい
笑って
泣かないで
夜の底冷え引き摺る人の
腕を掴んで引っ張って
有無を言わさず連れ出したい
この陽だまりに
春が来るよ春が来る
残酷な時の正確さで巡る季節
どこまでも人を包み込む大らかさで巡る季節
いつかしまった傷痕が
徐々に風化していき
そのうち綺麗な砂粒になる
真ん丸の光
あなたがあなたであるように
あなたがあなたであるように
他の誰でもないように
花がそよいでいる
花が
そよいでいる




