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風
粉々に打ち砕かれ、
土くれに還ったとばかり思っていた
頬に
風があたる 優しい風 髪揺らし
美しいものということを思い出させる
夜
遠くを走る汽車
ラピスラズリみたいな空には
丸いケーキのような大きい満月
ゆるされてもいいのかと問えば
ゆるされているのだと答える
荒地がいつの間にか
豊穣の予感を孕み
潤う
こんなにもしとやかな
こんなにもしなやかな
ものでできているのだと決する意
頑なの殻がはるか後方に見えて
羽ばたくように軽やかに
恐れはしこりのように
根を張ってはいるけれど
その根からすでに芽吹いているのなら
小さなものでいい
ぐずぐずに甘やかしてスポイルして泣いて
また日は昇るなんて言わない
そんな仰々しくて勿体ないこと言わない
ただ、思い出してしまったのなら
風の優しさ
囚われる
わたしたちは甘さの住人




