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夜鳴き
「夜鳴き」
恋し恋しと夜鳴く猫の
明日の宿りはどことてか
ひらりひらりと舞う花びらの
沈むはいずこ水の底
水は見ずとて清らな水の
底であるなら見れましょう
ほら夜に見る飛行機雲
向かうはいずこ夢の旅
恋し恋しと夜鳴く猫の
今日の宿りはお決まりか
決まらでならば我が家の
軒なり中なりいるが良い
良い佳い宵の酔い進み
去る春より目を逸らす
去るものを
掴めば溺れる水の底
ああ、こんなところに花びらが
「花餌」
彼女を見たのはその春が初めてだった。
桜の大樹の下。
薄い桜色の紗を纏うほっそりした立ち姿。
白魚の手は桜の枝に伸べられ。
翌春も彼女を見た。
立ち姿は麗として変わらず、桜の枝に伸べる手も同じ。
春になると決まって村の若者が姿を消す。
一人。また一人と。
そうして彼女は今日もまた、桜に手を伸べている。
微笑む彼女を見て私もまた微笑んだ。
生餌を探すのは私の務めだ。
そうやって狂った春が今年も巡る。




