出会い
「え、えっと。。。あの、はる、じゃなくて、宮澤春奈です!」
春奈は、緊張していた。理由は、春奈が転校生で、今自己紹介をしているから、ではなく、ある事情があるからだ。
「趣味、は、えっと、読書、で、あの、特技は、えっと。。。」
そんなことをしているうちに春奈の緊張はメーターを振り切った。彼女の体がぼんやりと青く輝き出す。春奈は気付かずに自己紹介を続ける。
「特技は、うーんと、えっと。。。」
彼女が放つ輝きは強くなって行く。そして春奈はやっと気づいた。自分のチカラが暴走していることに。
(やばい!また、やっちゃった。。。!)
春奈は幼い頃に両親を亡くしていた。親戚もいなく、春奈は両親の残してくれた財産で一人暮らしをしていた。。それだけでも春奈がいじめられる理由は十分なのに彼女にはチカラがあった。本人さえ正体を知らない、不思議なチカラが。だから春奈はいじめられていた。友達などいなかった。
そんな時、奇跡的にチャンスが訪れた。田舎の方に、安い家があったのだ。決して綺麗とは言えないが、転校する理由には十分だ。それに、春奈には金だけは余るほどあった。だから春奈はその家を買って転校したのだ。
が。彼女は自己紹介で失敗してしまった。前の学校でもそうだった。自己紹介で失敗した後から彼女は魔女扱いをされるようになったのだ。
この学校でまたいじめられては引っ越した意味がない。春奈は自分を呪った。失敗しかできない自分を。そしてゆっくりと、ゆっくりと、光は消えて行った。教室中から声が聞こえてくる。しかしその声は、春奈が想像していたものとは全く違った。
「すげぇ。。。」
「あり得ない。。。」
ここまではまだ予想の範囲内だった。しかしそれに続いた
「かっこいぃ。。。」
「もう一回やって!」
という声に春奈は驚いた。自分が褒められている。その事実を彼女は信じられなかった。
「ありがとう。。。」
ようやく見つけた仲間に囲まれた春奈は呟いた。しかしその言葉は誰にも届かない。
「ありがとう。」
彼女は言い直した。今度は皆にはっきりと聞こえるように。すると、誰かが言った。
「何を感謝してるの?」
当たり前だ。彼らとしては当然のことを言い、当然のことをしているだけなのだから。でも「当然」が春奈には嬉しかった。
(彼らは、私のことを仲間として認めてくれた。。。?)
彼女自身も気付かないうちに春奈の瞳からは涙が零れ落ちていた。数秒後、春奈は自分が泣いていることに気づき、そっと涙を拭った。クラス中大騒ぎになって困っている先生をもう困らせないように。
「春奈さん、自己紹介の続きを。。。?」
先生が言う。その言葉に目を覚まし、生徒たちは席に戻った。
春奈は自己紹介をし直した。
「宮澤春奈です!趣味は読書、特技は「異能力」と私が勝手に呼んでいるチカラです!今から見せたいと思います!」
春奈は掌でコップの形を作り、目を閉じた。そして頭の中で想像する。空気中の水分が彼女の手に集まっていく様子を。そして目を開けると、彼女の手にはコップ一杯分の水が溜まっていた。
周りの人たちは息を呑んだ。でも春奈のマジックショーは終らない。彼女は水をわざとこぼすと、もう一度落とした水を拾い直した。本当ならあり得ないこと。でも水をコントロールする。それが春奈のチカラだった。
拍手の嵐が巻き起こる。それを聞いて春奈は思った。
このクラスの人達は決して春奈のことをいじめたりはしないだろう、と。それどころか、きっと大切だと感じてくれるだろう、と。
春奈は、数年ぶりに笑顔を見せた。偽りのない、心の底からの笑顔を。




