第4話
平和になった西の大国の王宮に、赤を基調とした鎧に身を纏う一人の騎士が歩いていた。
名をルシオといい、元東の国の勇者としてこの王宮に敵として侵入した人物である。
彼は後に前の世界での騎士としての技量、そして非常時に王の側にいれることもあり、今では王の側近として日々を過ごしている。
「…シノブ?また陛下に呼ばれたのか?」
そんなルシオの前に、最近やっと見慣れた一人の少女が現れた。
見慣れたというのは、少女が会う度に着ている異世界の洋服に対してである。
最初の頃、ルシオは我を忘れて顔を真っ赤に染めながら慌てていたものだ。
少女の名前は、長谷川忍。
ルシオとは違う異世界から呼ばれた人物で、王の影を務めている。
異世界では高校2年生で、そんな学生の身分である彼女が何故戦いの技術が身に付いているのかというと、家が代々古くから続く“忍者”の家系だからだという。
「んー?ああ、ルシオ。そうなんだよー!シルヴィオさ、面倒な人間と会うから一緒に居てくれーって」
「ああ、あの要人のことか。それを面倒な人間って…まったく」
「あれが王様なんて世も末だよねー。はぁ、主選び間違えたかなぁ」
「何を言う。我程そなたの主に相応しい者はいないぞ」
「うひゃあ!」
シノブからしたら背後からいつの間に忍び寄ったのか、シルヴィオがシノブの頬を後ろから左右に摘まんだ。
女子としては、かなり残念な顔になっている。
「陛下!?いつの間に…」
「今の間に、だ」
彼、西の国の王であるシルヴィオは災害とも言われる程の魔力の多さに他国、しまいには自国のお偉方にまで魔王というレッテルを貼られた人物である。
「は、はなひへぇ~!(離して~)はか、ひるひお~!(馬鹿、シルヴィオ~)」
「ハッハッハ、我を馬鹿にした罰だ。…我はそなたで良かったと思うておるのだからな」
「……シルヴィオ」
「ここまで我に言わせるとは、後にも先にもそなただけだろうな」
ポンポンと先程まで頬を引っ張っていた手で頭を優しく叩かれる。
急に本音を言われたシノブは呆然とシルヴィオを見つめた。
「さて、ここで戯れている時間はさほどない。さっさと面倒事を終わらせて茶でもするぞ。着いてこい、シノブ、ルシオ」
そう言うとマントを翻し歩きだすシルヴィオ。
その後ろ姿を眺め、シノブとルシオは顔を合わせやれやれと言いながらも満更ではない顔をして彼の後ろに歩き出すのでした。
登場人物名前紹介という名目の4話であり最終話です。
ここで完結にして、後日番外編をあげていく予定です。