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ⅩⅢ:午前4時の目覚め ―魔王城本城、攻略戦開始―

――そして、翌朝、日の出前の午前4時半。アルカナヴァンガードは目を覚ました。

 来たる魔王城制圧と魔王討伐に向けて、全ての力が集結される――はずだ。

 カリナは野営地を離れてドラゴンの墓場の北西、魔王城に近接している方へと足を伸ばした。

 岩場を登り、かなたの光景を目の当たりにする。そこには不気味な黒気を漂わせる〝魔王城〟そのものが立ちはだかっていた。


「泣いても笑っても、これで作戦の成否の最初の条件が決まる」


 うす明るい地平線の彼方――。

 これから攻め落とすダークフォージ城を視線で追う。その時だ、背後から声がかけられた。


「何が見えるんだ? 姫――」

「アーヴァインさん」


 声をかけてきたのは無精髭の中年男のアーヴァイン。納戸色と呼ばれるピーコックブルーの全身鎧に光沢のある濃紺色のマントを羽織った魔導剣士だ。

 しおれた感じのある風貌とは裏腹に、魔導士長ソフィアの戦友で、元エーテルノヴァ国の凄腕の魔導剣士(パラディン)だ。  

 魔法と剣術を共に身に着けている稀有な実力の持ち主である。

 

「アンタが一人で歩いてくのが見えたんでな、一人じゃ物騒だと思って追いかけてきたんだ」

「ご心配をおかけして申し訳ありません」

「なに、気にすんな。俺も目覚ましの散歩がてらだからな」


 飄々とした人柄で、気取ったところのない気さくな人物だった。彼に向けてカリナは答えた。

 

「攻略目的地の魔王城の光景を見ていたんです。あそこにどの様な敵が居て、どうすればそれを攻略できるのか」

「一番先に目を覚ましてか?」

「はい――目が冴えてしまって」


 アーヴァインはため息をついた。

 

「指揮官たるもの、休むのも仕事だぜ? まぁ――早起きくらいはいいだろうけどな」


 一呼吸置いてアーヴァインは問いかけてくる。

 

「で? 作戦上の何が不安だ?」

「わかりますか?」

「あぁ、長い付き合いだ。アンタが楽観より不安の方を選ぶことは解っている」

「作戦通り、各作戦地に散った諸部隊がちゃんと魔王城にて集まってくれるのかどうかが――」

「やっぱりそれかぁ」


 アーヴァインは苦笑いしていた。


「俺たちアルカナヴァンガードが突入して敵と接触した初合(しょごう)の、まさにその時に合わせて他の連中も合流しろってんだから、アンタもすごい事、考えるぜ」


 アーヴァインは軽く苦笑いする。カリナは緊張を解きながら答えた。


「初手から大軍団で進撃していけば、敵の攻撃を一つに集めてしまいます。こちらが総力で当たれば、魔王軍も総力で向かってくるでしょう。それをギリギリまで遅らせて、こちらの戦力を瞬間的に最大値にして魔王城を一気に手中に収めるのです」

「流石だな、軍隊の常識にとらわれないアンタだからこそ見つけられた作戦だ。俺は成功する方に賭けるぜ」


 アーヴァインはにやりと笑いながら、腰の後ろから気付けの酒の入ったスキットルボトルを取り出す。朝の冷え込みをこらえるのに酒を少し口に含んだ。

 そのスキットルボトルをカリナに差し出す。


「どうだ? 一杯」

「いただきます」

 

 スキットルボトルのキャップをグラス代わりに受け取り、カリナも一杯を口にする。まだ日の出前の冷え込みの中、体が温まっていく。


「おそらくはほとんどの部隊は間に合うでしょう。問題はケラブノスとゲオルグの一団です。無事で居てくれれば良いのですが」


 その言葉にはケラブノスとゲオルグへの深い信頼が滲んでいた。


「大丈夫だよ。聖剣の巫女様、あいつらの強さは証明済みだ。あとはあんたが信じてやるだけだ」


 そうだ〝信じる〟事こそが、光の側で暮らす者たちの全ての力の源なのだから。


「ありがとうございます。アーヴァイン殿」


 カリナがそう答えるとアーヴァインは口元に笑みを浮かべた。そして、彼とともにカリナもカリナもエルリック達のところへ戻れば、アルカナヴァンガードはすでに全員が戦闘準備を終えていた。

 

「カリナ、全軍、戦闘準備完了だ」


 エルリックの言葉にカリナは頷いた。

 そして、エルリックと共に並び立つと彼女はアルカナヴァンガードに向けて宣言する。


「傾注!」


――ザッ!――


 全員が直立し一斉に姿勢を正す。


「これより聖地・ドラゴンの墓場を出立し、魔王城本城ダークフォージ城の攻略を開始します」


 大声ではないが、明朗な声で確実にアルカナヴァンガード全部隊に指示を伝えた。


「友軍各部隊・各軍団が適時合流をします。各員、状況に応じて連携を計ってください」

「はっ!」


 その時、歴代の竜皇たちの声が響く。

 

――ドラゴンの墓場を聖地と呼ぶか、勇者よ――


 カリナは優しく告げる。


「はい、ここは聖地です――、ドラゴンの眷属の存続と繁栄のために戦い、身を捧げたあなた達の眠る場所。いわば〝勇者の墓所〟――それを聖地と呼ばずしてなんと呼ぶか」


 そして、カリナは心を込めて告げた。

 

「いまこそ、共に戦いましょう」


――望むところだ我らの竜のマナを、残り僅かだが勇者に捧げよう――


 そして、竜たちの骸から立ち上る光の粒がカリナへと注がれる。

 

「力が? 宿る? 力がみなぎる!」


――勇者に祝福と栄光と勝利を――


 その言葉を残してドラゴンの魂たちは再び眠りについた。カリナは、骸のドラゴンに向けて振り向くと呟く。


「ありがとうございます――、貴方達の無念、必ずや晴らしてご覧に入れます」


 更にカリナは身を翻すと、歩みを魔王城のある方向へと向けるエルリックに最終確認する。 

 

「全軍戦闘準備は?」

「すでに準備完了。いつでも進軍可能だ」


 さらにソフィアに向けて告げる。

 

「偽装結界を解除してください」

「えぇ――、偽装結界解除! 進軍準備!」

「はいっ!」


 魔導士たちが答えて、ドラゴンの墓場にかけられていた結界が取り払われた。

 準備は終わった、賽は投げられた、今こそ決戦の始まり。

 カリナは聖剣レギオンブレイドを抜刀しながら告げる。


「アルカナヴァンガード! 行動開始!」

「おおおっ!」


 アルカナヴァンガードは魔王城に向けて進軍を開始した。


いよいよ魔王城本城攻略戦が始まります。

カリナとソルスター自由連合軍の戦いは、最終決戦の核心へと踏み込んでいきます。

ここからの戦いも、ぜひ見届けてください。

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